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探究の時間になると職員室から誰もいなくなる

少し前の話になりますが、岩手県立大槌高等学校が開催する探求発表会・研究協議会にパネリストの一人として呼んで頂きました。

大槌高校の探求発表会・研究協議会(2023年2月)

一年生の地域課題についてのフィールドワークから見えてきた問題分析と柔軟な発想からの提案は、一行政官として聞き入ってしまいましたし、二年生の自分自身の興味関心に基づく個性溢れる探究の成果発表も面白かったです。

私は後半の研究協議会の冒頭でプレゼンしました。生成系AIをはじめとする人工知能や情報通信技術の加速度的な進歩など、変化の激しい時代にあっては、単一的な問題解決は困難であり、複雑に絡み合う問題の中から本質的な課題を見極め、他者と協働していかなければ対応できないこと、探究的な学びは、その力を養う上でとても重要な学びであることを話しました。

大槌高校は、探究的な学びが組み込まれている現行の学習指導要領の実施よりも前に、先駆けて探究活動に取り組んできた実績があり、関係者の皆さんにとっては、既知の内容だったと思います。

さて、そんな大槌高校の教師とゆっくり話す機会があったのですが、とても印象に残っている言葉が、タイトルにある「探究の時間になると職員室から誰もいなくなる」というものです。
大槌高校も探究活動を導入した当初は試行錯誤の連続だったようです。当初は探究活動に懐疑的な教師もいたようですが、町から派遣されたコーディネーターと連携して、地域で活躍する生徒の姿を目の当たりして、その必要性を肌で感じたと言っていました。
ある教師は「中学生の頃は日をあびていなかった生徒が、地域に見てもらって劇的に変わった。」と話してくれました。

探究活動では、生徒は地域の中で、色んな人と関わりながら自分の興味関心を深めていくので、教師もコーディネーターも、個性豊かな生徒の活動を個別にサポートする必要があります
高校は教科担任制なので、基本的に職員室が空になることはありませんが、大槌高校では、探究活動の時間は、教科に関係なく生徒が活動するので、教科・学年に関係なく教師とコーディネーターが一丸となって対応しているようです
このことは、大槌高校の探究活動が教科横断的であり、かつ、教師一人一人がその意味を理解しているからこその現象だと思います。

探究活動は、NPO法人カタリバが毎年開催している「マイプロジェクトアワード」の参加者数が年々増加していることからもわかるように、学校現場にも浸透してきています。学校現場に探究活動が根付くプロセスとして、教科横断的であること、そして、教師一人一人がその意味を腹落ちしていることが肝なのだと感じたエピソードでした。

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