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映画備忘録vol.15 ホン・サンス『次の朝は他人』(2011)

「私が出てきた偶然には、何が作用したの?」
「空気と、男と、女」

雪と夜空。白と黒の淡いの中で、同じ時間が反復される。酒を飲み、話をして、ピアノを弾き、キスをする。

似てるけど、どこか違う。だけど同じ匂い。

「見る観点によって、似てるとも違うともいえる」

主人公の元彼女とバーの店主。デルフィーヌ・セイリグを思わせる、現実離れなほどに美しいキム・ボギョンの1人2役が表象する、差異と同一性。

エリック・ロメールとアラン・レネのハイブリッドによって、撮影当時50歳の天命を知ったホン・サンスは世界と映画の真理を探求、ラストのアンビギュイテにその成果を封じ込めた。

夜が繰り返されるうちに余白が埋まっていく。雪のように降り積もる。朝になれば溶けてなくなる。

『次の朝は他人』

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