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寄付で支えられているメディアとして

体当たりNPO運営記(29)2018年2月記
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いよいよ、念願の森ノオト「マンスリーサポーター」がスタートしました。
http://donate.morinooto.jp/
検討を始めて3年、当初は決済手数料すら出せない、そもそも森ノオトに寄付してくれる奇特な方なんているのだろうか……「いつか寄付でメディアの運営費をまかなえればいいな」とは思っていたけれど、お金もないし自信もないしで、その「いつか」がいつ来るかは、正直見えていませんでした。
しかし、頭に思い描いていれば、それは「現実」として近づいてくるもので、「そろそろ挑戦したいよね」と本格的に検討を始めたのが2017年度です。検討を始めども、それが形になるまでは、だいぶブランクがありました。

とりあえずはイベント参加チケットの決済で使っているBASEの定期決済システムで運用してみようかとぼんやり考えていたところ、2016年夏にポートランド視察の旅で出会った、NPO向けのWebサポート事業をしている友人が、超有名NPOの寄付決済システムの設計を担当していたと知り、藁をもすがる思いで相談。今後広く共感や支持を集めていくには、きちんと動線・システムをつくっていくことが大切(今までは寄付を集めたいと言っていたが寄付コンテンツすらなかった)と、あまりにも具体的で的確なアドバイスをもらい、NPO総会で会員の承認を得たら、急ぎ2月中にシステムをつくろう、ということになりました。その間わずか2週間!!

そうしてようやく2月末日の今日、寄付決済システムをリリースできる運びとなりました。
http://donate.morinooto.jp/
(シツコイ)
賛助会員の皆さんは今年からマンスリーサポーターに移行をお願いします。会費はこれまでの3000円から実質の値上げとなるのですが、「年3000円の会費」と「月々500円の寄付」が心理的にどれほどの差を生み出すのかは、1年後にぜひ聞かせてください。「値上げなら負担できない」「クーポンなくなるの?」「モトとれないじゃん」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。この変化で心が離れてしまう方がいても致し方ないこと、これまでのご支援に心から感謝を申し上げます。そのうえで、このメルマガを最後までお読みくださって、もう少し森ノオトのこれからを「森のなかま」として応援してみてもいいかな、と思ったら、ぜひとも継続ご支援をよろしくお願いいたします。

わたしたちがこの「寄付決済システム=マンスリーサポーター」を始めるのは、純粋に、メディアの運営費用を、寄付や共感の心がこもったお金でまかないたい、という思いからです。
この説明については、そもそも森ノオトのメディア運営の収支について理解してもらうことから始めなければなりません。
わたし自身の経験をもとにしか話せないのですが、新聞折り込みのタウンニュースはほぼ広告収入でやっており、次に入った出版社では『チルチンびと』雑誌をつくり講読料と広告収入でまかなっていました。それが傾きかけて、工務店の会という全国組織をつくり、会費を出版事業に充てていました。そこから編集方針が変わり、美しい建築寄りから工務店による地域活性化寄りになっていきました。フリーになって関わった生活クラブ生協のメディアは生協の組合員出資が原資でしたし、オーガニックコットンブランドのHPは会社の広報費のなかで自社製品のよさをPRするための情報のみを集めて取材していました。日経BP社の環境ウェブマガジンは企業組合がスポンサーでした。

ウェブメディアの場合、雑誌などと異なり、手元に残る「モノ」がありません。ほとんどの記事は無料で読むことができます。有料課金システムで成り立つメディアは、それを提供するために相当の戦略と仕組みと屈指の書き手が必要で、森ノオトには残念ながらそこまでのものはありません。だから多くのメディアが、広告収入に頼ったり、スポンサーをとって運営するのですが、スポンサーを持つと企業の顔色をうかがわねばならず、メディアとして思うような記事を書けなくなります。
森ノオトも当初、ウィズさんというスポンサー(というかパートナー)がいました。暗黙のうちに、ウィズさん以外が建てた住宅や建築の記事はNGかも、みたいな雰囲気があったのは事実です。ウィズの社長さんはおおらかな方で、「同業他社で競合するのではなく、同じような工務店で切磋琢磨して地域を盛り上げたい」という気持ちを持っていらっしゃったので、あくまでもライター側で自己規制をかけていた感じでした。以前ライターがウィズのイベント参加の記事を書いた時に、必要以上に会社や社員のことを持ち上げていて、わたしが「そんなことする必要はない」と言ったら、「だってスポンサーでしょ、よく書いた方がいいと思って」と返されて、愕然としました。スポンサーがあることでライターに「おもねる」という行為をさせてしまうということがショックでした。

今の森ノオトは、時々大丸建設さんのタイアップ記事が出たり、求人広告が出ることがあっても、それはあくまでも「一記事に対する広告依頼主」であり、メディア全体のスポンサーではありません。ともかく、どこにも依存せず、独立が編集権を持っているメディアであるというのが、森ノオトの特長で、誇りです。

プロのライターも増えてきているのでご理解いただけるかと思うのですが、一般にプロとして委託を受けて書く記事は、クライアントの伝えたいことありきで、「ライターの書きたいこと」を書けて、それをしっかり編集するメディアというのは、今では少ないと思います。もちろんブログの集合体のようなメディアもありますが、そもそもブログには「編集」が存在していないので、それと森ノオトはメディアという特性においても異なるものです(だから、森ノオトの読者で「ブログ読んでいます!」って言われると、わたしは実はムッとしているんです笑)。

森ノオトの運営は赤字・持ち出しでしかないし、広告をとったほうがいいだろうという声もなくはないのですが、それこそわたしも20年近く様々なメディアを経験しているなかで、広告やクリック課金のようなビジネスモデルは衰退していて、それを追っていっても苦しくなるだろうと、最初からその道を選びませんでした。

そして行き着いたのが、「寄付で支えるメディア」という道です。
森ノオトというメディアが生み出している社会への効用に共感し、応援したいという気持ちを、お金に託して、メディアの運営資金にあてさせてほしいという気持ちがそこにあります。

みなさん、「寄付」という言葉にどんなイメージを持ちますか?
たとえば、途上国で人身売買や児童労働させられる子どもたちを救うために、飢餓で困っている人に食べ物を届けるために、寄付する。
突然の大規模災害で困っている人のために、難病の子どもたちのホスピスに音楽コンサートを提供するために、寄付する。
なんらかの課題を解決するために、金品を送ることを「寄付」といいます。これらの場合は、寄付の対象が「困っている誰か」が明確でわかりやすい。
しかし、森ノオトへの寄付は、「無料で読めるメディアに寄付なんて、なぜ?」って感じだと思います。でも、みなさんもわかりますよね。メディアって、無料で運営できるものではない。ライターが取材をするのに経費がかかっているし、事務局が編集するのにも時間というコストがかかっている。サーバー代、ドメイン代、それから事務所の運営費用や、リニューアルには200万円くらいかかるので時代にあったシステムを取り入れるためにも投資のための貯蓄が必要。そうなると、無料で読めるものを生み出すには無料では運営できなくて、どこかからお金を持ってこなければなりません。森ノオトの場合は、今は、NPOの会費(年間60万円くらい)と、昔はウィズさんからの広告費(60万円くらい)、そして冊子や書籍などの編集での利益をひっくるめて、なんとかやっています。
そして、ライターのみんなが交通費のみのボランタリーであること、メディア運営にかかるスタッフの人件費もほぼ持ち出しであること(ほかの事業の人件費でなんとかやりくりしている)、それでなんとか回しているけれども……それでは、長く続けられないよね? 少なくともわたしはプロとしてやってきて、スキルアップしたライターにはそれなりの謝金を用意できるようにしたいと考えているし、誰もがずっとボランティアのままでは先行きは暗いと思っています。

森ノオトが寄付メディアになることによって、何が変わるのでしょうか?
変わらないこと = 独立した編集権を持ち、ライターが書きたいことを書けるメディアであること
変わること = 応援してくれる読者の顔がよりはっきり見えて、寄付者との距離が近くなること。ステップアップしたライターに、ステップアップした報酬を支払えるようになること。もしかしたら経費の多くかかる取材も可能になるかもしれない。一方で、寄せられる期待が高まるので、記事の価値(とクオリティ)を高めていくことへの責任は増すこと。

伝えたい、書きたいことがあるライターを尊重し、成長できる、編集部コミュニティをつくるために、広告ではなくて、寄付が必要です。

「月40万円が寄付で集まるようにしたい」、というのが、当面のわたしの経営的な目標です。でも、最初の目標は、月10万円を集めることです。これは、実は森ノオトを創刊した時にウィズさんから委託で受けていた「ウィズの広告費」と同じ金額でした。これは、月に4-5本ぶん程度の広告記事本数に相当し、わたしはウィズ広告以外の記事を勝手に15本つくって、「森ノオトの運営は本当は40万円かかる仕事量だけれども、わたしは自分の30万円分の仕事量を未来に投資します」と宣言して始めたんです(笑)。だからというわけじゃないんだけど、それが一つの根拠であり、森ノオト理事でブレインの愛子さんがはじき出したシステム経費やスタッフの時間コスト、積立金等の数字もちょうど「月40万円程度必要」だったんですね。

寄付はそもそも、自分の対価として求めるものではなく、自分のお金が「困っている誰か」であったり、「ほしい未来」につながるものです。だから、寄付してくださる方に対して、また関わるライターに対して、すぐに直接的な対価として戻ることはないかもしれない。集まった寄付は、例えば孤独な育児で苦しんでいる人が外に出てみるきっかけになったり、地域で広がる貧困問題に対するボランティア参加をうながすことになるかもしれないし、具体的に省エネしたり雨水タンクを取り付けたりと、誰かの「いいこと」につながって、それが住みやすいまちとか、子育て楽しいとか、まち全体の消費エネルギーが減るとか、じんわりと「いい未来がはぐくまれていく」ことを情報で支える、ということにつながるんじゃないかなと思っています。そして、今年からスタートする、ライターステップアップ制度のなかで、自分軸で記事を書くライターから、森ノオトの編集軸で記事を書くライターへの成長をサポートしながら仕事につながるようなギャラまで持っていきたい(ライターの仕事軸をつくっていく)と目指しています。

「環境・社会問題を解決するための地域活動と情報発信」なんて、儲からない。経済合理性に合わないから市場からは外れています。だけど、人口減少による急激な縮退社会において、今後ますます市民セクターの役割は高まってきます。公共的な役割を担うNPOへの寄付は、税金よりも使い方がはっきりしていて、確実に未来をよくする投資になります。月500円ってコーヒー1杯の値段だけど、実は無駄に使っている電気とかガスを節約すれば、すぐにひねり出せるお金です。無駄な公共投資もたくさんあるし、そうした税金の使い方にも注意を払ってほしいし、エネルギーを無駄に使ってアラブの石油王や原発にお金を回すんじゃなくて、地域の未来をつくるNPOに寄付しよう、というのが、森ノオトの今後の「口説き文句」になってくるかな、と思います。

さあ、いつもどおり長くなりましたが、ぜひ今後とも森ノオトへのご支援をよろしくお願いします。わたしたちは、支援してくださっている「森のなかま」の顔を見て、皆さんの役に立てるような情報を集めて伝え、またそこで出会った人なりモノコトを皆さんにお返しできるよう、努力してまいります。ぜひ、このサイトをクリックして(笑)、わたしたちが「はぐくみたい未来」を一緒につくる「森のなかま」になってください。
http://donate.morinooto.jp/

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