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2021年10月10日放送風をよむ「岸田首相とヒロシマ」

4歳のとき、広島の原爆で亡くなった少年。名前は岸田英治さんです。実は、岸田総理の親戚に当たります。

「彼の小さな体は、何者か判別もできない溶けた肉の塊に変わってしまいました。彼の死を、あるいは彼と同じように非業の死を遂げた幾多の人たちの死を、決して無駄にしてはなりません」

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この手紙の送り主は、カナダに住む広島出身の被爆者、サーロー節子さん。

サーローさんにとっても遠い親戚である岸田総理に、4日月曜の就任に合わせて送った手紙でこう訴えたのです。

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「岸田文雄さま、核兵器のない世界をめざすことは、ご自身のライフワークであるという、これまでのご発言が本当であるのなら、今こそ、それを行動に移して下さい」

岸田総理に託した「核兵器のない世界」への願い。その岸田総理は今、核の問題とどう向き合おうとしているのでしょうか。

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岸田文雄首相「世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名のたいまつを私もこの手にしっかりと引き継ぎ、核兵器のない世界に向け全力を尽くす」

8日の所信表明演説で、核廃絶を目指すとした岸田総理。

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被爆地・広島1区選出の議員であり、岸田家の親戚・縁者の多くが被爆し、亡くなっているといいます。そんな岸田総理は、これまでも核廃絶に意欲的な態度を示してきました。

オバマ大統領 献花

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2016年、アメリカのオバマ大統領が現職の大統領として初めて、広島を訪問。当時外相だった岸田氏は、その実現に尽力しています。

また、核保有国・非保有国、双方の有識者が核軍縮の方策について議論する「賢人会議」を立ち上げました。

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その一方で、2017年に採択され、その後発効した核兵器禁止条約への参加については、これまで慎重な姿勢を示しており、4日の就任会見でも明言を避けたのです。

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岸田文雄首相「大変、重要な条約だと思いますが、ただ残念ながら核兵器国は一国たりともこの核禁条約には参加していないという状況であります」

来年3月開催が予定されている、核兵器禁止条約を批准した国による初の締約国会議。被爆者団体からは、そこに日本も参加するべきとの声が高まっています。

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広島県被団協・佐久間邦彦理事長「日本政府として核のない世界を望んでるんだとはっきり述べるのが一番必要」

また、広島市民からも、岸田総理の姿勢について、厳しい声が上がっています。

広島街録「外務大臣のときに期待したんですけど…。けんかしてでも意見をはっきり言えるような人じゃないと、ダメじゃないかなと」

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いまや、世界中に、1万3000発もの核兵器が存在。さらに北朝鮮の核開発など、核兵器をめぐる国際情勢は年々危うさを増しています。

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では、「なぜ核兵器廃絶は進まないのか?」そんなストレートな疑問を、国会議員に投げかけ続けている若者たちがいます…。

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「核政策を知りたい広島の若者有権者の会」。略して「カクワカ広島」は県内の若者を中心に、広島選出の国会議員などに核政策について尋ねる活動を続けています。

これまで国会議員16人に面会を打診し、9人から直接話を聞きました。 しかし、岸田総理とはまだ面会の実現に至っていません。

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カクワカ共同代表・田中美穂さん「これまでの他の総理とは比べものにならないくらい被爆者の体験とか十分ご存知だと思う。そういうものを知っているからこそ、核兵器はあってはいけないものだというメッセージを国民や世界に発信する役割があると思う」

広島から誕生した岸田総理に期待を寄せる一方で自分たちも行動を起こすことが大事だと話します。

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カクワカ共同代表・田中美穂さん「脅威というものはすぐそこにあって、真剣に日本主導で考えていかないといけない。黙っているだけじゃなくて、願っているだけじゃなくて、具体的に行動しないといけない。そういう所を若い世代を中心に広めていけたらと思います」

そして今、サーロー節子さんは岸田総理への手紙で、改めてこう訴えました。

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「もっとも重要なことは、核兵器禁止条約に加わることです。日本がこの条約に加われば、それは世界全体に大きな波及効果をもたらし、核保有国さえ動かします。広島選出の総理大臣がその決断をせずに、いったい他に誰がそれをするのでしょうか」



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