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「塩を摂りすぎると高血圧になる」は本当か?〜分子栄養学的な考え方基礎講座〜

分子栄養学という言葉、聞いたことありますか?
栄養学には大きくわけて2つ、基礎栄養学と分子栄養学があります。

基礎栄養学は栄養士さんが習う栄養学で、基本的に欠乏症の歴史と研究により基準値が決められています。「ビタミンCの推奨量は〇〇mg」「鉄の摂取基準量は〇〇mg」といった、日本で広く知られている基準はこの基礎栄養学の中で言われることです。学校給食のカロリーや塩分量なども、この基準値の中で決められています。

対して分子栄養学とは、病気にならない量ではなく、人によって違う栄養素の必要量を探っていき、細胞ひとつひとつが正常に機能することを目指すための栄養学です。どちらが優れているかいないかではなく、見ている角度、目標そのものが違うのです。

今日はそんな分子栄養学的な考え方をご紹介していきます!

「食塩を摂りすぎると高血圧になる」は本当か?

食塩を摂りすぎると高血圧になる。そうですよね。常識ですよね。今や味噌から醤油から柿の種やハッピーターンに至るまで(!)減塩が叫ばれその需要とともに幅広い商品が展開されています。

でも待ってください。
例えば薬なんかで「この薬を飲めば、必ず、全員、血圧が下がる」ということはあり得るのでしょうか?
もちろん日本で承認される薬は研究によってエビデンスが確立され、薬効も安全性も担保されたものばかりです。けれど、「薬の効き方は万人にとって同じではない」ことは、誰もが知っていることと思います。遺伝子配列の違いや体内の酵素活性の違い、生活習慣の違いなどにより薬効は人により様々ですし、薬の合う合わないもありますよね。

では、塩は?塩を摂取しすぎたら、必ず、全員、血圧が上がるのでしょうか。分子栄養学では「そうではない」と考えます。そうではないと考える主な2つの理由を以下にあげます。

①高血圧には食塩感受性高血圧と食塩非感受性高血圧がある

食塩を摂ることで血圧が上がるタイプの食塩感受性高血圧の日本人の割合は、高血圧患者の中で30%程度とする研究もあります。食塩非感受高血圧のひとは塩分を控えても血圧が下がるわけではありません。

②塩の種類によって血圧の動態は変わってくる

塩が血圧をあげるとすると、塩の中の何が血圧を上げるのでしょう?これ、ナトリウム(Na)なのですね。ナトリウムは体内でカリウム(K)と拮抗して働きます。平たく言うと、カリウムが体内の余分なナトリウムを排出してくれるのです。

塩には大きく分けて2つの種類があります。精製塩と天然塩です。精製塩は電気分解により作られ、塩化ナトリウム(NaCl)が99.5%以上含まれます。対して天然塩は岩塩や海を煮詰めて作る海塩になり、こちらはカリウムやマグネシウム、カルシウムなどのミネラルを含みます。カリウムの入っている天然塩を摂ることで、人によっては塩を摂取しても血圧が上がりにくくなる可能性があります。

食塩は人にとって一番大切な栄養素。食塩非感受性高血圧の方が塩分の摂取を制限することで、メリットよりもデメリットが上回る可能性もあります。循環不全、脱水などはそのデメリットの一例ですし、「減塩すれば良い」と効果のない対策ばかりを重視して、本当の原因にたどり着けなくなることも良くないことだと考えます。

自分の身体に合う量を知ること

栄養学の基本は基礎栄養学であるべきで、分子栄養学だけを重視していくことはまた別の問題をはらむ可能性が高いのですが、基礎がある程度できた上で「その人個人の必要な栄養素とその量を知っていくこと」は体調管理をする上で有効だと思っています。自分はこの食材に対してどれほど感受性があるのか?こっちの似ている調味料ならどうなのか?これが食べたいけどどのくらいの量なら大丈夫なのか?
もちろん美味しい!のが一番だし、美味しい!を選択基準の一番に持ってきてもらうことは悪いことではないのですが、何らかの症状が出たり、体調が悪くなるようなら付き合い方を考えて行ったほうが良いと思います。

すべてのものには身体に合う量があります。毒性学の父であるパラケルススも「あらゆるものは毒であり、毒なきものなど存在しない。 あるものを無毒とするのは、その服用量のみによってなのだ。」と言っています。塩より何より人類にとって大切な酸素も、その量によっては生物にとって最も身近にある猛毒だし。

詳しいことはジョジョ6部読んでください。オススメです

自分は減塩ハッピーターンを食べたほうが良いのか?普通のハッピーターンでいいのか?普通のハッピーターンなら、どのくらいのハッピーパウダーなら体調が悪くならずハッピーのままでいられるのか?…ということを考えながら、自分の身体を見つめ直して行くこと。分子栄養学は「平均値ではない、自分そのものを知る」手段のひとつです。

カウンリングをする際には血液検査や毛髪検査で見ていくことが多いのですが、重要なのは検査の数値ではなく、症状や体調に合わせて「自分で試していくこと」になります。試していかないと身体に合う量ってわからないのですよね。選ぶものもそうですが、食べるタイミングや順番、食だけに限らず生活習慣や環境要因も考慮していく必要があります。
分子栄養学、というと敷居が高いかもしれないけれど、「何の食べものが合っているか」「どういった食べ方だと体調よく過ごせるか」など、自分に合うもの合わないものを探ったり、面白そうな食材だったり調味料を気軽に試していってもらいたいなと思います。試すことが大事なので(2回言いました)。

何から手を付ければいいのかわからない方は、まずは塩を「天然塩」にしてみて、身体の調子を見てみるのがオススメです。わたしのオススメは粟国の塩。地元の塩と食べ比べしてみてくださいね!


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