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【読書日記】花まんま

朱川湊人/文春文庫

短編集。
トカビの夜/妖精生物/摩訶不思議/花まんま/送りん婆/凍蝶

※ネタバレあります。

<感想>

読後感のいい話とそうでない話の差が激しい。
「妖精生物」と「凍蝶」は後味が悪い。
たぶんそれが醍醐味なんだろうけど、私は読後感はいい方が好きなので、遠慮。

「摩訶不思議」はさっぱりしていてよかった。
死んだおじさんが三股かけてて、葬式の日に三人そろって修羅場になるんだけど、
葬式が終わったら三人が意気投合している。
それを、小学生くらいかな? 甥っ子がずーっと見ていく。
男の子から見た大人の男女のなんともわけのわからない関係性が微笑ましいと思った。
動かなくなった霊柩車をみんなで押したり蹴飛ばしたりする間に、関西弁の台詞がリズムよく入ってきて、読んでいて楽しかった。
方言はキャラづけや話の雰囲気を作るのに重宝するんだけど、ネイティブじゃないと難しいんだよなぁ。

「送りん婆」も好き。
死ぬ間際の人に「聞くと死んでしまう呪文」を聞かせてあの世へ送るのが送りん婆。
ファンタジーと日常の間の物語はいい。
昭和30~40年代という時代設定と合っていた。
「ゑ」を習っていなくて読めなかったというオチも時代に則していて鮮やか。
こういう、「あっ!」と思わせるような話を書けるようになりたい。

全体を通して情景描写は少なめ。
人物の描写が多いと思った。
子どもの一人称なんだけど、過去の回想という体で書かれていて、冷静な文体。


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