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舞台挨拶『ダリエン・ルート“死のジャングル”に向かう子どもたち』この作品が難民問題に一石を投じるドキュメンタリーに。LiLiCo「心の片隅に置いて知識に。知識から行動に」

3日目の3月19日(日)には、米国に渡るべく、険しい地形やギャングの支配などから“死のジャングル”と呼ばれる密林地帯「ダリエン・ギャップ」を目指す難民たちの現実を映すドキュメンタリー映画『ダリエン・ルート“死のジャングル”に向かう子どもたち』が上映され、萩原豊監督伊藤礼樹氏(UNHCR駐日代表)中井裕真氏(日本ユニセフ協会)、そして本映画祭アンバサダーのLiLiCoが舞台挨拶を行った。
 
「映画を観ていただき嬉しく思います」と挨拶し、取材を通して「ごく普通の家族が政治的問題で自分の国で暮らしが成り立たず、命を賭けた歩みをしていかなければならない不条理を感じました。なぜ危険なダリエン・ギャップに子供を連れて行かなければならないのか?国際社会で対応することはできないのか?そんな思いがある」と胸の内を打ち明けた。
 
4人の女の子を支援しているというLiLiCoは「本作を鑑賞してから時間は経っているけれど、いまだに内容が心に焼き付いています。異国の地でより良い生活をしたいからダリエン・ギャップを目指す家族の姿に胸が締め付けられました」と過酷な現実に打ちのめされていた。
 
世界各地で難民支援をしてきた伊藤氏は「難民の方々は祖国に帰ったら命がない、もしくは自由を剥奪される人たち。祖国での人権侵害や紛争のほとんどが政治的理由だ。政治的リーダーが自国民を守るという意識を築き上げなければいけない」と語り「この映画に出てくる難民の4姉妹の長女の姿を見ると、可哀想で支援が必要な弱者という我々が想像する難民像とは違うと気付かされる。彼女は自分で考えて希望を持って道を拓いている。それが難民の本当の姿であると考えなければいけない」と包摂を訴えていた。
 
難民の子供たちが置かれている状況に詳しい中井氏は「ダリエン・ギャップにいるギャングのほとんどは10代。紛争地帯には子供の兵士が沢山いるが、子供たちがそこに追い込まれる背景には本来受けられるはずの教育が受けられないという構造がある。子供たちにとって、教育は重要な支援だ」と話した。
 
また日本の難民受け入れが進まない土壌について伊藤氏は「法律を変えたり、システムを変えたりするのは世論だ。選挙権を持つ我々が変わらないと、システムは変わらない。難民問題に一石を投じるこのドキュメンタリーをきっかけに、議論を高め、世論も関心を持って大きなうねりが生まれるといい」と意識の変化を強調。来日34年のLiLiCoも「日本はマニュアルや前例がないと物事が進まない。そこに根深い問題がある」と実感を込めていいた。
 
萩原監督は「この映画を通じて難民の方々の表情や言葉から、みなさんの人生と難民の方々の姿を重ね合わせて、ダリエン・ギャップを渡る難民25万人という数字の裏側にある人生について考えてみてほしい」と期待。LiLiCoも「数字を聞くだけで胸が張り裂けそうになるけれど、今日だけではなく心の片隅にでも置いてもらえれば、それが知識になる。知識になると行動に移すこともできるようになりますから」と確信を込めていた。

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