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デザイン初心者はよく間違える?「デザインの言語化」の話

元WEBデザイナーが、デザインについてつらつらと書いていきます。今回はデザインの「言語化」ついて語ります。職業訓練、スクールで学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


他人が作ったデザインを分析するのはデザインの言語化の練習になっていない

デザインの言語化の練習と称して、「他人が作ったデザイン」を分析している学習者をよく見かけます。

他人のデザインを分析して、自らのデザインに取り入れるのは必要な事ですが、単に分析して言語化するだけであれば、それはデザイナーの仕事ではなく、アナリスト、マーケッターの仕事の領域です。

実のところ、他人の作ったデザインの分析はデザイナーに求められている、「デザインの言語化」に対する効果的な練習方法とは言えません。

求められているのは「自分の意図の言語化」

では、デザイナーに求められる「デザインの言語化」とはどんなものでしょうか?

デザイナーに求められている事、それは自分のデザインの意図を言葉で説明する、という事です。さらに突き詰めると、「何故そのデザインにして、その結果、どうなると予想されるか」を説明する事です。

他人のデザインの言語化の際、意識は常に外にあるものを観察しています。一方で自分の意図の言語化は「何故自分はそう思ったのか」「何故自分はそれを作ろうとしたのか」を理解するために、意識を自分の内側に向けて観察しなければなりません。

意図なき「空っぽデザイン」は言語化に詰まる

実際に自分に対して「何故」を向けると答えに詰まる、無意識的、反射的に何も考えずにやっていた、という事に気付かされることが多いと思います。

それはいわゆる「手を動かすことに逃げている」状態です。この状態ではデザインを言語化するのは難しく、取ってつけたような後付け理由しかでてきません。

また、他人のデザインを丸写しにしたり、テクニックだけでデザインしていた場合も同様に、言語化しようとすると言葉が出てこない、「自分の意図」が抜け落ちた空っぽなデザインであったことに気付かされると思います。

デザイン技法の解説は言語化する意味がない

デザイン言語化練習で、「配色は〇〇~」「使用されているフォントは△△~」のように、デザイン手法を紹介するだけで終わっている初心者、学習者を多く見かけます。

デザインを学んでいる人にとってはそれらは重要な情報なのかもしれませんが、「デザインの言語化」で求められているのは、そのような技法の解説・説明ではありません。

デザインの言語化で求められているのは「何故その色なのか」「何故そのフォントを選んだのか」「どのような目的・意図でそうしたのか」「その結果どのような効果があるのか」を説明する事です。

デザインの言語化をしてみて、デザイン技法の説明に終始してしまうとしたら、それはデザインの目的・意図を見失っている可能性があります。その場合は一度「何のためにデザインしているのか?」に立ち返ってみる必要があると思います。

視覚表現の補完だけではなく、目的・意図を明確化するための言語化であるべき

現代アートでは1980年代以降、工業的な量産品を「作品」として取り入れる手法が受け入れられ、一般化していきました。その背景として「作品を作る」ことよりも「制作意図」がアートとして評価される、いわゆるコンセプチュアルアートの台頭があります。デザインも価値観と産業の変化、デジタル技術の進化でアートと同様の道を辿っているように見えます。

モノの時代からコトの時代への変化、生成AIの進歩で、手を動かすこと、技術を学ぶことよりも、目的を考える、意図する事の重要性がより明確化、先鋭化してきています。

それゆえに「デザインを制作する」事よりも、「デザイン的な思考」「デザインを言語化する」事の重要性が増してきているようにも思います。

初めに制作物(イメージ)があって、そこから言語化していくというプロセスも確かにありますが、現代のデザインにおいてより望ましいのは、初めにコンセプト(言葉)があって、そこからデザインを組み立てて行くプロセスだと考えられます。

視覚表現を補完するため、プレゼン対策のために「デザインを言語化」する場面も多くあると思いますが、制作物の説明補完ではなく、目的・意図を明確にするため、デザインコンセプトをより強固なものとするために「デザインを言語化」することを意識して練習しましょう。



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