【ガーランド】:夜は、まばたきほどふくよかになる
こわばる体を引きずって、職場へ向かう。音楽を聴くこともできない。もう遅刻は決まっていて、それでも声も出ず、引き返す気力もなく、時間を確かめないまま仕事場に着く。
案の定、遅刻はしているのだけれど。
職場の人はみんな優しい。
「いてくれるだけで助かるんだよ」
そんなことを何人もの同僚が声をかけてくれる。
それってさ、わたし、これ以上に喜べることなんてないんじゃないの。体が動かなくても声が出なくても、それでも多くのことができる自負はあるけれど、こんな不自由なわたし、邪険にされてもおかしくないんだよ。
それなのに、働くことを許されている。
そう、そうなんだけれど。とても恵まれているのだけれど。
新しい仕事を探している今、こうしてあらためて書き留めると、全然、やめる理由なんて出てこない。もう少し、ここで働いていいのじゃないかと思える。
ただ、心情的に、受け入れられないことがあったことも事実だ。
今までにもたくさんあった、ここに書いたら、雇用主はタダじゃ済まされないようなことも言われたことがある。
ほんとはね、理想はね、物書きになって、短い時間を今の職場で過ごすというのが、いいんだ。ずっとそれを望んできたのだけれど、わたしが、ちっとも作家になることができないでいる。
あーあー、ほんと、これだと毎日、わたしの愚痴ばかりで埋まってしまう。こんなガーランドを編みたいわけではないんだ。
わたしは、こわばる体と心を置き去りにするために、このやるせない夜を柔らかく膨らませるために、一編の詩をここに置く。noteではまだ未発表だったと思う。
澄む
不思議はあっていいのに
どうしたの
夜が注がれると不安なの
空の底が夜のたまり場になり
空に棲むものが降りてくる
透明なものが色を持つ
それで君の瞳も
文字まがいが夜に逃げ
物語は新しくなる
夜は、まばたきほどふくよかになる
影が
濁点を戴いている
やるせない夜に、言葉は湿りがちになる。明日は、きっと素敵を届けよう。
グナイグナイ、よい夢を。
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