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黒い指輪

そう遠くない将来に、黒い指輪を買おうか…とふと考えた。

アセクシュアル(無性愛者)たる自覚を得て色々調べた結果、然り気無く自身がアセクシュアルである事を主張する為に【右手中指に黒い指輪を嵌める】と言うカルチャーがある事を知った。生かさない手は無い!と思った。

ワタクシが公の場でアセクシュアルたる事をハッキリと自称するようになって、そろそろ6〜7年位経過していると思う。
にも関わらず、周囲には未だにリアルで会うと「良い人出来た?」と下世話な質問をぶつけて来る人がいる。
ワタクシは面の皮が厚いのでこれをハラスメントとは受け取らないが、いい加減疲弊しているのは事実だ(勿論、人によっては十分ハラスメントに当たるので、読者諸兄はカジュアルに当事者にこんな質問をぶつけてはいけない)。
そろそろ「こちとら伊達や酔狂で独り身貫いてんじゃねぇんだぞ」と言う視覚的なサインが必要かと考えたのである。

そうして知ったのが黒い指輪の事だった。

右手中指に黒い指輪=アセクシュアルの象徴、と決まるまでにはかなりの紆余曲折があったそうだ。
ワタクシはこれまでの人生で、指輪は愚か他のアクセサリーも殆ど身につけた事が無い(精々手製のループタイ位だろうか)ので詳しい事は知らないのだが、右手のどの指、左手のどの指、指輪の色、材質によって示す象徴が様々に変化するらしいのである(そう言えば薬指に嵌めるエンゲージリングは結婚と言う名の束縛を意味するのであったか。浅学にして詳しくは知らないのだが)。
…で、最終的には右手中指に黒い指輪、と言うところに落ち着いたのだそうだ。因みに材質は何でも良いらしい。そもそも黒の貴金属なんてあまり聞いた事がない(単にワタクシが鉱物学に疎いだけだと言うツッコミは甘んじて受ける)。普通のアクセサリーショップではまず入手不可能だと言う話だったが、考えてみれば好んで黒い指輪を用いるマジョリティも居なかろうから、それも最もな話だ。

そこで、リアル店舗に無いなら…とAmazon公式サイトを軽く検索したら、出るわ出るわ、百余件の候補がずらりと並んだ。いや正確には勘定してないので本当に百を超える品があるかは判らないのだが、兎に角沢山ヒットした。男性向きのデザイン、女性向きのデザイン、ユニセックスなデザイン…種類も豊富だ。値段も1000円以下から10000円を超えるものまで幅広い。見ているだけで楽しくなって、ついつい長々と眺めてしまった。

ただ、問題が無い訳ではない。
ワタクシは自律神経失調症から来る手足の弛緩の関係で、サポーター代わりに常に指貫手袋を装備している。それも、トイレと入浴と就寝の時以外はほぼ常時着用している。
…もうお判りだろう。
折角指輪を嵌めても、指貫手袋で隠れてしまっては意味がないのである。
まさか、逐一手袋を外して指輪を見せて「どうだアセクの象徴たる黒の指輪だぞ」なんて遠山金四郎染みた真似をやる訳には行くまい。そんな事をいちいちやっていたら胡乱が過ぎる。

とは言え、完全に計画が頓挫した訳では勿論無く、今も辛抱強く自分に似合う黒い指輪を探索中である。

因みに、これは最近になって知ったのだが…右手中指に嵌める指輪には【邪気を祓う】と言う霊的な意味合いも込められているらしい。
…これは益々、活かさない手は無い。

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