「５年付き合った人がいた」と言い続けて，５年以上が経った。

最長記録保持者は，どうやら更新されたらしい。
それなのに，振り返ればこの５年は，相手を好きだと言えない歴史だった。

どんな対象にも，好きな部分と大嫌いな部分がある。
私は100％好きだと言えるまで「好き」と言えない人間だったので，嫌いな部分ばかりを見ていた。一つ長所があれば嫌いな部分が許せるといったタイプでもないので，下の記事のように「なぜ好きと言えないのか」を考え続けるのだ。

私の場合，好きと言えるようになるために必要だったのは，嫌いな部分の切り分け。どの部分が好きで，どの部分がどうなることを望んでいるのか，いつも考えている。嫌だな〜と思っているだけでは，状況はよくならないからだ。

だからこの５年間は，100％好きになるための期間だった。

好きと言える対象は，突然天から降ってくるものではなく，意志の賜物。
私にとって，好きと言えるようになることは，闘いだ。それは，嫌いな部分にも向き合うことだから。
（だから仮に一目惚れだとしても，そこから次々見つかる欠点との闘いだと思っている。）

幸せなときだけでなく，幸せなんかじゃないときに一緒にいられないと，不幸になった瞬間に関係性は終わる。
傾いてる時期だって，逃れようもなく自分の人生なのに。

そうして撮った写真を５年間アップし続け，嫌いな部分を徹底的に考察する論文を２本書き，就職してからも仕事外の時間を全て費やし，ようやく目の前にある対象を好きと言えるようになった。

それは，既存の世界の嫌な部分を変えさせるのではなく，自分が好きだと思える方法で接することのできる世界を，少しずつでも創ってきたからだった。

2014年1月10日に突然思い立って家で点て始めてから，丸５年が経った。最初にネットに上げた写真は，翌日のこの１枚。↓

そこからは，1月10日を記念日として時間を刻んだ。
毎年この日は，お茶菓子を写さずにお茶だけと向き合っている。

気に入っていたのは，お茶そのものというより，お茶と過ごす生活。

いい日悪い日といった短期的な評価を通り越して，どんな日も生きていないと味わえない。その日々の中で味わっていたのが，お茶だった。

それで言えば，好きも嫌いも，短期的な評価軸だ。
好き嫌いを考えてる時間より，毎日の和菓子の買い出しや茶人の論文にかけてきた時間の方が，圧倒的に長いのだから。

生きていたくないような日だって，１日だけ死んでやりすごすことはできない。だから機嫌の悪い日も，お茶を点てる気分じゃないときも，同じようにお茶を点て続ける。

時にプレッシャーにもなる「毎日のお茶」は，１日たりともスキップできない人生そのものだった。

しかし次第に，お茶をしていたいのか，とにかく「毎日」続けていたいのか，お茶も何もないただの人間でいたくなかったのか，分からなくなる。
本質を見失っても，習慣で「毎日」続けられている自分もいた。

そうやって「自分のしたいこと」からズレた，昨年の10月。
転職活動と会社員の仕事とお茶を平行する中で，人生をやめるしか毎日のお茶をやめる方法が浮かばないほど行き詰まった。
転職する理由と，今の会社にいる理由と，お茶にしがみつく理由が，これでもかと入り組んでいたからだ。

撮った写真の出来栄えに納得がいかなかったある日，SNSにアップするのをやめた。その11月からほぼ急激に，更新する回数を減らした。

「毎日」のお茶から少し離れて思い出したが，私はお茶を点てていないときだって必死に生きてきた。

お茶の写真を撮らなくても，ネットに上げなくても，目の前にお茶がないときでも，そこにお茶はあると思える生き方。そしてその生き方を好きだと思えること。
その基盤なくして，お茶を100%好きと言えることはないと気づいたのだ。

本質からズレても毎日続けられてしまったり，好きと執着を履き違えたり。違和感や無理を放置してボーッと好きでいるだけでは，いつのまにか好きの度合いは100％から下がっていく。
だから，不具合や違和感や課題を，都度解決する必要がある。

付き合い方は，お茶との仲良しぶりを毎日SNSにアップしたり，お茶に貢ぎ倒したりすることばかりではない。
オンライン上の個人的なお茶から，オフラインの誰かに向けたお茶へと，付き合い方を変える時期が来たと思うようになった。

違和感や課題を解決する形で転職先が決まったのも，同時期だ。

上の記事にも書いたように，今後は茶人として雇用されるので，「毎日のお茶」への執着から離れつつ，今以上にお茶にコミットできるようだ。

仕事がお茶になったのが，この５年間の帰結ということになる。

「毎日」ではなくなっても，これまで点ててきたお茶は消えない。
そしてお茶と過ごす生活が好きなうちは，まだまだ記念日をカウントすると思う。

今日からまた，６年目を生きます。