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五月の虹

息が苦しくなって、名前のつけられない感情に襲われた。
胸がぎゅっと締め付けられるこの感覚を、最後に味わったのはいつだったろうか。

仙台で開催された、「五月の虹」という写真と詩の個展に足を運んだ。こんな風に、ひとつの目的のためだけに新幹線に乗るのは久し振りだった。
知らない駅で降りて、知らない道を歩いた。空は薄曇りで、時折風が強く吹いた。

真っ白な壁に飾られた写真たちは、眼を見張るほど美しく、春の光に包まれたように暖かかった。それでいて、どことなく寂しかった。
何度も何度も、詩を読んだ。写真を見た。
ギャラリーが開く11時ちょうどに入り、気付いたら30分以上経過していた。はじめは5〜6人のお客さんと一緒に見ていたが、いつのまにか周りには誰もいなくなりひとりになっていた。

生きていたくないと思っていた時期があった。
その時の自分に、この景色を見せたかった。
大丈夫だよ。生きてていいんだからね。と言われている気がした。

購入した写真集を眺めながら、帰路に着く。
涙が溢れて止まらないのは何故なんだろう。

#コラム #エッセイ #五月の虹


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