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一人の人間にできることはこの(マネジメントの5つの要素の)うちの2つが限界

島根県の海士町に出向していた頃、ある企業の社長経験者から経営についてお話を伺う機会がありました。
その方からは、「マネジメントには、①ビジョンの共有、②ミッションの明確化、③進捗管理、④モチベーションのアップ、⑤人材育成、の5つの要素がある」と教えてもらいました。この話を聞いた時、私は「これは学校経営にも当てはまる」と思いました。

目的と手段が逆転して活動の形骸化が起こりやすい学校文化の中で、教育の最上位の目的を常に掲げ続け、目的達成のためなら慣習に囚われず新しいことに挑戦したり、逆に目的達成に不要であればこれまでのルールを思いっきり変えたりするなど、教育のビジョンを学校全体で共有しながら教師の役割を明確化し、学校現場から新しい学びの変革を起こしている校長先生が注目され始めています

また、積極的にビジョンを掲げているわけではないものの、職員室の雰囲気が良く、教師がモチベーションを高く持ってイキイキと仕事をしている、そんな学校経営をしている校長先生や、自ら積極的に授業を見学したり、校内で教員相互の学び合いが行わる環境づくりをして、教員の人材育成に積極的に取り組んでいる校長先生がいます。

マネジメントの5つの要素は、民間経営だけでなく、学校経営を考える上でも参考になる視点だと感じています。

その人は続けて、「一人の人間にできることはこのうちの2つが限界であり、残りの3つは誰かと分担するしかない」とも話してくれました。
この言葉はとても心に響くとともに、ストンと腹に落ちました。私に話をしてくれた企業の元経営者は、東証一部上場企業で社員が数千人いる、大企業での社長経験のある方です。私から見たら雲の上のスーパーマンのような人でさえも、マネジメントを一人で抱え込むことには限界があり、仲間を頼りながらチームで経営しているのだと教えてくれたのです。

学校経営についても同じだと言えます。どんなに優れた校長でも完璧にできるのは2~3つだと思います。そのときに、マネジメントの足りていない部分に一早く気付き、チームとしてフォローできるかどうかで、学校の在り方は大きく変わってくるのだと思います。

文部科学省や海士町、岩手県教育委員会と様々な立場で校長先生と関わる機会がありますが、魅力的な校長先生に共通することととして、「誰かに頼ること」「色んな人を巻き込むこと」が上手いという点が挙げられます。それは別の言葉で「手放すこと」と言い換えることができるのかもしれません。

学校の経営目標を力強く掲げ、やるべきことを明確に打ち出すことの得意な校長であっても、職員室全体のモチベーションまで気がまわらなかったり、細かな進捗管理が苦手だったりする場合もあります。その時は、副校長や主幹教諭、学年主任と連携しながらチームとして学校をマネジメントしていくことで、より良い学校づくりが可能になります。その逆に、校長がビジョンやミッションを掲げることが苦手な場合であっても、中堅・若手の教職員が中心となって教職員同士の対話を重ね、学校運営協議会や地域住民と協働しながら、学校の目指すビジョンや役割を共創していくこともできます。

様々な教育課題が山積し、その解決とともに新しい時代への変革が求められる学校現場において、経営者である校長に求められる資質・能力の期待値は年々高まっていると感じます。その全てを一人で抱え込もうとするのではなく、一人の人間がマネジメントでできることは半分もないと割り切って、謙虚さを持って副校長先生を始めとする他の教職員に任せ・手放しながら、でも残りの2つは自分が絶対にやり切るのだという責任感を持って、学校経営に臨んでいくと良いのではないでしょうか。

私も、現在、岩手県教育委員会で管理職として勤務していますが、マネージャーとしてこの言葉を意識して仕事に取り組んでいます。


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