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Laufey "Letter To My 13 Years Old Self"、または僕らがもう少し愛について上手く話せること

アイスランド人の父と中国人の母の間に生まれ、10代の頃からテレビのオーディション番組などで母国メディアから注目されバークリーで学んだシンガー・ソングライターであり、ピアノ、ギター、チェロをあやつるマルチ奏者でもある才女Laufeyの2ndフルアルバム『Bewitched』が素晴らしい。



幼い頃から親しんできたエラ・フィッツジェラルドなどのジャズ、著名なヴァイオリニストを祖父にもつ母方からのクラシック、そして1999年生まれの若者として親しんできた2010年代の現行ポップス、インディ・ロックからの影響を、共同プロデュースに迎えたROLE MODELとの仕事で知られるSpencer Stewartの的確な手腕で折衷した、まるでノラ・ジョーンズの1st『Come Away With Me』を思わせる、統一感がありながらもジャンルレスな仕上がり。

流麗なメロディ、ジャズのマナーに沿ったコード進行だけじゃなく、4コードのループによる制限を自らに課しながらミニマルに半音のズレで引っかかりを作っていくスタイルはその美麗な見た目に反して、音楽的なヤンチャさを感じさせてくれます。

「ラブストーリーを集めたアルバムにしようと思い、家や出先のカフェで思ったことをノートに書き留めたり、古典とされる詩や戯曲を読み漁りました」
「それが、私にとって最も素直な気持ちを、私の人生をスケッチすることに、不安や迷いに押し潰されそうになっている過去の自分に語りかけることに繋がると確信していたからです」

そんなふうにして24年間の人生を、悲痛な片想いや一晩だけの甘い逢瀬、心が通じ合う相手との親密な昼下がりの安堵などを通して、確かな曖昧さを持って描き切った全14曲。

この美しいアルバムは、ともすればこれまでの歴史で抑圧化や周縁化をされてきたマイノリティの怒りを利用して金稼ぎの道具にしてきた、醜く利己的な風見鶏たちの大きな声や力に圧されてしまい、自らの人生のリアリティを作品化することを萎縮してしまっている若き芸術家たちに、強くしなやかな勇気を与えることでしょう。


“Letter To My 13 Year Old Self”
Laufey

Don't you worry 'bout your curly hair
Clothes that don't quite fit you anywhere
Voices echo in the gym
Another girl's had her first kiss
Please don't think too much of it, darling

I'm so sorry that they pick you last
Try to say your foreign name and laugh
I know that you feel loud, so different from the crowd
Of big blue eyes, and long blonde hair, and boys that stare
But, baby, know that

You'll grow up
And grow so tough and charm them
Write your story, fall in love a little too
The things you thought you'd never do
I wish I could go back and give her a squeeze
Myself at thirteen
And just let her know, know that she's beautiful

Keep on going with your silly dream
Life is prettier than it may seem
One day, you'll be up on stage
Little girls will scream your name
The days of tears and failure fears
And no one cares
Will all make sense, 'cause

You'll grow up
And grow so confident, and
Write your story, fall in love a little too
The things you thought you'd never do
I wish I could go back and give her a squeeze
Myself at thirteen
And just let her know, know that she's beautiful

そのカーリーヘアーを気にしているのね
なかなか似合う服が見つからなくて
体育館に響くはしゃぎ声
ファーストキスの話をする彼女たち
焦ることなんてない
大丈夫

最後まで男の子から選ばれることはなくて
中国語の名前を揶揄われてしまう
彼らが恋する蒼い瞳と金色の髪に囲まれて
心が叫んでしまいたくなっている
だけどあなたは

成長して強くなって
すべてを誇れるようになる
自分の物語を描こう
信じられないかもしれないけれど
愛してくれる人に出会えるから
あの日に戻って13歳の私を抱きしめたい
そしてただ伝えたい
あなたは美しい、と

そのくだらない夢を棄てないで
人生はあなたが思っているより素晴らしいから
いつかあなたはステージに立ち
少女たちがその名前を叫ぶのを目にする
涙と恐れと独りきりの日々が
報われるから

成長して強くなって
すべてを誇れるようになる
自分の物語を歌おう
信じられないかもしれないけれど
愛してくれる人に出会えるから
あの日に戻って13歳の私を抱きしめたい
そしてただ伝えたい
あなたは美しい、と

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