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カンボジア・キリロム工科大学に行ってみた【後編】

2019年に次男(当時高校2年生)と視察に行ったカンボジアのキリロム工科大学レポートです。海外へ行ってみたい!留学してみたい!という方の参考になればと思い、当時FBノートに書いたレポートをnoteに再掲します。

前編はこちら

キリロムは当時と今では環境はずいぶん変わっていますので、このレポートは参考程度にしていただければと思います。

今のキリロムの情報はこちらをご覧ください。

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カンボジア・キリロム工科大学に行ってみた【後編】

2019年4月6日投稿

カンボジアにあるキリロム工科大学(https://www.kirirom.info)弾丸ツアー。

世界で通用する英語とIT技術を習得したグローバル人材を育てるというビジョンのもと、日本人がカンボジアの国立公園の中に学園都市を創るという一大プロジェクト。到着した翌日は大学見学と授業体験。

2014年にスタートしたキリロム工科大学。カンボジア人の学生と日本人の学生が学んでいる。カンボジア人学生の入試倍率は25倍。空港からのシャトルで一緒になった学生も高倍率を勝ち抜いて入学して掴んだチャンスをものにしたい!という気迫が伝わってきた。

昨年第一期生が卒業した。日本人の1期生として2018年度に16名ほどが入学。厳しい環境に耐えられず、辞めてしまった学生もいたそうで、一年目を終えることができたのは当初の2/3程度の10名ほどだそうだ。

プロジェクトが始まって4年目ということもあり、街全体も大学も「開発中」というのが第一印象。キャンパスを見た次男も「ふーん。ここかあ。」という感じでテンション下がり気味。HPを見てイメージしていたキャンパスと実際目にしたキャンパスとの乖離にちょっと戸惑ったというのが正直な感想だった。

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大自然の中のキャンパス

ところが、大学の授業に参加したり、学生たちの話を聞いたり、また、そこに集まる面白い大人たちの話を聞くうちに、私だけでなく次男も次第に「ふーん。面白いね。」に変わった。

変化のトリガーの一つは、学長の猪塚さん、副社長の別宮さんはじめ、キリロムに関わる面白い大人たちのビジョンとミッションを語る「熱」。

学長の猪塚さんは「高校生に分からないかもしれないなあ。でも、きっと10年後に僕が話したことがきっと分かると思うよ。」はじめはそんなことを言いながらも、話し始めたら止まらない。

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学内のレストランでフツーに仕事している学長に遭遇。

日本ではIT人材が圧倒的に不足しているにも関わらず、育成する仕組みや教育機関がないこと、英語はもちろん、グローバルに活躍する人材の育成が今の日本では難しいこと、また、カンボジアをはじめ新興国の若者に最先端の教育を受けるチャンスを与えると同時に、お金がなくて海外の大学に留学することが難しい日本の学生にも留学のチャンスを与えたいこと、貧しくても能力がある、努力する人が勝ち上がっていける仕組みをつくりたいこと。熱い思いがビンビンと伝わってきた。

また、晩御飯を食べようとしていると副社長の別宮さんが登場。家族でカンボジアに移住し、ご夫婦でキリロムの開発に携わっている

とっても穏やかな人柄だけど、これまた熱い。KITは一年生のうちからインターンで実践的な学びをすることができること、仮想会社を学生が設立して実際に企業と一緒に事業を行っていること、事業にならないプロジェクトは評価してもらえないこと、その代わり事業が成功すれば、早く卒業することも可能なこと。

「中途半端な評価はしません。役に立たないものは頑張ったって1ポイントももらえない。なぜなら実社会がそうだからです。」ときっぱり語る。

他にも、会う人会う人、全てが面白い人生を送っている。そんな面白い大人たちやちょっと先輩の若者達に会い、次男の表情が次第に変わっていった。

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NYの大学に通いながら、インターンに来ていた長尾さん


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受け入れを担当してくれた芦田さんのご実家はなんと我が家の近所!


もう一つは、やはりKITの特色とも言える実践的なカリキュラム。午前中は座学で英語やITについて学び、午後はインターンとしてプロジェクトに取り組む。この日もカンボジア人の学生が順番待ちをしながら次から次へと自分たちが取り組んでいる事業についてプレゼンしてくれた。

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英語の先生はフィリピンから。ITの先生はインドから

英語は全て理解できないが、やっていることはなんとなく理解できた次男も次第に前のめり。特に、VRは実際に体験させてもらったこともあり、予定の時間を大幅にオーバー。学生に話を聞くと、「小さい頃から機械が好きだったけれど、学ぶチャンスがなかった。ここで勉強できていることはまるで夢が叶ったよう。ここからシリコンバレーに行って、自分の可能性をどんどん広げたい。」と言っていた。

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学生が開発したVRを実際に体験

道は舗装されていないし、停電はしょっちゅうだし、大自然の中なのに、学生たちはVRやIoTやAIについて熱く語るというそのギャップがとても面白い。

「日本は満たされていて、課題がないからあまりアイディアを思いつかないけれど、ここは課題だらけ。だから、どんどんアイディアが浮かんでくるね。あれもできる、これもできるって、ここだといろんなことができそうな気がする。」

普段はあまり話さない次男の口からそんな言葉が出て少し驚いた。

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言葉は通じなくても、積極的にコミュニケーションしてくれる

。日本人の学生さんからも話を聞いた。
「日本の大学ではこんな経験は絶対にできなかった。」
「日本に比べたらかなり厳しい環境なのに本当に楽しい。」とこれまた熱い。

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キリロム愛が溢れている日本人学生達

夕方は学生からクメール正月のパーティーに誘われた。大音量の音楽の中、シンプルなゲームで大盛り上がり。最初は日本人の学生と輪の中に入っていった次男だが、最後は言葉もほとんど分からないのに、カンボジア人の学生と大雨の中馬鹿騒ぎ。

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大盛り上がりの学生達に自然に巻き込まれる

当初の「ここで学生生活は、無理!」が、帰る頃には「数年後になってみないと分からないけど、ここもありかな〜。」に変わっていた。

「弾丸ツアー」と銘打って、子ども達が小さい頃から日本中を車で旅した。
そして、2年前の春休みは家族でアメリカへ弾丸ツアー。アメリカの大学を見に行った。

昨年は、マレーシアとシンガポール。次男は部活で行けなかったが、三男は両方の国の学校、長男はマレーシアの大学を見に行った。

そして、今年はカンボジアだ。

別に海外の大学に進学してほしいと思っているわけではない。

自分の選択肢を日本に限定せず、世界レベルにすること。
ネットや親からの情報だけに頼らず、自分の目で見て、感じて選択すること。

この二つが子ども達をあちこちに連れて行っている理由だ。

そしてさらに付け加えるならばワクワクしながらチャレンジする面白い大人に沢山会って欲しい。

私達親だけでは見せてあげられない世界を沢山の面白い大人達の背中を通して見て欲しいと思う。

今回の弾丸ツアーで次男が何を感じたかはあまり聞かない。 特に劇的な変化も感じないし、そんなものも期待していない。 ただ、彼が発する数少ない言葉が少しだけ変わったのは確かだ。

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キリロムの中でも松林になっているのはここだけだそう。