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16 「息が音に変わる場所」の意識

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 09「喉を開ける」では「一の呼吸」を基本とする発音法の最初のアプローチをしました。お腹からの伸びのある息と開いた喉(のど)があいまって、美しい音を生み出します。「歌うように吹く」テクニックです。

 これに対して、器楽的な演奏をするには、「息が音に変わる場所」の感覚に対する意識が非常に重要になってきます。音域の拡張・音量の調整・素早い動きなど、器楽演奏に求められる多様な表現には必須の発音法といえるでしょう。

 息が音に変わる場所とは、マウスピースやリードに接する唇とその周りです。

 発音体に直接息をぶつけるイメージで吹くと、音の出が乱暴になってしまいます。そんな時、前出の「喉を開ける」技法で乗り切ることもできます。また声楽には、「共鳴腔」という架空の空間をイメージしたり、息を当てるポイントを意識して発声する方法があり、管楽器にも応用されています。

 しかし一歩間違えると、支えのない不安定な音になってしまうことも少なくありません。そこで今回は、「一の呼吸」を基本として発音のイメージを開発する方法を学習します。

「スー」「ズー」「フー」の練習

 まず、「一の呼吸」でゆっくりと息を吐きながら、無声子音 “S” を「スー」と発音します。次に、“S” の口の形は変えないで声帯を震わせます。すると、出てくる音は「ズー」に変わります 。無声子音 “S” から有声子音 “Z” に移行したのです。

 その時、奥歯を軽く噛んでいると息の抵抗が増え、呼吸筋が目覚めます。呼気の軽い抵抗感も体感することができます。
 空気の流れが一番細くなるところの抵抗感、マウスピースの抵抗感、楽器の抵抗感、声門による抵抗感、対応する横隔膜の運動による抵抗感――将来使うことになるこれらの微妙な感覚をしっかり覚えてください。

 この後は、有声子音 “Z” から無声子音 “F” に移行して「フー」となるのですが、以下では順を追って、具体的な練習法をご説明しましょう。

1.「スー」の練習(無声子音“S”)

 息を前歯の隙間から出して、無声子音 “S”を軽く発音します。母音の “U” を含めないように注意してください。必要以上に息を吹き込んではいけません。
 子音の “S”だけを♩=60で8拍、伸ばします。

 この練習によって、息の出口の抵抗点に対する息の感覚と、鳩尾(みぞおち)の自然な押し返し(横隔膜の対応運動)、横隔膜による「息の支え」を自覚することができます。

 ここで大切なのは、感覚を研ぎ澄まして、息の流れに伴う身体各部の微妙な変化を感じとること。ただし、続けてやっていると感覚がしびれてきますので、くれぐれも一生懸命になりすぎないように。

2.「ズー」の練習(有声子音“Z”)

 次に、無声子音 “S” の練習の途中から声を出して “Z”という音にします。日本語の「ズー」とはちょっと発音が違います。「ウー」という母音が残らないように注意してください。
 子音の “Z” だけを♩=60で8拍、伸ばします。

 これにより、発音のコントロールに重要な役割を演じる「声門閉鎖」の練習ができます。声門閉鎖とは、管楽器の吹奏時に横隔膜の動きに連動させて声門を閉じ、息をコントロールするテクニックで、上級者はこれを巧みに使いこなします。

3.「フー」の練習(無声子音“F”):息の流れを実感する

 最後に、有声子音 “Z” から息を出しながら、声帯の振動を止めて無声子音 “F” に移行します。息が「両唇の間」を流れ出していくのを実感してください。
 ♩=60で8拍、伸ばしながら、アンブシュア(口の周りの形)を確認します。

 “F” を発音する際、唇を前に突き出す日本語の「フー」になってしまわないように注意してください。「フー」では鼻の下や口の周りの筋肉が伸びきってしまい、上唇の真ん中に余計な緊張が起こるので、これを避けます。


→ 次回へ続く


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