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積丹 プリプリのブリツアー

 「積丹ブルー」の海に囲まれた積丹半島がこの秋、ブリの豊漁にわいています。今季は既に昨季を上回る400トン超を収穫。10日には過去最多とみられる1日40トンの収量を記録しました。11日、2019年から出荷を始めたブランドブリ「鰤宝(しほう)」をまるごといただくイベント(積丹町地域活性化協議会主催)に参加。プリプリでトロトロの刺し身にうなるとともに、ニシンの群来(くき)以来のゴールドラッシュにわく町の熱気を感じてきました。

 道内のあちこちで初雪の便りが聞かれた11日朝。東しゃこたん漁業協同組合のある古平港にブリは水揚げされませんでした。


 荒天でやむを得ず休漁となったため、この日は昨年の様子などのパネル写真を見ながら、ブリの水揚げや選別作業などの説明を受けました。


 同漁協管理部部長の小池均幸さんによると、漁が行われるのは古平港沖と積丹町美国沖の2カ所。「浜からすぐ沖に校庭の広さほどある巨大な定置網を仕掛けると、1日で100万トンを超えるブリが入り込む」と言います。同漁協では数年前、2億円の船一隻と、2億5000万円の定置網を新たに購入。この投資が功を奏し、40トンを収穫した10日だけで3500万円の売り上げになったそうです。「浜のすぐ前に重さ10キロ超えのブリが大量に回遊している」。光景を想像するだけで、積丹の自然の豊かさが分かります。
 ブランドブリ「鰤宝」に選ばれるには①重さ7キロ以上②体脂肪率15%以上③船上での活締め-の3条件をクリアする必要があります。さらに目がよどんでいないか、うろこがはがれていないか、など厳しい審査をくぐり抜けるのは全体の1%ほどの精鋭たちです。


 この日、味わわせていただいたのは5日前にとれたという12・3キロの「鰤宝」。脂肪率は驚異の24%と言います。
 さばいてくださったのは、地元旅館「お宿かさい」料理人の別所範一さん。まず頭を切り取ると、3枚おろしにしてから柵切りまで、流れるような包丁さばきを実演。参加者約20人分の刺し身が見事に盛り付けられました。


 「お待たせしました。いただきまーす」。見るからに脂の乗った刺し身は、上品な味わい。漁協価格で1本7万円とのことでしたが、ブリの一大産地で積丹産の需要も多い富山・氷見市や、東京・豊洲市場に出荷されれば、その倍近くにはなるそうです。今が旬というアンコウ鍋も、肝を溶いたスープにゼラチン質の身が絶品でした。


 温暖化の影響もあり、各地で収穫される魚種が変わりつつあります。そんな中、したたかに戦略を練り、ブリのブランド化を図る積丹地域。「今後はニシン御殿ならぬブリ御殿が建ち始めるかもしれない」。そんな未来が垣間見えました。

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