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徒歩日本縦断《京都➡島根出雲編》0日目 『雨の京都観光』

どうしても、出雲まで行きたい。
どうしても、年内に。
どうしても。

仕事の帰り、バスに揺られながら。
起き抜けに、トイレに貼った日本地図を睨みながら。
ずっと考えてきた。

お金も時間も余裕なんかないし。
暮らしを思えば行かないに越したことない。
意味なんかない。行っても変わらない。

感じている、
歩き旅の意義が薄まっている事を。
極度の運動不足による、歩きたい欲求も。
精算のつかない、過去の悩みも。
薄まっている。

半端な気持ちでは、
ただ時間とお金を浪費するだけだ。

だけど、来年には日本縦断したい。
九州、いや、沖縄まで行きたい。
そのためには年内に出雲までは着いていたい。

年初の目標を達成して、
ただただ、半端に労働していて終わる今年の自分を上書きしたい。
あんなに『日本縦断だけを目標にしない』とか思っていたのに。
仕事も生活も冴えないまま、ただただ日本縦断にすがっている。
ただ下へ流されていく暮らしの中で、自意識を失わないように、
ただただ日本縦断にすがっている。

どうしても。
どうしても。

仕事が忙しくなる前に。
秋の京都の紅葉。
神在月の出雲。
いくなら今なんだ。と理由を繕う。

家賃更新でお金がなかったのに、
私は旅に出る。
これで、来年の春まで労働、労働の日々が確定した。

秋が過ぎれば冬がくる。
冷たく、長く、苦役の冬が。


ぼんやり帰ってきたら、春まで地獄だ。
地獄で意識を失わない「なにか」をどうしても、持って帰えりたい。
重い荷物を持ち上げた時、目をつぶって思い出せる、美しい何かを。
世間に揉まれても、自分にだけは美しい価値観を維持できる何かを。

どうしても。
どうしても。




いつもどおり、準備はバタバタとして、
パッキングも適当に出発。

深夜バスに乗る。
荷物が小奇麗なキャリーカートたちと違うので、戸惑われる。
中身を説明して乗せてもらう。

席の番号を2度聞いてしまう。
単純な番号、単純な聞き取りが抜けてしまう。
出発前に仕事を詰めたから、疲れているせいと自分に言い聞かすが、
もう自分がポンコツ化して復旧の目途は怪しい事を感じてきている。

バスの中は綺麗で席もいい。
今までの中でも良いほうだ。

ただ、ほぼ満席。

生活や仕事の事など、いろいろバタバタしてひとつひとつ片づけたが、
この旅で頭の疲れをとって、帰ったら全てとまた立ち向かわなければ、
そんな事をバスに揺られながら考えていた。

深夜の仕事を時給が高いためにしていた。
バスでは思ったより眠れて安心した。
これで、生活リズム変えて日中動ける。

京都駅前に7時に着く。
開店してるお店も限られていて、うどんを食べる。
普段節約していたから、外食がウキウキする。


コインロッカーに、なんとかかんとか荷物をいれて。
いざ京都観光へ。


夏とは明らかにちがい、冷たい青の風景、雲も高い。

旅が始まる。
景色が冷たくても、味わっていこう。
そう鼓舞する。

枯葉が川に浮かぶ、秋と冬の間に京都に来たと感じる。

珍しい建築にいちいち、ありがたがり写真を撮る。

京都ぽさを感じる通りを見つける。




橋を渡らず、この先斗町通りを通ることにする。



路地裏までも味がある。
地方だとシャッターが閉まって閉店している所も多いが、
さすが京都なのか看板がどれもみずみずしく、寂れた感じが無い。










一度、こういう店で食べてみたい。
朝も早いのでどこもやっていないので入らなかった。

料亭ぽいところで、一度てんぷらを食べてみたい。







これを敷き詰めるのはめんどくさそうだ。




川沿いをあるく。鴨の群がグワグワを戯れていた。




京都で見なくても良かったのだが、
見に行く休みもなかったので、
このタイミングで映画『すずめの戸締り』を観る。

新海誠監督を見続けてきたが、
「今回はどうくる⁉」「こうきたか!」そんな勝手なやり取りをした気になっている。

背景描写が上手い監督で、
情感をキャラだけでなく、風景で伝えるのが上手い。
そんな彼が、光の明滅で、雲で、季節で、ファンタジーで、雨で、時間で、都市と田舎のコントラストで、天気で。
街や風景を描いてきた。

今回は、廃墟で。
過去の清算の情感を描いた。

僕も、廃墟を見るたび、
廃墟が一番輝いていた頃を思い浮かべてきた。
日本には栄光が過ぎ去った廃墟がたくさん今も佇んでいる。

撤去されず、清算されず、時間が止まったまま、風化し寂れた風景が現実に今も数多く実在する。
そんな事を再確認させてくれる映画だった。

震災を思いかえすような描写もあった。
仕事先で震災を子供のころに経験した女の子に出会い。
話を聞かせて貰った記憶が蘇る。

学校に津波がきて屋上に避難しに行ったのだが、
屋上の鍵が自殺防止で1階の職員室あり、開かなかったのだそうだ。

生徒の中には、親がいなくなり。子供だけになった生徒の話もしてくれた。


映画館をでると雨だった。
折り畳み傘を広げる。





本能寺があり立ち寄る。
本能寺が日蓮宗だという事を初めて知った。
本能寺が何宗か考えた事もなかった。

織田信長は南無妙法蓮華経の旗をしていた時があったが、
彼の宗教観は青年期、晩年、どんな感じだったのだろうか?
詳しくないのでわからないが、もし本人にインタビュー出来たら聞いてみたい。

ドラマとかで、頭でイメージしていた本能寺より小さかった。
でも当時はもっと大きかったと聞く。


赤い。

冬のような彩度が落ちた冷たい風景に、
鮮やかに赤い枯葉が目に差し込む。

雨が冷たかったが、雨の紅葉を味わえた。


信長のお墓の近くに、本能寺の変で亡くなった他の人々の名前が連ねていた。
信長ばかり意識していたが森蘭丸(森 成利)以外の森家の名前複数があった。


?の看板。いいデザインだ。

前回は入れなかった京都御所リベンジ。
前と同じく、雨!

つくづく御所と相性悪いのだと思ったが、
雨でも中に入ろうと意地になる。

枯葉が地面を黄色く彩る。

赤い。
画像加工ソフトで彩度を間違えて強調したように
赤い色が浮いて、膨らんで、目に入る。
強い、赤。

雨で曇っても、濡れた枯葉が赤く感じた。

野生ではない、整えられた、植えられた、木々。
公園ぽい風景だ。


だだっ広い。
ただ贅沢な道。

本当に目を疑うほどに赤い紅葉。

とにかくだだっ広い道。
権威がそうさせたのか?
当時はどんな気持ちで歩かれた道なのか?

上京した使者はどんな思いでここに辿り着いたのか。

巨木に外人が写真をとっていた。
感染症対策も弱まり、外人が多く見かけた。
外人の強い香水が遠くても鼻を刺す。

山に囲まれた京。

御所の中に入る。
荷物を預けるロッカーもあり、助かる。

入るころには、いよいよ雨が強まる。
本当に御所と相性悪いと感じる。



外装より内装が見たかった。
二条城とは違い内装はあまり見れなかった。






塗りなおしているであろう朱色柱が鮮やかだ。











超一流であろう庭を見る。

自然ではない、人が考えて植えた『庭』の芸術を観る。

絶妙に一羽の鳥がとまる。


この庭の舞台の主役とばかりにいい場所にとまっている。


すごい建築だ。






まだ、とまっている。



すごい庭だ。




あの石はここにあったのではなく、
どこかから、選び、運んできたのであろう。

モミジがいちいち美しい

古い木なんだろう、
ムックみたいにもっさり赤い。


結局ずっと雨だった御所を出る。

腹が減りすぎていたので、昼食をとる。
おかずの追加をしたが思いのほか少なく、
追加なしで普通に頼めば良かった。

肉の味もよく、店員さんもよく、おかわりし易かった。

道のGのマーク
いつも疑問に思っていたが、
どうやらこの地下にガス管が通っている印なのだとか。


漫画ミュージアムに寄る。

森薫さんの展示。
みたい。

まんが工房
漫画作業を実演して見せてくれている。


経験者から見ると、
ペン入れのキレも、トーン削りのキレも悪い。
なでる様な緊張感のない動き。

常に時間に追われている漫画の現場ではあり得ない手つき。

だが、これは実演のための原稿だ。
早く仕上げたら見せられない。

漫画の現場を知らない人に説明する為の原稿なんだ。
俺みたいな厄介経験者の為じゃない。

見られながらの作業はやりにくい。
そそくさと場を離れる。


聖地巡礼、どこが聖地になっているか確かめる。

廃校を利用した館内は、床の木材がギイギイなるのが印象的だった。
年齢層も幅広く、外人も多い、館内いたるところに漫画を読みふけっている人ばかり。
漫画のすごさを改めて痛感する。

手形の展示では、意外と宮崎駿の手形あって驚く。
けれど『作品』で見ている人には作者ではピンときていないのか、宮崎駿の手形が飛ばされて見られていたのが印象的だった。

様々な漫画家の舞子さんの展示もあって、
漫画は絵のうまさじゃない事を再認識する。


手塚先生の「火の鳥」
運命を俯瞰する鳥

俺の運命は俯瞰されているのだろうか?

いよいよ、森薫さんの展示みる。


生原稿で、装飾の細部を本人が丁寧に描いている、恐ろしさを味わう。

キャラとキャラの距離感を原寸台の原稿で味わう。
森薫さんが描く、キャラの距離感、心の距離感を絵で、セリフで、構図で、めくりで、1p1p積み重ねて、深めて縮めている。

ブランコのシーンが強烈で、
お互いの距離感がいったり来たりして縮まる。

ブランコを漕いでいる肉体の流動。
加速と宙に浮く静寂を繰り返す。
森薫さんがこだわっている衣装も生き生きと揺さぶられている。
そして、女性を観る男性の気持ちも迫っては離れ、ブランコと共に揺さぶられる。
次のページにめくった瞬間、
ブランコの宙に放り出された静寂と共に、
時がとまり。
男性と同じタイミングでヒロインに恋に落ちる。

気持ちを完全にさらっていく。
大きな原稿で見て良かった!
その丁寧な作画になんの嫌味もなく、
じんわりとオートマチックに感動させられた。

民族衣装の展示もあった。


ネーム、これで決まる。
貴重だ。

作画風景の映像もあって見ごたえ充分だった。

外にでて街を散策する。
中庭がすごい建築に出会う。
地下まであって上下縦軸の視界が楽しい。


新選組の展示にひかれて立ち寄る。

昔は銀行だったらしい。

格子がいまでも滑らかに動く。

天井までもこだわりを感じる。

プリントされた衣装の展示をやっていた。
最初は興味が向くも、
プリントされているとどうしても、ツルツルとして、安っぽい印象を脱しきれず、良さを感じきれなかった。

新選組の展示をみる。
あまり詳しくないのが、いけなかった。
それに集中力を漫画ミュージアムで使い切ってしまっていた。

書面の展示多く、眠くなる。
土方歳三の刀や鎧の展示は少し興奮する。


市場?室内の屋根は好きだ。

夜もふけてくる。

京都タワーを目印に京都駅を目指す。
帰り道にスーパーによって、レジのおばちゃんが京都弁で嬉しかった。

今回は旅費を抑えようとできるだけ漫画喫茶を利用する事に。
予約の時間、5分前に着きギリギリだった。

京都の快活クラブの質は、いままでに比べると少し劣り。
やや汚く、風呂も残り毛、トイレも床がビシャビシャ。
便器、黄ばみ、尿石こびりついている。
部屋はマットの皮ヒビわれ、中が露出。
朝食、ポテトなし。(これはどこでもそうだが)

深夜仕事で昼夜逆転、
まだ馴染んでいないので眠さが限界。
この日は、色々調べたりしなきゃいけないのだが、すぐ寝て。
朝に調べる事にする。

さあ、明日から歩き旅がはじまるぞ!
仕事で筋肉痛の身体に告げて、寝る。

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