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狸小路の「空き地」はニュー・シネマ・パラダイス

 札幌中心部にある狸小路商店街の5丁目に今年7月、広大な「空き地」がオープンした。広さ約1300平方メートル。以前は日本中央競馬会(JRA)の馬券売り場が入っていたビルの跡地だ。
 地権者が「まちづくりについて、多くの人と語らいの場を設けたい」と、来春の新ビル着工までの期間限定で、人工芝のマットやクッションなどを設置。 

 デンマークのクラフトビールを販売するおしゃれなキッチンカーも出店し、仕事帰りの若者や学生らでにぎわっている。


 自分もここ最近、頻繁に足を運んでいる。理由は、札幌の映画事業会社と提携し、野外観賞会を開いているからだ。9月23、24両日には、帯広ロケが行われた新作「キリエのうた」の封切りを前に、「岩井俊二さっぽろシネマフェスティバル2023」を開催。初日は学生時代に観た映画の中で最も心に刺さった「スワロウテイル」を上映した。

入り口には作品に登場する看板を模した「YEN TOWN THEATER」の装飾が。こういうの、大好きだ。


 混沌とした「YEN TOWN」の世界観、CHARAの味わいある歌声。偽札のデータがカセットテープに埋め込まれていたり、ロケ地のお台場に広大な空き地が広がっていたりと、時の移ろいを感じる点はあるとしても、美しい映像は色あせず、しばし思い出に浸った。
 野外で映画を観るのは楽しい。例えるならニュー・シネマ・パラダイスに出てきた「屋外劇場」の雰囲気だ。
 観客みんなで、日本語と中国語、英語がごちゃ混ぜになった出演者のせりふ回しに笑い、「YEN TOWN BAND」が奏でる「マイウェイ」では体を揺らす。グルーヴ感でいうと、フェスの感覚かもしれない。昔の街頭テレビもこんな感じだったのかもしれないけど、さすがにそこは分からない笑
 9月8、9両日は商店街の開業150年を記念し、「平成狸合戦ぽんぽこ」の上映会が行われた。

 「狸小路で狸の映画」というユニークな取り組みに、スタジオジブリも快諾してくれたという。ジブリ作品だけあって、子供たちの姿も。いずれも入場無料で、札幌中心部の「空き地」を開放するだけでも太っ腹なのに、粋な取り組みを続けているなあと思う。
 アマゾンプライムやネットフリックスなど1人で映画を見る機会が多く、映画館に足を運ぶ機会もめっきり減った。でも、みんなで観るのって、やっぱり楽しい。新ビルが完成した後も、屋上で続けてほしいと願っている。

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