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クリエイティブは「社会的背景」から生じる飛沫みたいなもの、という話

元WEBデザイナーが、デザインについてつらつらと書いていきます。今回はデザイン、クリエイティブな営みにはコンセプトだけでなく、必ず「背景」「文脈」が存在する、ということについて語ります。職業訓練、スクールでデザインを学んでいる人、デザインに関わっている人に読んでいただければ幸いです。


どんなクリエイティブにも「背景」「文脈」がある

デザインも現代アートも、社会情勢、時代性といった、人間の営みの大きな枠組み、流れの影響を必ず受けています。(アートに関しては社会性、時代性よりももっと深い、根源的な何かに接続した表現をする人も一部にいます。)

特にデザインは産業の一部であるがゆえに、社会的、時代的背景と密接な関係がありますし、そういったものを無視する事はできません。

具体的に何処の、どのようなレイヤーに接続するのかは、時と場合と表現者の思惑によって変わってきますが、全てのクリエイティブな活動、成果物には「背景」となるものがあり、それらを語るうえでの「文脈」が必ず存在します。

デザインする際には「背景」「文脈」を理解する事も重要

クライアントの事を理解するには、クライアントの業務内容、サービスだけでなく、クライアントが属する業界全体、クライアントの業界内での立ち位置等の背景、クライアント自身や提供しているサービスの文脈を理解することも重要です。

自社サービス、事業のデザインにおいても、自社サービス、製品、会社そのものの、社会における立ち位置、ビジュアルコミュニケーション、ビジュアルデザインをどのような文脈で語るべきか、ブランディングすべきかをよく検討する必要があります。

デザインする際には、デザインするもの、サービスのコンセプトだけでなく、どのような背景があって、どのような文脈で語るべきものなのかということも押さえておくべきです。

アンチテーゼはよくある事

一見突飛なデザインというものがハイブラント等で時折出てきますが、調べてみるとそれらは一般常識、業界の常識、定番に対するアンチテーゼである事が良くあります。それらは本流としての背景・文脈に対しての揺さぶり、反発であって、本流からの断絶、逸脱ではないのです。

これらはアートに関しても同じで、デュシャンの反芸術、現代アートの一部の活動もそれまでの美術の文脈、既成概念に対する反発あるいは否定であり、それは世間的に広く共有されている文脈、概念という本流があるからこそ成り立つものだと言えます。

ガラパゴス化した価値観は共感できない

「自己表現」「自己主張」からのクリエイティブは、作った本人からすれば背景・文脈があるものなのでしょう。

ですが他人からすれば、個人的な背景・文脈は基本的に共有不可能なものであり、そこから生じた成果物は言うなれば独自進化、「ガラパゴス化」したもの、閉じられた世界で生成されたものだと言えます。

それは他人からすれば理解するための手がかりが乏しく、容易に受け入れがたいものに見えるのです。

「自己表現」「自己主張」なクリエイティブがデザインにおいて忌避される理由、それは極個人的で、世間一般的には共有できないような背景・文脈でもって生成された、「ガラパゴス化」した部分にあると言えるでしょう。

共感できるデザインには、「共有できる背景、文脈」がある

逆に、多くの人々の指示、共感を得られるデザインは、人々が共有、共感できる背景、文脈に根差して作られています。

その中でも特にわかりやすいのが、「ニーズ」「トレンド」ではないでしょうか。これらも社会背景や時代の流れから湧き出てきた要素の一部であり、突き詰めればもっと色々な要素がある事が見えてくるはずです。

人の心をより深く強く動かすデザイン、表現を目指すのなら、表面的な見た目の良さや演出テクニックだけでなく、背景や文脈といった目に見えるものの裏側、奥にある部分も掘り下げるべきだと筆者は考えます。




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