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《MV考察》Do It All the Time(2018)/I DON'T KNOW HOW BUT THEY FOUND ME

今回は "Do It All the Time" のMVの解説・考察をしていきます。

以下の記事の続きになりますので、あわせてお読み頂ければと思います。

※ 筆者の意訳や解釈も含まれますので、ご注意下さい。


MVの全容

教育ビデオを彷彿とさせるような、昔っぽいオーケストラの音楽と、男性の仰々しい語りから始まります。

音楽。とある男性の最大の業績の一つに、日々めまぐるしいスピードで人気が高まっています。
ご招待しましょう、我々科学者が ”音楽” を人間ではなく、機械によって作られる未来を研究をしているところへ。


続けて、赤い背景の空間に手作業で切り抜いたような文章が現れます。

未来の音楽グループは、複数の項目で構成されています。
A. コンピュータ

様々なスイッチがある機械の中から、 “FUN NOISE”(おかしな音)と書かれたボタンを押すと、8mmフィルムで撮影されたようなバンドの映像が映し出されます。

スクリーンショット 2020-12-11 18.34.45

B. ニューチマチック(空気の)の音楽家

と表示されたあとに、車の衝突実験用のダミー人形のような音楽隊が映し出されます。彼らの背中にはポンプが繋がれており、文字通り空気で動かされているようです。

C. 機械を許容する人間

そして「モジュール1」という文字の後に、シンガーの男性と、ドラマーの胸元がクローズアップされ、営業許可証を胸に下げていることが分かります。


様々なボタンのうち、誰かが「BGV」というボタンを押してアクティブにします。

BGVとは、”background video”=バックグラウンドビデオのこと。
インテリアの一つとして楽しむ、美しい音楽や映像で構成されたVTR作品のことを指すようです。

シンガーの男性がぎこちなく動きながら歌っているのですが、彼はどうやら機械のようです。


しばらくすると赤い背景に「モジュール2」という文字が表示され、彼はベースを演奏し始めます。その胸元には別の営業許可証が下げられています。

そして、また赤い背景に下の文字が浮かび上がります。

教育的なだけではなく、楽しさも兼ね揃えている

スクリーンショット 2020-12-11 19.58.58

昔のオーディオ機器のようなものに "iDKHOW"(バンド名の略称)が書いてあって粋ですね。

そんな彼が演奏している姿を「取り扱い説明書」と書かれた冊子に書き込んでいく研究者の姿が写されます。


未来の実験は順調に進んでいるかのように思われましたが、突然ショートしたように暴れ回る機械の男性。サブリミナル効果のように一瞬映し出される骸骨のようなマネキン(?)がちょっぴり不気味です。

スクリーンショット 2020-12-11 20.07.10


しかし何事も無かったかのように、場面は「モジュール3」へと変わります。
先程と同様、実験が勧められる模様を見せられます。

最適で活動的なブリッジ・セクション

という文字の後に、

A. YBM
DESCHINCRODIAL

B. OSCILLIDRUMS

C. METROPOLLILATOR

という文字が赤い背景に浮かび上がります。
意味を調べてもヒットしなかったので、もしかすると彼らの造語かも?
Bの項目についてはカタカナにすると「オシリドラムス」なんですが、それってケツドラムのことでしょうか…(困惑)


無機質な空気の演奏隊が印象的に何度か映された後、彼らの背中から火花が散り始めます。

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そして様々ななスイッチを一度に操作され、それに同期するかのように機械の男性も滅茶苦茶に動きます。(このマシンを操作する左薬指を見ると、機械の男性と同一人物であることに気づきます)

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火花の勢いが加速し、どう考えても異常事態発生中なのですが、映像はこれで終了します。



MVの解釈

前回の記事で述べた「被害者なき犯罪へ対する揶揄というのが、このMVが表現したいものではないかと思うのです。
言い方を変えると、「理解できないものを否定する者への揶揄」かもしれません。


このMVの、Youtubeの概要欄にある以下の文章。

1984年にその使用が中止されるまでは、公立学校のカリキュラムの一部として生徒に20年近く上映されていた

これには、何らかの問題があり教育に宜しくないと判断され規制されたという物語が伺えます。

音楽を機械に作らせる」という無謀にも思える実験。ぎこちなく演奏する男性と、空気で動く演奏隊。人間ならざるものに人間の真似事をさせる映像はキャッチーでいながら、どこか不気味なものがあります。
それらを理解できない人物が「悪である」と判断し、お蔵入りにさせたのかもしれません。


余談になりますが、現実ではこの「研究」を日本で成功させた方がいます。

「自動作曲は人間の作曲家の仕事を奪うのでは?」という言葉に対し、開発者の方は「自分がこれを研究する理由は、”人間ならでは”といえる創作を探究したいからだ」と述べています。


どこまでの意図がこのMVにあるかは分かりませんが、60年代っぽい無骨な機械やレトロな服装がスタイリッシュで、何度見ても惚れ惚れするのは事実です。
実際、シンガーの美しい細身の体型はまるでマネキンのよう。彼を機械だと見立てて演技させた方には国民栄誉賞を与えたいと思います。

記事は以上になります。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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