音楽業界の改善すべき大きな問題

ちょっと振り返って、2月に起きた僕が音制連の理事長を辞任したときのことを記述します。
音楽業界がいま抱えている改善すべき問題です。

僕は2月27日に音制連の理事長および理事を辞任する旨を記した辞表を提出しました。

2月27日あのCPRAでの会議を終えた後、僕はそのままの足で、音制連(日本音楽制作社連盟)に辞表を提出しました。

どういうことかというとCPRAの執行を行う4団体のそれぞれの長が出席する最高決定会議(権利者団体会議)で僕は自分に課せられた音制連の理事会で決定した意向を反映させるという使命がこの会議の中で達成することができなかったからです。むしろ対抗する意見の方に賛成しそちら側の決議事項を決定させてしまいました。そのことを受けての引責の辞表提出です。

決議事項が最終決定を見いだせないと何が起こるかというと権利者への分配が期日に間に合わなくなります、僕はそれを懸念して不本意ながら苦汁の決断をせざるを得ない状況になっていたのです。

CPRA(クプラ)とはわかりやすくいうと、JASRACが著作権の徴収分配を行う機構であるのと同じように著作隣接権の実演家の権利に対する報酬の徴収分配を行う機構です。音楽業界の人でもこの存在は知っていても実際に権利の内容や使用料がどこから発生してどうやって配られているのかなんていうことは殆ど知らないと思います。僕も音制連の理事をやるようになるまでは知ってはいたけど制度があるものだから勝手に報酬が入ってくるものと受身の姿勢でしかありませんでした。

もちろんマネージメントを職業としている以上アーティスト契約をするときにはこのことも説明するし、その権利やその存在はアーティストにも説明して理解してもらってきました。説明するときは、たとえばサカナクションの「新宝島」という曲があります。サカナクションのメンバーが歌唱演奏して録音した「新宝島」と、どこかの高校の軽音サークルのバンドがが歌唱演奏して録音した「新宝島」はどちらが価値がありますか?リスナーはどちらにお金を払いますか?と問います。「新宝島」という同じ著作作品でも、誰が歌唱や演奏をするかでその録音された作品の価値が変わるものなのです。

それが実演というものに対する権利報酬の発生なのですと。(わかり易く言えばですが)。

ただCPRAで配る実演家への報酬の中でそこにFA(フューチャードアーティスト)とNFA(ノンフューチャードアーティスト)という区分があります。

FAは楽曲のタイトルと同時に対外的に記載されるアーティスト名です。たとえば、「山下達郎」「松任谷由実」「サザンオールスターズ」「ミスターチルドレン」「サカナクション」などです。NFAとはアーティスト名のところには記載されませんがその楽曲のレコーディングに参加したスタジオミュージシャンの方々です。

なぜそのような区分がるかというとさっき記載したようにそのアーティストがやっていることに価値があるからこそFAにはその価値から発生する報酬を受け取るべきという概念がるからです。

さらにいえばFAは何ヶ月もかけてときには何年もかけてアルバムを創り、それを一所懸命プロモーションをしてひとつの作品にもたくさんの労力をかけるわけです。NFAはレコーディングが主な仕事の中で沢山の作品に参加することができるしプロモーションの義務もないわけです。かと言ってNFAの方々を軽く扱う話ではありません。音楽には双方の力が合わさって素晴らしい作品を生み出してきた歴史はあるわけですからNFAの方々へのリスペクトも忘れてはならないのです。
(とはいっても、そういうことでFAとNFAには立場と概念において大きな差があるのです。)

基礎的な話はここまでにしておいて。。。

CPARA分配で何を問題として指摘しているかというと、本当に多くのアーティストやミュージシャン、そしてそれを支えるスタッフ(事業者)が才能を発揮して血のにじむような労力を使って生じた大切なこの隣接権の二次使用料。その分配においてブラックボックスのような隠匿されたデータをも使って分配されているということです。CPARAは文化庁から指定されている公の権利報酬の徴収分配の機関です。だからブラックボックスなんてあってはならないのです。

分配の元になるデータはもちろんどの楽曲がどれくらい使われたか?が大元にあります。その中でその楽曲に関わった実演家が誰なのか?があります。原盤制作の現場においてその誰が関わったか?がすべて網羅されている状況かというとそうじゃない場合も多々あります。長い歴史の中では旧カタログにはそういった演奏データが不明なものもあります。そういった部分も踏まえてある程度のみなしを取りながら分配する目安を決める部分も必要ではあります。もちろん近代化されている今はデータの整備その意識も含めて上がってきているので精度も高くなっています。使用楽曲も古いものばかりなわけではないのでより時代が進むごとに正確なデータに近づいていきます。

ところがそういったみなしの部分を使ってきたことで分配内容の根本部分がブラックボックス化していき、執行責任を持っている4団体の長である僕も知り得ない、守秘義務があるからといって隠匿されているデータを使っていることによってとんでもない分配結果が続いてきているのです。

音制連の理事長職を担うようになって分配の実績金額を見れるようになって驚いたのですが、みなしの部分において配られているお金が、ある特定のジャンルのある特定の人達に偏っているのです。10年以上に渡って年齢で言えば60歳から70歳くらいのあるジャンルのミュージシャンの方々に多く配られていてその取得金額の上位10人くらいをを見てみるとおよそ世の中のヒットチャートの楽曲のベストテンとは全くかけ離れているのです。これを見て本当にビックリしました。なおかつ10年間以上に渡ってほぼ同じ人たちが上位を占めているのです。誰が見ても不自然な順位なのです。

放送二次使用料ですからもちろんヒット曲だけではなくBGMなどに適した音楽の使用も多いのは事実です(うちの会社でいうとGONTITIのようなインスト楽曲をメインでやっているアーティストの分配も多いです)。とはいえやはり使用楽曲の上位はヒット曲が占めているのが現状です。

しかしなぜヒットチャートとかけ離れた不自然な分配が起きているのか?これは分配するためのデータ資料として「日報データ(P-LOG)」というものが使われているからです(と思われます)。日報データというのはレコーディングに参加したNFAの方がどの楽曲にどれだけ参加したかというのを「自己申告」して楽曲に紐づくデータを構成する制度です。原盤制作管理者ではなくスタジオミュージシャン自身が「自己申告」で構成されるデータなのです。こういったデータをもとにして配ることによって、ヒット曲を出すために一所懸命頑張ってやってきたFAよりもあまり聞いたことのないNFAの人のほうが分配額が多いということが起きているのです。分配がどれだけ多く使われたかの使用料ではなく、どれだけ多くレコーディングに参加したか、という使用の実績とは全くかけ離れた指標が導入されているのだと思われます。

そしてその日報データの中身がどの様になっているかは先程いったように「インペグ会社との守秘義務があるから」ということで執行責任をもっている団体の長である僕にも隠匿されているのです。分配責任を課せられている責任を持った執行者の一人の僕がその分配計算を知らされていないというのは、一体どういうことでしょう?胸を張って堂々と分配の実態をアーティストやミュージシャン、そして事業者に説明するべきではないでしょうか?その説明責任を果たすべきではないでしょうか?

実演家の権利分配である隣接権の考え方や理論は複雑怪奇でもあるし長い歴史の未熟な時代も経ながら作り上げられてきたものです。だから当然正解に至るまでの過度期はあるだろうしその途中経過での議論も必要であります。

ところが僕が音制連理事長になってもう3年は経つというのにその年月の中で指摘したにもかかわらずほぼ肝心な部分においてはずっと置き去りにされた状態が続いているというのが現状です。

今年度の分配の方式において、わかりやすく音制連の提案した案をA案、そうでない方の提案をB案とよぶとして、CPRAを構成する4団体の長が出席する最高決定会議(権利者団体会議)でどちらの案を採用するかの決議をとったところ3対1でA案のほうが多かったのです。しかしこのCPRAの最高決議会議は全者一致が条件なのです。12月のこの会議で3対1のまま全者一致ではないがために決定をみることができなかったので次の2/27のこの会議までの期間に「運営委員会」という会議で決める運びになったのですがB案を提案した側はその運営委員会で多数決を拒否したのです。

まったくもってこの機関では民主的結論を得ることができないのです。怒。この機関の顧問弁護士もB案を提案している団体の顧問弁護士と同じという公平性を欠いた構成にもなっているのです。怒。(偶然らしいですが。)そして2/27の最高決定会議までのあいだにCPRA事務局職員から仲裁案が提案されたのですが、その内容は条件付きではありましたがB案に同意してくれというものでした。3対1であった案の「1の方のB案を選べ」という提案でした。これは事務局職員も何らかのバイアスがかかっているとしか思えない行動でした。怒。

はっきり言って長い歴史の中で苦労しながら何もないところから隣接権徴収の制度を作り上げて音楽業界に貢献してきた功績には敬意しかありません。しかし作り上げた功績に甘んじていつまでも進化させず改善もさせない、その中でどこかで権益を悪い方に利用し始める。そして古く長く功績をつくった者の声ばかりが大きくなって組織の人事権すら握り、イエスマンだけをそばに置き、逆らうものは弾いていく。新参者はその声の大きさに震えあがる。コンプライアンスもクソもあったものではない。怒。

新しい制度への移行はちょっとでも時間稼ぎをして先延ばしにする。怒。

古いものがどんどん権力を強め独裁的になっていく。そして組織を私物化していく。怒。古いものを変える習慣がないばかりに新陳代謝をおこなう慣習も損なわれている。怒。

隣接権使用料の分配は理屈的にも難解を極める。分配データのもとになるものも整備するには労力も時間かかるし制作者の協力もいる。だから関心を持たないとそういったことが精緻化されない。公平な分配に近づけない。そして透明性を担保できない。

どうしても難しいことだし関心を持ちにくいことだから他人任せになる。そうなるとある一部の既得権益者の思うツボになってしまうのです。

日大の学長問題やあるスポーツ協会の会長の問題やら、古ーい体質のある特定の権益を得てしまった人が独裁的になって進化や変革を拒んでいく、そして腐敗していく。そんなことが連想されてしまうのです。(あとロシアね)

すみません!ここで書くにはふさわしくないことを書きました。お詫び申し上げます。

ココに書いたことは全部ウソです!フィクションです!こんなことあったらイヤだね、の話です。

日本の音楽業界は一つになって世界に向かっていかなくてはならない時代です。小さいテリトリーで陣地の奪い合いなんかやっている場合じゃないんです。そしてまさかこんな近代的そしてデジタル化されているいまの音楽業界にこんな事あるはずないもんね!笑。


音制連では会員社に向けて緊急に説明会を開くことになったそうです。(4/10の14時から行われました。)きっとここでは本当のことが話されると思います!

少し波を大きくしないと変わらないでしょうね。時代遅れの古い船頭を早くおろして新しい海に向かって航海していきましょう!新しい船つくって乗りましょう!

あと僕の辞表は理事会で遺留されその後の理事会での留任決議の元、理事長として復帰し、改選においても重任が決まりました。

2023.8.4  Musicman.netにてこの件に関してのインタビュー記事が掲載されました。
https://www.musicman.co.jp/interview/566908

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