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Mitski "Bug Like an Angel" 優しくない世界と私たちへ

7月26日、現代ポップ最重要シンガーMitskiの新曲『Bug Like an Angel』がリリースされた。

その実力に見合った名声を得たことで訪れた環境の変化、SNSでの悪質な誤報をキッカケに、当時最高潮だったキャンセル・カルチャーの荒波に巻き込まれた災厄を何とか乗り越え、チャート的に大躍進した前作『Lauren Hill』に続き9月にリリースされる6枚目のフル・アルバム『the land is inhospitable and so are we』からのリード・シングル。

分厚く構築されたサウンドが特徴的だった前作の真逆を張る、アコースティックギターによる4コードのループとウッドベース、微かに聴こえてくるピアノのトラックに多声コーラスを響かせるゴスペルは、アルバムがレコーディングされたナッシュビルの土の匂いが薫ってくるような音の肌触りで語られる呪い、約束、裏切り、それらと背中合わせのベタついた怠惰な快楽の誘惑を浮かびあがらせて、リスナーが目を背けて日常をやり過ごしている心のどこかへ、美しくも残酷に誘ってくる。


同時に公開されたMVではブルックリン拠点のコンテンポラリー・ダンサー、K.J.Holmesをフィーチャー。まさに「Bug Like an Angel」な彼女の舞踏が静かなカメラと編集で切り取られ、楽曲の世界を的確に抽象している。自身も優れたコンテンポラリー・ダンサーであるMitskiは静かにかつ大きく、その視線のダンスで堂々と渡り合い強度を加えた。楽曲に勝るとも劣らない緊張感を漲らせた傑作だ。


Mitski
“Bug Like an Angel”

There's a bug like an angel
Stuck to the bottom
Of my glass, with a little bit left
As I got older
I learned I'm a drinker
Sometimes a drink feels like family
Family

Hey, what's the matter?
Lookin' like your sticker
Is stuck on a floor somewhere
Did you go and make promises you can't keep?
Well, when you break them
They break you right back
Amateur mistake
You can take it from me
They break you right back
Break you right back

When I'm bent over
Wishin' it was over
Makin' all variety of vows I'll never keep
I try to remember
The wrath of the devil
Was also given him by God

天使みたいな虫がいる
グラスの底の
飲み残しの中に

年齢を重ねると
飲む量が増えていく
家族の呪いみたいに
家族の呪い

どうしたの
まるで床にこびりついたステッカー
また守れない約束をしてしまったの?
破ったら破り返されてしまうだけなのに

素人ぶった間違いを
私にしようとしている
すぐにその身に返ってくるのに
すぐに返ってくるのに

快楽に身を捩らせながらいつも
もう終わればいいのにと願ってる
決して果たせない誓いを
手当たり次第に立てながら

心得ているつもり
災いをもたらす悪魔はいつも
神から遣わされているんだって

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