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それと、すてきななにもかも

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ひと月に一話お届けする童話集。 おさとうと スパイスのほかに どんなすてきなものを おんなのこたちは 見つけるでしょう 【配信予定一覧】 1月 モリー、うしろむきに歩く … もっと読む
全12話の童話集です。2018年12月まで毎月1話配信されます。3話分の料金で全12話をお読みいた… もっと詳しく
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それと、すてきななにもかも

このnoteはマガジン「それと、すてきななにもかも」のイントロダクションです。 配信予定をアナウンスしています。 新しくマガジンをスタートします。 タイトルは「それと、すてきななにもかも」 ひと月に1話お届けする童話集です。 配信は以下の予定となっています。 1月 モリー、うしろむきに歩く(1/23配信) 2月 マリエルのうさぎ (2/20配信) 3月 よつあしオーケストラ (3/20配信) 4月 わたげのバルトロマイ (4/17配信) 5月 ディノコレクション

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モリー、うしろむきに歩く

 その日、モリーはベッドを出てからずっとうしろむきにばかり歩いていました。うしろむきに10ぽ歩いてはワンピースのすそをたくしあげ、おなかのようすをさぐっていました。何回見ても、かわいいおへそが見えるだけです。あるいは朝のころよりいくぶんへこんで見えたでしょうか。今は、朝ごはんと昼ごはんのちょうど真ん中の時間でしたので、朝ごはんに食べたオートミールとお紅茶の半分はなくなっているはずです。  モリーはじぶんのおなかを見て、ううん、となっとくがいかないようすで首を横にふり、ワンピー

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マリエルのうさぎ

 朝早く、焼き立てのバゲットをかかえておうちに帰るとき、マリエルはいつもうさぎになったような気分になります。二本の長いパンのあいだから顔をのぞかせて歩いていると、ぴんと立った二つの耳が頭にはえたようです。ときどき、ぴょんとうさぎをまねてはねてみます。そうすると焼き立てパンのこうばしいかおりがマリエルの鼻さきでふわっとゆれます。朝のひかりの中で、それはいつもマリエルの心をうきうきとさせ、おなかのむしをぐう、といわせました。

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よつあしオーケストラ

 ルーシーは ピアノをひくのが  とっても じょうず  りょうてを つかって ポロン ポロン  ゆびは かろやか おとは うららか  そればかりか ルーシーは  りょうあし つかって ひくことも  とびきり じょうず  りょうあし つかって カロン カロン  ゆびは かろやか おとは うららか  そのうち ますます とくいになって  ピアノの けんばん とびのって  りょうてと りょうあし よんほんあしで  ポカロン ポカロン  とびきり じょうずに  とびきり ゆかいに  

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わたげのバルトロマイ

 タンポポのわたげのようなふりをして、それはやってきました。ふわふわとしていて、さわりごこちもやわらかなそれは、マリーの耳たぶにぶつかってはずむと、耳のなかにするするとはいってゆきました。 「きゃあ! くすぐったい!」  おもわずマリーは声をあげました。 「わたしのあたまのなかにはいってきた、あなたはだあれ?」  タンポポのわたげのようなそれは、口をつぐんでだまっています。  マリーは、うさぎのぬいぐるみで、しんゆうのセバスチャンにたずねてみました。 「わたしのあたまのなかに

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ディノコレクション

 スーは、おおきな骨のひょうほんを、ぽかんと口をあけてみあげていました。そのあとぎゅっと口をむすびなおします。しばらくして、口をひらき、せんげんをしました。 「わたし、恐竜になる!」  スーは、そのときから恐竜になりきりました。りょうてをすこしちぢめて、こしをまえかがみにおろします。そして、まわりににらみをきかせ、のっしのっしとあるきます。  スーがみあげていたのは、ティラノサウルスの骨格ひょうほんです。そのティラノサウルスはスーとおんなじなまえでした。だから、スーもこんなふ

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レイチェルのかさ

「レイチェル! 夕がたから雨になりそうだから、パパにかさを届けてちょうだい。あなたはレインコートを着ていきなさいね」  お母さんにそう言いつけられてレイチェルは、すばやくレインコートを取りに自分のへやへと向かいました。黄色に白い水たまもようのレインコートはレイチェルのお気に入りです。レインコートをはおるとすぐに 「いってきます!」  お父さんのおおきな黒いかさをひきずって出かけていきます。空はあつい雲におおわれて、いまにも雨がふりだしそうです。  レイチェルはかさをひきずるの

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あかるい夜に

 ミルッカのともだちはカエルのタリーです。カエルといってもそれはぬいぐるみのカエルでした。ミルッカがうまれたときにサッラおばさんがプレゼントしてくれた、ひょろながいてあしとエメラルド色にきらきらとかがやくひとみをもつカエルです。ミルッカはうまれたその日から、ずっとタリーといっしょです。ねむるときはもちろん、ごはんのときもさんぽのときも。近所のともだちとあそぶときにもタリーはついていきます。タリーのあしはながいですから、ミルッカがかけっこをするたびにひきずられ、なわとびをするた

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アオイのハサミ

 アオイはハサミでものを切るのがすきでした。  紙を切ります。  お兄ちゃんのあまりてんすうのよくないとうあんようしを切ります。  ザクザク。  シャキシャキパララと、とうあんようしはバラバラになりました。 「うまくつなげたら百てんに見えるぞ!」  よろこぶお兄ちゃんのことなど、きにもとめずアオイはべつなものを切ります。  カーテンを切ります。  ザクザク。  パタパタハララとぬのがゆかにおちて、かさなりました。  するとちょうど夕日の光がさしこんできました。その夕日がま

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三びきのサイ

 いぶきの家の庭には三びきのサイが住んでいました。けっしてひろい庭ではないし、おおきな池があるわけでもありませんが、三びきのサイは、いぶきの家の庭でなかよく暮らしています。  一ぴきは金のかんむりをのせています。  一ぴきは銀のかんむりをのせています。  一ぴきは黄色の花かんむりをのせています。  いぶきは三びきのサイのことをそれぞれにすきでしたが、なかでも金のかんむりをかぶっているサイがお気に入りでした。金色にかがやくかんむりがきらきらとかがやいていたのもありますが、な

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ハンナの木イチゴつみ

 おおきなおおきなバスケットをりょうてでかかえて、女の子が森の中へ入ってゆきます。女の子の名前はハンナ。森にほど近いお屋敷に住んでいる、ちいさなお嬢さまです。  ハンナがかかえるバスケットのおおいの布のすきまからは、ほんわりとあまいにおいがながれてきます。そのバスケットを左右にふりふりハンナは森のおくへと歩いてゆきます。そのにおいにつられるように動物たちがついてゆきます。シマリス、野うさぎ、子じかにヒグマ。ハリネズミも小さな足をけんめいにかけ出してハンナのあとを追いかけます。

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ステラとてっぺん星

 冬の森を びゅんびゅんと かけぬける  カモシカの せなかに 女の子のすがた  なまあたたかい カモシカの はくいきに  顔をしかめながらも しがみつく  女の子の なまえは ステラ  いつ カモシカの せなかに  のったのか しれないけれど  とにかく ふりおとされないように  みじかい毛を かたく にぎりしめる 「どこまで ゆく つもりなの」  ステラの といかけに こたえることなく  走りつづける カモシカは 風のよう  冬の森は いちめん まっしろ ふかい雪  木の

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ナターシャと星のなみだ

 ナターシャのなぐさめは、ベッドからながめるみずうみのようすでした。  おおきなお屋敷の二階の部屋からは、ひろびろとしたみずうみぜんたいを見わたせます。  秋から冬へと季節がかわろうとするころ、ナターシャは病気の療養のためにみずうみのほとりにたつ、このお屋敷にやってきました。  みずうみには毎日のように北の国からわたり鳥がやってきます。旅のとちゅうでからだを休めにおりてきては、ほんのなん日かをすごすと冬のすみかのある南の国へと飛びたってゆきます。  そのようすはナターシャのお

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