見出し画像

デザインが好き、仕事にしたいの「理由」を深堀しないと不幸になるかも、という話

元WEBデザイナーが、デザインの仕事についてつらつらと書いていきます。今回はデザインが好きな理由、デザインを仕事にしたい理由をきちんと理解しないと後々苦しむ事もある、ということについて語ります。職業訓練・スクールでWEBデザインを学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


デザインの「何が好き」なのかを良く考えてみないとミスマッチを起こす

筆者がこれまで関わってきたデザイナー達に、デザインの仕事をしている理由や、デザインの何が好きなのかを聞いてみた事があります。その中でデザイナーの「好き」にはおおまかに2つの傾向がある事に気が付きました。

単純にものを作るのが好きな場合
「モノ作りが好き」だからという理由が第一に出てくるデザイナーの多くはこちらに分類されると思います。さらに突き詰めるとその根底にあるのは「自己満足」なのではないかと考えられます。この傾向がある人は自身の美意識や価値観に自信があり、高い品質の「良い作品」を作れる、ゼロ=イチの創造が得意であることが多いです。

「誰かのために」「役に立つ」事が好きな場合
デザインを仕事にしている理由に「誰かが喜んでくれるから」を理由に挙げる人も結構います。この傾向がある人は傾聴力、共感力が高く、「良いデザイン」「良いサービス」を作り出す人が多いです。

どちらが良い・悪いということはなく、またどちらも一長一短があります。気を付けるべきは自分の「好き」の属性、傾向をよく理解せずに安直に「デザインの仕事」を求める事です。

デザインの仕事といっても求められる能力、技術は状況によって変わりますし、労働環境、業務内容もさまざまです。自身の「何故好きなのか」という理由を深堀せず、漠然と「デザインが好き」で仕事を選んでしまうと、好きを仕事にしてもミスマッチになる、ということも起こり得ます。

「作るのが好き」では仕事に向かない事もある

「作るのが好き」でデザイナーになっても、自分の「好き」の傾向が仕事と会わない、理想と現実のギャップにさいなまれる、そもそも自分が好きなのは「デザイン」ではなかった、等の理由で離職する人も多く見かけます。

特に「デザインの仕事」が自分には合わないと感じる人に多く見られる傾向として、次の2点が挙げられます。

自分の思うように自由にものを作るのが好きな場合
請負仕事は特にそうですが、デザインの仕事の大半において、自分自身の意志で自由にできる範疇はそう広くはありません。ものつくりの「自由さ」「自己表現」が好きの理由である場合、仕事としてデザインをやっていくには向いていない場合が多いです。

作る事そのものが目的になっている場合
ビジネスにおいて製品の製造やサービスは手段であって、目的ではありません。最近は特にそのことが顕著になってきています。モノの時代からコトの時代へと変化する流れは今後より一層加速すると予想されますが、そのような時代の流れの中では、単純に「ものを作るのが好き」なだけでは仕事としては成立しづらくなっていくでしょう。

「好きを仕事にする」より「得意を活かす仕事をする」というマインドの方が楽でいられる

好きを仕事にしたいと考える人は、デザインやものつくりが「目的」になっている人が多いと思います。得意を活かすという考え方をする人は、どちらかというとデザインを「目的」ではなく「手段」と捉えているのだと思われます。

デザインの仕事は、他人の思惑や政治的な力学が否応なく絡んできます。デザイナーの思惑通りに事が運ぶことはそう多くはありません。

好きを仕事にしている人にとって自身のデザインに対する他者の干渉は、自分自身に対しての他者の干渉と同義であり、強いストレスを感じる事もあると思います。

一方、得意を仕事に活かしている人にとっては、デザインはあくまで手段であり、自分の思い通りにならない現実に直面しても、割り切った考え方でその手段を行使する事が可能ですし、思考の切り替えも速くできます。他人の干渉、自分の置かれている状況にも柔軟に対応できるので、ストレスはそれほど感じられないでしょう。

「お金を稼ぐ」が目的なら、他の仕事を探した方が効率は良い

WEBデザイナー志望者の志望動機で、「在宅でできる」「手に職をつけたい」「フリーランスで仕事ができる」が上位の理由としてあって、おまけ程度に「デザインに興味がある」「ものつくりが好き」という理由をつける人を最近特に多く見かけます。

実際に行動してみると、数カ月程度職業訓練やスクールで学んだ程度では「在宅でできる」「手に職をつけたい」「フリーランスで仕事ができる」を実現するには至らない事が理解できると思います。

インターネットの普及、手仕事のデジタル技術化で、デザインのノウハウ、テクニックは過去に比べると格段に学びやすく、効率化しています。しかし、実務レベルで通用する領域に達するには、根気強く、粘り強く学習と実践を繰り返さなければならないのは、現代においても変わりません。

そのような現実に直面したとき、上記のような志望動機で行動している人達は比較的あっさりとあきらめてしまう傾向があります。

正直言ってしまうとデザインの仕事、特に「ちょっと練習すれば誰でも到達できるレベル感の仕事」では、お金を稼ぐための手段としては非常に効率が悪いと思います。

「葬送のフリーレン」みたいに、ほどほどに好きくらいが丁度良いのかも?

「葬送のフリーレン」という漫画・アニメの中で、主人公の魔法使いフリーレンと弟子のフェルンが「魔法は好きか?」と問われるシーンがありますが、二人とも「ほどほどに好き」、と答えています。(二人ともその言葉の背景には複雑な経緯と思いが秘められているのですが。)

デザインの仕事に限って言えば、デザイナーのスタンスとしてはフリーレンとフェルンの言う、「ほどほどに好き」位が丁度良いのではないかと筆者は考えます。

デザインだけでなく、クリエイティブ全般に言える事ですが、「好き」でなければ長続きせず、かといって好きがすぎると仕事として成立しづらくなる、芸事はなんとも難しい道であります。

「好きを仕事にする」を考えるとき、その「好き」の方向性と思いの強弱をよくよく観察してみましょう。場合によっては仕事にしない方が幸せでいられることもあるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?