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定年女子の実家じまい 実家を学童保育に?

実家を学童保育にできる?

叔父から久しぶりに電話があった。
「山の家を見たいっていう人がいるんだけど……」
山の家というのは私の実家のことだ。

来春に学童保育を開設する予定で物件を探している人がいるという。実家は築50年。室内を歩くと畳の一部や台所の床などが少し沈む。古民家というほど古くはないが、かと言って不動産会社の広告に載っている中古住宅ほど新しくもない。

息子が通っていた学童保育は、当時すでに築50年以上経過していたであろう古い民家で、それからさらに20年くらいたった今も存続している。うちの実家も学童保育所にできないかな、と思ったことはあった。しかし、学区内には学童保育がすでにふたつあるし、実家は学区のはずれにあるので、子どもの足では学校からは30分近くかかる。また、家の前の道路は交通量が多くて危険だし、父母の迎えの車が何台も停車していたら近隣の迷惑にもなる。学童保育には適さないだろうと思っていた。

口コミ恐るべし!

ところで学童保育をやろうとする人と叔父はどんな知り合いだろう? 聞くところによると、叔父の隣人のところに、いい物件がなくて困っていたKさんが相談に来て、たまたまその立ち話を聞いた叔母が、空き家があると話したとのこと。その日のうちに叔父が案内して、外観が気に入ったので内部も見たいという話になったそうだ。口コミ恐るべし。

その後Kさんと直接連絡を取り、翌週には実家の内部を見てもらうことになった。そのことを叔父に報告したら、見てもらう前に床を直しておいたほうがよいという話になり、早速週末に叔父と夫が床下を修繕することになった。

叔父は大工仕事の心得があり、これまでも私の母に頼まれて床の張替えなど実家のリフォームをしてくれていた。和室の畳をめくって床下を見てもらったところ、柱は特に問題なかったが、根太という床下に渡す横木がボロボロになっていたので、取り換えてもらい、床が沈むことはなくなった。

内覧会の結果は?

翌週、Kさんがやってきた。Kさんは、今は自宅で英語塾をやっているが、学童保育開設を目指しているのこと。大手とは違う、小規模ならではの特色ある保育をしたいと考えており、実家はそれにピッタリだと気に入ってもらえたらしい。

特に、かつてピアノ置き場だったリビングの一角を、叔父がリフォームして母のベッドを入れカーテンで仕切ったスペースは、そのまま体調がすぐれない子どもを休ませる場所に使えると喜ばれた。

使える備品が山ほどある

下駄箱は30足くらい入るし、玄関スペースに作り付けてある腰ほどの高さの棚は、扉をはずせばそのままランドセル置き場になる。リサイクルショップで売ろうかと思っていた本棚やラックは、そのまま使ってもらえそうだ。

食器棚に残っているコップや湯飲み、スプーンやフォークも使ってもらえるだろう。冷蔵庫や電子レンジも年数は経っているがまだ十分使える。

子どもたちの送迎はワンボックス車でするので、父母の車が並ぶことはないらしい。ただ、スタッフの車を駐車する場所が必要なので、不動産会社に相談してみると言われたが、建物自体はとても気に入ってもらえたようだ。

家賃は格安にしておくし、家に残っているものは無償で提供しよう。実家のことをKさんに紹介した叔母は大正琴の先生をやっているから、子どもたちに大正琴の体験をしてもらうのはどうだろうなどと、構想がどんどんふくらんでいく。

ご縁があると思ったのに……

2日後、 Kさんから連絡がきた。不動産会社に相談したが、目を付けていた空き地は所有者が使う予定があり、近所には駐車場がないとのこと。町内ならいくらでも月極駐車場がありそうだが、実家は町はずれだ。「もう少し探してみますが、駐車場がないとどうにもならないので……」とすまなさそうにKさんは言った。

結婚するまで保育士をしていた母も、家を学童保育で使ってもらえたらきっと喜んだに違いない。息子がお世話になった学童保育。わずかでも恩送りができると思ったのに。すごくご縁がありそうだと思ったのに。駐車場、何とかならないかなあ。

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