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社会課題を解決する〜なんてできるの?

noteで「お金の向こう研究所」を開所している田内さんの著書「お金のむこうに人がいる」を読んだ。この本が「メタバース寺子屋」の発想のきっかけになったと言っても過言ではない。2年前、まだ私がロボット開発系のスタートアップに在籍していた時、本の題名からしてとても気になったので即Amazonで注文して読んでみた。とても参考になったコメントがいくつもあったが、なんと言っても「働く人がいなければお金の力は消える」というところがとても印象的だった。私なりに言い換えてみると「お金があっても働いてくれる人がいなければ何も解決しない」という感じだろうか。考えてみれば当たり前に単純なことだが、今の世の中を見渡してみると、さて、そのように思っている方がどれだけいるのだろうか〜とあらためて考えてしまった。

スタートアップでロボット開発をしていた自分にとって最優先していたことは、社会課題を解決できるロボットを開発していかに早く現場に投入して人手不足の担い手になれるかということだった。しかしそう簡単なことではなく、現代人にとって赤ちゃんを扱うような存在のロボットがすぐに人の代わりになれるものでもない。それなりに人がロボットを管理しなければ運用できない現状である。建設現場など複雑極まりない作業現場でロボットが動いていると、職人達は邪魔でしょうがないと思っていたことだろう。

そこで次に示す図を見てほしい。これは「お金のむこうに人がいる」の1ページ「ステーキの原価は0円になる」の俯瞰図である。この図のポイントは原価0円の生まれたばかりの子牛をステーキ用のお肉としてお店に出すまでに様々な人の手やコストが加わっていることを示している。〜そんなこと当たり前だろう。これが経済活動というものでこの現代社会が成り立っている仕組みだ〜という方もたくさんいるとは思うが、ちょっと視点を変えて考えてみたい。

著作者 田内学 書籍名「お金の向こうに人がいる」より抜粋した俯瞰図

例えば、高層オフィスビルに入居するための「家賃」をこの図のステーキ用の「牛肉の値段」に置き換えてみる。そうすると「生まれた子牛」は、コンクリートの原材料「石灰石・砂・砂利・水」や鉄骨や鉄筋・壁材の原材料「鉄鉱石・アルミニウム・木材」に相当する。原材料は全て自然、昔からこの地球に存在しているものだ、とすればおのずと高層ビルを建築するためには多大な労力や工程(時間)、エネルギーが投入されていることが明らかである。一方、高層オフィスビルの入居者にとってみれば、オフィスは綺麗だし眺めもいい、働いている人達のモチベーションも上がり会社への貢献度も増し、売り上げも上がること間違いなし、ということで高い賃料を払っているかもしれない。ただそこで次の事が将来的にも確保されていることが必要になってくる。この快適な空間を維持するためには、またさらに多大な労力や工程(時間)、エネルギーが供給されなければならない。

さてロボットの話に戻そう。建設現場の課題は、主に人手不足、インフレによる材料費や人件費の高騰、労働時間短縮など、その他多くの課題が山積していると言われている。このような課題を解決するための一案として、現在、様々な種類のロボットの導入が検討され現場での実証試験も頻繁に行われている。そこでよくよく上の俯瞰図を眺めながら建設現場の課題について考えてみると、仮に優秀で性能がいいロボットを導入したとしても、さて一体どのくらいの効果が出てくるのだろうか、という疑問が残る。考えれば考えるほど「お金があっても働いてくれる人がいなければ何も解決しない」という考えが頭から離れなくなってしまった。

この疑念はあらゆる事柄に当てはまるのではないだろうかとも思う。経済活動を優先しお金を投入して未来永劫このような仕組みが成り立つようにと考えている方々も少なくない。さらにその仕組みにどっぷりはまっているステークホルダーからしてみれば、経済政策が適切に施され将来的にも経済が安定して成長していくことを強く望んでいるだろう。しかしここでちょっと立ち止まって考えてみてはいかがだろう。例えばビルを建築するにしても、原材料のほとんどを木材にするとか、使用されるエネルギーを半減するとか、いろいろと思案しながら労力や時間を縮小していくという発想に切り替えて考えていくことも必要ではないだろうか。またロボットやAIに委ねられるところは任せて、人は人にしかできない働き方を模索し新しい働き方を創造していくべきだろう。

現状からしてみれば、当然このような発想はすぐにできることでもなく、様々なステークホルダーの方々の反対も出てくるだろう。しかし、いろんなしがらみのなか答えが無い大きな川を不安定な小舟で竿を差し櫂を変え漕ぎながら進んでいくしかないとも思う。「千里の道も一歩より起こる」というように未来に生きていく子供たちには試練かもしれないが、そんな社会を生き抜く力をつけていってもらいたい。メタバース寺子屋ではそんなことを自然に考えられる子供たちを育んでいこうと思う。

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