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フリーランスはやめておけ

今現在、住んでいるマンションの外から、鳴いていると表現するには不釣り合いな仰々しい猫の声が聞こえる。喧嘩しているのだろうか。

今日は仕事をしないオフの日。オフと言ったもののそもそもだいたいの日はオフのようなものでもある。ここ1年はとても自由に生活している。

かれこれ会社員というものを辞めて1年以上が経ってしまった。2020年はリモートワークやらフリーランス(個人事業主)という働き方がそれまで縁遠かった人にも身近に感じられるキーワードになったのではないだろうか。

フリーで働いているというと、「今っぽい」とか「羨ましい」と言われることもそれなりにあるのだが、今回はその幻想について書いていこうと思う。

僕個人としては、フリーランスとして働くことをそんなにいいことだとは思っていない。よく抱かれるイメージ通り、時間や場所に関してはとても自由だし、人によっては会社勤めをするよりも実質賃金が高くなることもよくあるだろう。そうしたメリットがあるので、僕は「一時的に」ということで、この労働形態で生活をしている。つまり、大学院に進学するまで(もしくは就学中まで)ということである。

それでは、何がフリーランスの問題だと思うのか。もちろんフリーランスとして何をするのかにもよるのだが、フリーランスという働き方は既にどこかで培った資産をすり減らしキャッシュに変換する働き方だというのが持論である。

仕事を得るには、既に何か顧客に提供できる価値を持っているということである。しかし、人間1人で提供できる価値には限界がある。1人であっても素晴らしい仕組みを提供できればよいが、基本的には既存の仕組みに対して何らかの貢献をしていく形になることが多いのではないだろうか。

僕自身の場合は、ウェブ開発ができるので、既存のビジネス的にうまくいっている会社のサービスの開発のお手伝いをするということになる。価値やメリットがあると思われるので、契約してお仕事をいただけるわけだし、それでいいじゃないか、という見方もある。

しかし、逆に言えばそれでしかないのである。

基本的には手伝いというニュアンスが大なり小なりあるので、仕組みそのものの製作や改善といったコアな意思決定からは遠い、末端的な仕事が中心となる(もちろん関わろうと思えばできるが、その分コミットメントが要求される。そうなれば正社員として入った方がいいということになり、フリーランスの旨味がなくなるので意味がなくなる)。

ということで基本的には既に誰かのお膳立てにより、1人でも完了できるサイズにタスクが分割された状態でやってくる。そしてそれを持てる技術や知識を使いこなしていく、そんなイメージであろうか。

ここでの問題は、(意図しなければ)技術力アップも昇進もないということである。基本的には現状維持(スキルは時間と共に一定の風化をするのでマイナスかも)しかない。なので、これを理想の状態として捉えてしまうと数年後が厳しくなると思う。

なので、僕は一時的な労働形態として捉えておくのがよいと思っている。起業する前の準備段階として、別の業界に転職するための一時的な仕事として、育児中の収入源として、など何かしら条件づきでやるくらいがちょうどよいと思う。

それでも敢えて、フリーランスという形態で一生維持することを考えると、途端にハードルが高いように感じる。年齢が上がれば上がるほど、時代が進めば進むほど、できるべき仕事の期待値が上がるものであろう。しかし、それを組織に頼らず自らの力で常にアップグレードしていく必要が出てくる。

会社や組織に所属していれば、上司やできる人から盗むことができるし実際に教えてもらうことも可能であろう。しかしフリーランスの場合、教えてもらうという体裁を自然と取れることはない(仲良くなって教えてもらうことは可能だろうが、契約の体裁として教えを請うことは不自然である)。なので相対的に環境から学ぶことは困難であると思う。

そんな感じで、既に何かしらのスキル、そして将来得られるであろう更なるスキルを生贄に、現在の「自由」と「お金」を召喚しているような、そんな感覚である。

なので、よほど能動的に考えて、研鑽していくことが好きな人以外は、自由さに惑わされて一生フリーランスで生きていく、などと考えるのは冷静に分が悪い。自分のライフステージに合わせて、一つの働き方として、適材適所で活用していくくらいが丁度いい、そんなふうに思った話である。

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