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グラデーションとかぼかしとか

少し前に出した校正刷でのこと。グラデーションの境界線部分が白っぽくなりボケ足も短くなってすごく不自然な仕上がりになってしまっていた。
特色Aを特色Bの上にガウスぼかしで乗せたグラデーションで、入稿データはRGBプレビューで作成されていた。たしかにRGBプレビューのままだと綺麗に馴染んで見える。しかしCMYKプレビュー、そしてオーバープリントプレビューにすると色の境界部分が白っぽくなってしまった。データをモニターで見ているだけでもちょっとまずいのが確認できる。

RGBプレビュー

CMYKプレビュー
CMYKオーバープリントプレビュー

このデータをFMスクリーンで印刷した結果、データ上の見た目以上に境界の白が目立ち、グラデーション自体もレンジが短くがさついてしまいひどい仕上がりになってしまった。刷り上がった校正を見た担当者が慌てて製版に刷り取りを持ってきてデータを確認した次第。僕は刷り取りを見た瞬間(ああグラデーションの例の奴やな)と昔の事例を思い出していた。A色からB色へのグラデーションのちょうど中間あたりが白っぽくなってしまう現象。

左が見た目、右が分色

当時の環境でないのでこんな感じだったなと思い出して作成してみた。色の境目が白くなってしまう。当時の対処法はAからBのグラデーションをAから白、Bから白とそれぞれの色で分色しボケ足を伸ばした上で重ね合わせて上のグラデーションにオーバープリントを設定していました。乗算ではなくオーバープリント。バージョン9以前は透明効果はなかった。当然透明グラデーションもない。当時グラデーションにオーバープリントが設定できるのがなんか不思議な気がしました。
(ついでに思い出したのがグラデーションのバンディングを解消する方法として、グラデーションをイラストレーター上で先に「分割拡張」して少しづつ濃度の違うオブジェクトに変換する方法。何れにしてもpostscript3以前の昔の話。)

A→BをA→白+B→白に分割してオーバープリント処理


今更あらためてイラストレーターのグラデーションを見てみると最近のバージョンでは随分綺麗になじむようになっていました。どのバージョンから改善されたのかわかりませんが、グラデーションのボケ足の長さも随分変わっています。

左が見た目、右が分色

初めの校正の件は線形グラデーションではなくガウスぼかしだったのですが、結局上記のような方法で処理をしました。上のA色ぼかしと背景のB色の間に、Aより小さいボケ足を調整した白のぼかしを挟みA色のぼかしにオーバープリントを設定。乗算でもよかったかもしれません。重なり部分が黒っぽくなるのでA色と白のガウスぼかしの量を調整したバリエーションをいくつか作って最善のものを選択しました。

印刷の網点もFMスクリーンをやめてAMスクリーンに変更。実際最初の版相のものでもAMスクリーンに変更しただけでも随分改善しました。チェーン(エリプチカル)ドットならもっとよかったのかもしれません。刷順もAを先と後で比較してより綺麗に見える方を確認。大方の予想に反して透明度の低いB(金)を後に刷った方が自然に見えました。

データとして作成されたぼかしやグラデーションは、モニター上で綺麗に見えていてもRIPで分版される時、刷版の網点に変換される時、印刷にかけて紙に転写される時など様々な要因で滑らかさが失われてしまう可能性があります。(劣化してしまいます)グラデーションに限らず風景写真などの空や海とかの連続階調部分でも同様の現象は起きているわけで、RIPの演算処理方法や網点形状や線数、インキの種類など様々な考慮すべき要素があって製版・印刷現場の大きな悩みの種にもなっています。


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