厭世なる猫へ 第8話

第8話:最期の幻

 
 やめて、やめて……。
 お願いだから、誰か助けて!

 風邪で熱があるからふらついてて、おまけに足まで痛めてしまって、自分では一歩も動けないの!
 みんな見てないで、笑ってないで、助けてよ!

 お願いだから、誰か助けて! このままじゃ、あたし死んじゃう!
 みんな、この状況を見たら普通にわかるでしょ?
 こんなに人がたくさん居るのに、何で誰も助けようとしないの? 何でみ

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厭世なる猫へ 第7話

第7話:ルーレット

 
 その日、男はすっかり人気の無くなった職員室で、オレンジから紫に染まりゆく空を横目に椅子へ深く腰を下ろすと、その場で軽く伸びをした。
 教師というこの仕事は、とにかく肩が凝って仕方ない。まともに授業を聞いていない生徒の前でも何食わぬ顔をしながら教壇に立ち、神経だけをすり減らす日々。

 最近の学生というのは、教師の話を聞けないヤツらばかりなのだろうか?
 授業中にスマート

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暇の洞察

2週間という暇を与えられた。

しかし僕はこの2週間という暇を謳歌出来ない。

そんな人は多いのではないだろうか。僕らは暇を嫌う、空白を呪い、隙間を悪魔のように遠ざける。まるでその先に本当の幸福が待っているかのように。

手帳は予定で一杯で、何かを満たそうとしている。

神経症的精神に蝕まれた個体。

一体何を求めてその勤勉さは機能するのだろう。

日々忙しなく、友人と遊び、地位や名声のために邁

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都市部の養蜂家

夏のオバサンの便宜的呼称

不合理だ。バカなんじゃないかとすら思う。

アームカバー、真っ黒のタイツ、やたらでかい帽子にはヒラヒラとレースまで付いている。そして不釣り合いに高級なサングラス。こういうオバサンが日本における夏の象徴と言っていい。僕はこれを都市部の養蜂家と呼ぶことにした。

美白のためだと人は言うが、まずその格好が致命的に美を損なっている。行動原理の不可解さもまた、その損なわれた美をよ

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人生は自分に配られた配牌のようなもの

人生は自分に配られた配牌のようなものです。

誰もが死ぬまで自分の手牌で勝負していかなければならないのです。

不条理な要素が満ちています「開き直ってやるしかない」

現実を受け止め、忍耐強く、我慢強く、最後までゲームを投げ出さなかった人

そんな藤田社長のコラムがとても印象的でした。。僕は麻雀はやらないけど

この言葉を深く改めて刻んでいこうと思う。。。

【発見】
・絵文字だけで会話を成立させ

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厭世なる猫へ 第5話

第5話:あいのうた

♪(イントロ)
キラキラ キラキラ 眩しい光
君を いつものビルで 見かけて
わざと ほんの少し 後を追いかけた

1番
♪(Aメロ)
優しく微笑みながら 君を見つめる
君は涙を浮かべて 僕を見上げる
音の隙間を 流れるように どうかお願い
最後の願いを 一緒に叶えて

♪(Bメロ)
こんな気持ちは 切ない
こんな気持ちは 苦しい
「愛してる」が 届かない

だから……

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《かつて私は》  2003/07

かつて私は蛾でした。めっぽう美しく飛ぶと評判の蛾で、ひとたび私が羽を広げれば、誰もが口を開けて私にウットリと見入るほどでした。素でこんな風ですから、無論言い寄ってくる異性は後を絶ちません。大勢の恋人志願者が、私をその腕の中にかき抱くべく、欲情に目をギラつかして近づいて来られました。中には、血筋も身なりも何ら申し分のない、素敵な殿方も少なからずおられましたわ。
  ――嗚呼、愛しい殿方たちよ! 
 

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《彼女》はまだ遠い   2001/04

朝の九時、目覚まし時計の鳴動で目を覚ますと、ベッド脇のカーテンの隙間から射しこむ一条の陽光が、蒲団を斜めに横断していた。Kは、借家の天井を見詰めながら嬉しそうに目を輝かせ、にやりとした。何が嬉しいのかといって、本日、デートなのである。記念すべき、初デート。いわゆるひと目惚れというやつで、初めて見た瞬間から猛烈に惚れ込み、爾来、あの手この手を尽くして必死のアプローチを敢行、一時はあまりの熱の入れよう

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