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「資本主義の次に来る世界」の要約と感想

資本主義の次に来る世界を読んだので、その要約と感想を書きました。

はじめに(最初の章)が全体の要約になっているので、こちらを要約します。

はじめにの要約

地球は現在、大量絶滅の時代にあり、通常の1000倍のスピードで種が絶滅している。1970年以来、鳥類・哺乳類・爬虫類・両生類の数は半分以下になった。これらの原因は全て人間にある。大規模な農業や水産資源の乱獲は、生態系や環境を破壊する。また、CO2の排出によって海水のpHが変化しており、これは6600万年前に起きた絶滅の主な原因になったものである。

気温の上昇は、ハリケーンや熱波などの自然災害を引き起こし、たくさんの人の命を奪う。また、海面が上昇して洪水や高潮をもたらす。気温の上昇は食料にも影響を与える。アジア人口の半分はヒマラヤ山脈の氷河に由来する水に頼っており、農業用水もこれに頼っている。気温が3度か4度上昇すると氷河の大半が今世紀中に消滅して、その地域のフードシステムを破壊してしまう。

人間の活動が環境破壊や気候変動をもたらしているという科学的コンセンサスは、1970年代半ばから形成され始めた。それから半世紀も経っているにも関わらず、この破壊を食い止めることはできていない。大きな責任は、化石燃料企業・大企業・買収された政治家にある。しかし根本的な原因は、地球を支配する経済システムである資本主義にある。

資本主義の中心にある考えは成長である。資本主義の目的は、人間のニーズを満たすことでも、社会を向上させることでもなく、利益を引き出し蓄積することにある。資本主義のもとでは、GDPが毎年2~3%上昇することが目標とされるが、これは経済が指数関数的に成長することを意味する。GDPの成長はエネルギーや資源の消費と連動しているため、地球への負担が年々増加しており、科学者が定量化した限界を大幅に超えてしまっている。

現在では、資本主義に反する考え方を持っている人は少なくない。ある大規模な消費者調査研究によると、全世界の中・高所得国では、平均で約70%の人が、「過剰消費は地球と社会を危険にさらす」「自分たちは購入と所有を減らすべきだ」「そうしても幸福感や充足感は損なわれない」と考えている。2018年には、238名の科学者が、「GDP成長を放棄し、人間の幸福と生態系の安定に重点を置くこと」を欧州委員会に要求した。

高所得国は、人々の生活を向上させるために更なる成長を必要としない。必要なのは、資本の蓄積ではなく人々の幸福のために、経済を組み直すことだ。また、経済と生物界のバランスを取るために、エネルギーと資源の過剰消費を削減する必要がある。今私たちは世界観を変えるかどうかの岐路に立っており、この選択には私たちの命がかかっている。

現在の資本主義社会に生きる人々は、人間は他の生物とは違う存在で、自然とは切り離されていると教えられてきた。この考え方を二元論という。二元論は、人間が利益のために自然から採取することを可能にさせた。

二元論に対する考え方であるアニミズムは非科学的とされてきたが、現在では科学がアニミズムに追いついてきた。人間が体内に存在する膨大な微生物に依存していることや、木がコミュニケーションをとって養分を分かち合っていることが明らかになっている。経済だけではなく、世界と人間の位置付けについての私たちの見方も変えていく必要がある。

感想

直近にサピエンス全史を読んだのですが、サピエンス全史に負けず劣らず面白い本でした。

サピエンス全史から学んだのは、「社会は人類全体やコミュニティの生存に有利なように変化するが、それが個々の人々に幸福をもたらすとは限らない」ということです。そこから疑問に思ったのは、「何が人類を豊かにするのか?」「私は何をするべきなのか?」ということです。本書にはそれに対する一つの答えが書かれていました。

本書の面白い点は、成長をスローダウンしなければならないという主張(脱資本主義)が、それに人類を含むすべての生物の命がかかっているという根拠を元に書かれている点です。同じような主張の本は読んだことはありますが、特定の地域の特定の人のためのもので、現代社会に疲れた人々にとっての任意の選択だと思っていたため、衝撃的でした。

「お金を稼がなければ生活できない」という考えは、現代人にとって違和感のないものかもしれません。本書を読むと、その考えが資本主義という成長を求め続けるモンスターが私たちに植え付けたものであるという視点を得られます。

現在の常識が大きく変わっていくことも予想できます。例えば、利益はエネルギーや資源の消費を意味するので、過度な蓄財は自然から与えるより多くをとっているという意味で悪とされるかもしれません。また、投資は経済が長期的に見ると成長していることを前提に行うと思いますが、長期間の投資でもリターンを得ることができなくなるかもしれません。

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