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【デザインデータ】奥(罪)深き「黒」の世界。(前編)

デザインデータをIllustratorやPhotoshopで制作している時に、最も使う色って「黒」なんじゃないかなって(個人的には)思っています。

モノクロの白黒2色(+グレイ)はもちろん、
カラーでも当たり前の様に使われていて、カラーの場合は鮮やかな光度が高い色と合わせて使うと目立たせられたり、締まった印象になるので個人的には好んで使っています。

そんな「黒」ですが、データ上で同じ様に見えても違い(種類)があるの知ってますか?
※印刷物の製作に関わる事なので、今回は「CMYKカラー」を中心として書いていきます。

書いてたら長くなったので、前編/後編に分けて投稿しますが、今回は前編として「黒について概要」について書きます。

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■そもそも「黒」って?

↓の投稿の際にも書きましたが、色はCMYK各色のかけ合わせで表現されます。

それは「黒」の場合も同様で、
一言で「黒」といっても、モニタ上や実際の印刷時に着色される「黒」は、同じ「黒」で見えていても、実はCMYKの着色濃度が違っている事もあります。

「でも黒は黒なんだから同じなんでしょ?」と思われるかもしれませんが、着色濃度が違う=CMYK各色のインクの着色量が違うので、そこは大きく違ってきます。

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■「黒」の違いとは?

CMYK各色の濃度%のかけ合わせによって表現するので、その%によって様々な黒が表現できてしまいますが、ここで広く認知されている「黒」をいくつか紹介します。

  1. K100%(CMY各0%、スミベタ)

  2. リッチブラック

  3. 4色ベタ

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①K100%(CMY各0%、スミベタ)

多分これが1番馴染み深い黒かもしれません。
「K100%」のみで表現/着色される黒です。
Illustratorの「カラー」ウィンドウや、初期設定の「スウォッチ」内にも入ってる黒ですね。

ついつい無意識にポチッとしがちな黒
カーソルを合わせると「ブラック」と表示されます

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②リッチブラック(例:CMY各10~40%、K100%)

CMYKの4色を「適切な濃度%」でかけあわせて、作成した黒は「リッチブラック」と呼ばれています。

K100%はK1色のみでしたが、リッチブラックはCMYKの4色を特定の割合で混ぜ合わさった色なので、印刷物の黒色部分をより深く濃く豊かな質感を出すことができます。

ネットで検索すると「C40% M40% Y40% K100%」が多くリッチブラックの数値書かれていますが、他にも「C30% M30% Y30% K100%」であったり他の数値も出てきますが、「CMY各10~40%+K100%」のかけ合わせで作成されている黒は「リッチブラック」とお考え下さい。

余談ですが、「CMY各10~40%」としましたが、印刷の現場の詳しい人間が言うには「CMY数%(例えば5%)」程度でも、K100%と比べて深みのある黒になるそうです。

後述しますが「C100% M100% Y100% K100%(4色ベタ)」や「CMYK各90%前後(小数点数値含む)」は、リッチブラックではないので御注意下さい。

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③<ダメ絶対>4色ベタ(CMYK各100%)

↑の<ダメ絶対>はnoteの仕様でできませんが、赤字でもっと大きくしたいくらいです。。。
CMYK各100%=計400%の状態の黒は「4色ベタ」と呼ばれています。

「CMYK各100%」なので、4色のインク全てが大量に必要以上に紙に着色されてしまいます。
②のリッチブラックよりも、深く濃く豊かな質感が出るのではと思われるかもしれませんが、ある一定の濃度%以上は仕上がりの見た目に大きな差は出ず、逆にデメリットが多くあります。
ちなみに「CMYK各90%前後(小数点数値含む)」も同様の状態です。

※稀に「4色ベタ(CMYK各100%)」や「CMYK各90%前後(小数点数値含む)」の状態をリッチブラックと言う方もいらっしゃいますが、それは間違いです。


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ちなみに①~③と、RGB各0%をCMYKに変換した黒を↓で並べてみました。

Illustrator上で並べた状態をそのまま書き出してます。

①は色味に差が出てますが、その他はあまりパっと見では色味に差が出ていないのが分かると思います。
※ただそれが大きな落とし穴でもあります・・・


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■メリット&デメリット

①~③それぞれのメリット/デメリットを書いていこうと思います。

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①K100%(CMY各0%、スミベタ)のメリット/デメリット

K100%の黒のメリットとしては、「文字や細かい線を印刷する時に適している」という点です。
K1色で着色されるので、「見当ズレ(CMYK同士が極僅かにズレるブレ)」が起こらないため、小さい文字や細かい線が潰れたりしずらくなります。

デメリットとしては、K1色のみで印刷されるため、広範囲にベタ塗りの箇所使用すると、「ピンホール(白抜け)」が発生しやすくなります。
(ただ滅多に起こりませんが・・・)
それと↑の色味を比較した画像でも分かる様に、配色によっては若干褪せる見えてしまうかもしれない点です。

これを防ぐためにCMYどれかを1%でも混ざた着色にする事で防げます。
※C(シアン)1%を混ぜる事が多いです。


※「オーバープリントのことは?」と思われる方もいるかもしれませんが、今回は割愛します。

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②リッチブラックのメリット/デメリット

前述しましたが、リッチブラックのメリット「より深く濃く豊かな質感の黒を表現できる」点です。
またK1色だけではなくCMYK4色が着色されるので、K100%のデメリットである「ピンホール(白抜け)」が起こりづらくなります。

デメリットとしては、4色で着色されるので逆に「見当ズレ(CMYK同士が極僅かにズレるブレ)」が起こりやすくなります。
そのため例として、リッチブラックで着色された背景地の上に配置された非常に小さい文字や細かい線は、「見当ズレ」で潰れて(潰れた様に見えて)しまう場合があります。

こういった理由から、リッチブラックを使用する場合は、デザインや配置するオブジェクトのサイズを考慮し、場合によってはK100%と併用して着色される事をお勧め致します。

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③<ダメ絶対>4色ベタ(CMYK各100%)のデメリット

これはデメリットのみです。
何点かありますが共通する理由は、4色のインクが大量に着色されるからです。

まずはリッチブラックのデメリットだった「見当ズレ」が、更に起こりやすくなります。
見当ズレによって小さい文字や字画の多い複雑な漢字などは「非常~~~~~~~~~~」に高い可能性で潰れてしまったり、滲んだ仕上がりになります。

またインク量が多いためインクの乾きが遅くなるので、印刷後の汚れや滲みの原因となったり、裁断前に紙を重ねるので紙同士がくっついてしまったり、くっつく事によりインクが剥がれてしまう原因となります。

こういった理由から印刷作業の現場では敬遠されているため、4色ベタ(CMYK各100%)で着色されていた場合は、印刷作業に移らず修正後の再入稿をお願いする場合があります。

そのため印刷業者によって数値はマチマチですが、一般的に濃い色味の箇所のCMYK濃度%はCMYK計300~320%を上限の数値にするのが適切と言われてます。


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■次回に続く・・・

今回はそれぞれの概要について書いてみました。
次回はそれぞれの黒によって起こる弊害であったり、逆にこういった使い方があるといった事例を紹介します。