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是枝監督が絶賛!!<座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル>上映後トークイベントレポート『ヤジと民主主義 劇場拡大版』

昨年、「TBSドキュメンタリー映画祭 2023」にて上映した『劇場版 ヤジと民主主義』が、映画版『ヤジと民主主義 劇場拡大版』として、現在大ヒット上映中です。

2月8日(木)からはじまった「映画・テレビの枠を超えた」ドキュメンタリー映像の祭典、【座・高円寺】ドキュメンタリーフェスティバルでは、「“Democracy”について」をテーマに特集上映が組まれています。その中で、ゲストレセクトションとして各方面で活躍中のドキュメンタリーに造詣の深いゲストセレクターたちが選んだお薦めのドキュメンタリーが上映されており、初日にゲストセレクターの映画監督・是枝裕和が選んだのが『ヤジと民主主義 劇場拡大版』!
このたび、山﨑裕侍監督とのトークイベントが実現しました。


左:山﨑裕侍監督 右:是枝裕和監督

多くのドキュメンタリーファンが詰めかけた場内、たった今まで『ヤジと民主主義 劇場拡大版」が上映されて熱気溢れる会場に、万来の拍手の中ゲストセレクターの是枝裕和監督と山﨑裕侍監督が登壇しました。今や劇映画の監督として世界にその名が轟かす是枝監督ですが、元々はテレビで多くのドキュメンタリーを生み出してきた生粋のドキュメンタリストです。その是枝監督が“Democracy”というテーマの下、選んだ本作についてどのように“掘り下げて”いくのか?が注目のトークとなりました。

話は是枝監督が山﨑監督の経歴を聞くことから始まり、徐々に映画の内容に。山﨑監督はテレビ朝日「ニュースステーション」「報道ステーション」ディレクターを担当の後、HBC北海道放送に中途入社するが、多くの事件に対して、普通のテレビマンとは異なるアプローチをするエピソードの数々が披露され、早くも是枝監督による「ドキュメンタリスト・山﨑裕侍の分解作業」に会場は興味津々の様子。

そして是枝監督が作品について「大杉さんと桃井さん、二人がこの戦いを通して学んでいき成長する。観ている私たちもあの二人に寄り添いながら、影響されていく。まさに民主主義、この映画の中で私の一番好きなところです。その点は意識されて構成していたのでしょうか。」と質問を投げかけると、山﨑監督は「二人のように声を上げる人は、変わった人、特殊な人という見られ方をしがち。ですので、そうではない二人を描こうと思いました。観ている私たちは、何かおかしなことがあっても二人のようにヤジを飛ばすことはできない。けれども二人のそばに寄り添い、二人に影響されて自らも声をあげたり、という存在だと思います。二人に密着し、取材を重ねていくことでそれをリアルに感じました」と、作品の映し出したものを強調しました。

次の話題は、山﨑監督のHBCでの現在の取り組みについて。是枝監督は「東海テレビにいらっしゃった阿武野勝彦さんのように、面白いものを作る地方局には必ず一人、核となる人がいて、若者が伸び伸びと自由に作れる環境があると思います。山﨑さんを中心にHBCにもそういう環境が生まれつつあると思うのですが、山﨑さんは今、 HBCでの取り組みの中で何を考えられているのですか」と投げかけると、山崎監督は「是枝さんのツイートで、僕の好きな言葉があって『テレビは声の大きい人の拡声器になってはいけない。小さな声に耳を傾ける社会の聴診器にならなくてはいけない』というのがあります。声の小さな人々に取材していくことで、社会にいまどういう歪みがあるのかを映し出す。実際、ある女性記者の問いを発端に、風俗で働く知的障害を持った女性の方々を支援する番組を作りました。彼女らのように、僕らが目を向けないと知ってもらえないことがたくさんあるので、そういう人たちの拡声器になれる番組を作っていきたい。若い人たちには、そういう人たちに頼られるような記者になってほしい」と、報道にかける思いを露わにしました。

そこから話は、センシティブなテーマを扱うことが制作に及ぼす影響について繰り広げられました。是枝監督は「山﨑さんは多くテレビの視聴者から多くの批判が来るような題材も取材される。さらに映画の中で、元北海道警の原田さんが「きみら(メディア)は無視されてるんだよ」とおっしゃっていました。違法行為を犯す権力が、明らかにメディアを恐れなくなったと感じています。山﨑さんはテレビ報道のこういった状況にどう抵抗しようと思われているのですか」と質問しました。山﨑監督は、「共感されにくいテーマを扱うときに、コンプライアンスが問題になってきます。表現ひとつ取っても、これは批判がくるんじゃないかという意見が出る。確かにそれは大事なんだけれども、それを気にして取材すらしなくなるのは良くないと思うんです。取材しなくても誰も咎めないけれども、取材しなくては世の中の現状が伝わらない。そういうところに自ら突っ込んでいかないといけないと思います」と回答しました。

二人の想いが詰まった印象的な言葉のやりとりに会場は終始感嘆の声が漏れ、和やかながら沸き立つような熱い意志が観客席に満ちた、充実した雰囲気のままトークは幕を閉じました。
 

◆座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルは2月8日(木)から12日(月)まで開催。
詳細はHPまで https://zkdf.net/
 
◆「ヤジと民主主義 劇場拡大版」 
排除された「小さな声」は何を暴いたのか?
現在も続く裁判の経過の他、2022年7月8日に発生した安部元首相の銃撃事件以降、市民が政治家に直接声を届けられる唯一の場所である街頭演説中に、“警備”という名のもとに、市民が声を上げることの権利が加速度的に奪われていってしまうのではないかといった民主主義の崩壊を招きかねない危険や不安を提起しています。

語り:落合恵子 取材:長沢祐 制作・編集・監督 山﨑裕侍 
プロデューサー:山岡英二 磯田雄大 鈴木和彦
撮影:大内孝哉 谷内翔哉 村田峰史
編集:四倉悠策 MA:西岡俊明
音楽:織田龍光
製作:HBC北海道放送 
配給:KADOKAWA
宣伝:KICCORIT
2023年/日本/100分/ステレオ/16:9  
ⒸHBC/TBS
公式HP:http://yajimin.jp/ 公式twitter: https://twitter.com/yajimin1209


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