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深夜食堂と業と年越しそばの天ぷら

ドラマ「深夜食堂」は、5シーズンある。

年末が近づいてくると、観たくなる。

シーズン1が好き過ぎて、これだけで満足してしまう。他のシーズンが少し薄めに感じていた。

今年、ハリウッドの俳優がストライキを起こして、アメリカの新作ドラマなどが見られない中で、オススメのドラマの1つとして深夜食堂が紹介されたらしい。

それを知って、改めて全部見直して、今日見終わった。

シーズン2は、「新人女優の宣伝の場なんじゃないか」とか、「インスタントラーメンやハイボールの宣伝みたいだ」とか、うがった見方をしていた。

シーズン4からはNetflix制作になるんだけど、今度は「予算が多くなって、有名な俳優が増えたけどなんかバブリー」とか。

久しぶりにすべて観終わって、「自分の心と鑑賞力は、ちっちぇあなぁ」と反省した。

どのシーズンもとても良くて、全体を通して流れる、常連及びマスターが作り出す雰囲気が、この世でかけがえのないものに感じた。

自分が、数あるドラマの中で「深夜食堂」にハマるのは何故なのか、見ている中で気づいた。

「深夜食堂は、業の肯定なんだ」

立川談志は「落語とは業の肯定だ」と言ったそうだが、深夜食堂もまさにそうだと思う。

日本人は、寛容な部分もあるけど、そうじゃ無い部分もあって、その息苦しさが増している気がする。

時代が変わっても無くしてはいけないと思うものを心の底にしっかり持っているマスターの店に、安心して集う常連や新しいお客さん。

不条理な世の中で、どん底に落ちて、この店とささやかな料理に救われ、傷ついた心を癒やし、また店から旅立っていく人達のドラマ。

これからも世の中が変わるほどに、自分も深夜食堂を見直して、忘れてしまったものを取り戻したいと感じた。

それにしても、見過ごしていた登場人物、見直してみると、あの人もこの人もと、今では好きな俳優さんだった人が多かったことに驚いた。

そういう意味でも、いい番組だったんだなぁ。

深夜食堂はシーズン5で終わり。

最後の回は、どのシーズンとも同じように大晦日。

その最後に、年越しそばに天ぷらを揚げるシーンが出てきた。

自分が年末が近づいてくると深夜食堂を見たくなるのは、自分の家業の年越しそば用の海老天を徹夜で揚げる前に気持ちを上げていきたいから、もある。

その深夜食堂の最後の最後の回に、年越しそば用の天ぷらが出てくることに、めぐり合わせを感じた。

皆さんにとって、良い年末を。そして、人生の不条理や自分の業を、癒やしてくれる場所がありますように。

おやすみなさい。