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聴く力を育むオーディブルクイズ

(聴覚の進化)

生物の聴覚は視覚に比べてやや遅れて進化したと考えられており、聴覚の進化は、水生生物が水中の振動を感知できる能力を獲得してから始まったと推測されている。そしておよそ4億年前のデボン期に水生生物が上陸した際、空気中の音を検知する聴覚器官が進化し、捕食者の接近を感知する、獲物を探す、環境の変化を認識するといった重要な役割を果たしていった。その後、空気中の音をより効果的に伝達できるようになり、より細かい音の識別が可能になったことで、生物の行動、コミュニケーション、捕食行動、生存戦略などに重要な変化をもたらしていった。

(ヒトの聴覚)

そのような進化の過程の中でヒトはさらに細かい音の区別ができるようになり、複雑な音声の組み合わせで言葉を形成し、効果的なコミュニケーションが可能になり、集団内の社会的結束を強化し、協力的な行動や社会的組織の発展を促進していった。いわゆる言語の獲得である。現在、科学界ではホモ・サピエンスが登場した約20万年前頃に、言語の基本的な形が存在していたと考えている。そしてヒトは言語を獲得してから後、時間と共に音楽やリズムを発明し、それを感情の表現、物語性の伝達、宗教的儀式、芸術的な創造など、より複雑な文化的表現の形として発展させていった。

(聴覚と視覚)

ここで簡単に視覚について言及しておきたいと思う。視覚は生命の進化の初期段階で発生した。最も原始的な形態の視覚器官は、約5億年以上前のカンブリア紀に登場したと考えられている。この進化のことをカンブリア大爆発ともいい生物多様性が急速に増加した。この時期に出現した生物の特徴は、現在の多くの生物に引き継がれている。そして視覚は、捕食者と被食者の関係、繁殖、そして生存戦略の多様化に影響を与えていった。視覚は空間的、直接的、具体的な情報を提供する重要な器官になった。

(認知能力に関して)

一方、視覚に対して聴覚は、時間的、間接的、抽象的な情報を提供していると言える。視覚は物理的な世界の理解に、聴覚は言語や音楽を通じたコミュニケーションや感情の理解に重要な役割を果たすことになった。またこれらは相互補完的であり、人間の経験の豊かさを形成する上で互いに連携している。ここで今回は聴覚に焦点を当て、ヒトの認知能力に対してどのような効果をもたらしていったのかを考えてみたいと思う。以下に聴覚の特徴をまとめてみた。

1.時間的な情報
 
聴覚は時間的な情報を提供し、音のリズム、高さ、強さなどを通じて事象の進行
 や変化を感じ取る。

2.間接的な認識
 
聴覚情報は、間接的な認識や理解を促すことができる。言葉のニュアンスやトー
 ンから、話し手の意図や感情を推測する。

3.コミュニケーションと社会関係
 
言語、音楽、話し声は、人間のコミュニケーションや社会関係の構築に不可欠。

4.情報の深化
 
聴覚は、情報の深化や連続性を提供し、物語や歴史的な出来事を伝承するために
 役立っている。

これらの特徴は、経済、哲学、思想などの分野において異なる影響を及ぼし、人間の認知能力や文化的表現の多様性を形成している。

(聴覚の未来)

さてこの先、聴覚はどのような進化を遂げていくのだろうか。多くの不確実性はあるが、環境の変化、生活様式、技術の進歩が、ヒトの聴覚進化の将来の方向性を左右する可能性は大である。たとえば、騒音公害や生活環境の変化は、聴覚に関連する進化の方向を変えてしまうかもしれない。良い方向に進化できればいいのだが、上述したような特徴がなくなってしまうことは避けたいところである。では日頃から積極的に聴覚からの認知能力を鍛えていくというのはどうだろう。そうすれば個人の生活の質の向上だけでなく、学業や職業におけるパフォーマンスの向上、さらには社会的な関係の充実していくのではないだろうか。

(聴覚からの認知能力を鍛える)

「聴覚を鍛える」「聴覚を刺激する」ことによって、日常生活、学習、仕事、さらには精神的な健康に寄与できるのではないか。いくつかの特筆すべきメリットを以下にまとめてみた。

1.コミュニケーションスキルの向上
 
言語理解の強化:
  
聴覚の訓練は、言葉の理解を深め言葉のニュアンスや意味をより良く把握する
  能力につながる。
 ・非言語的コミュニケーションの感受性向上:
  声のトーンやイントネーション、話し方のパターンなど非言語的なコミュニケ
  ーション要素をより敏感にキャッチする能力が高まる。

2.学習能力と集中力の向上
 
聴覚情報の処理能力の強化:
  積極的な聴覚訓練は、情報を効率的に処理し、理解する能力を向上させる。
 ・集中力の向上:
  音や話し声に集中する訓練を行うことで、注意力が高まり集中力が向上する。

3.記憶力と認知機能の強化
 
記憶力の向上:
  聴覚情報を記憶する能力が高まる。これは、情報を記憶し、後で思い出す能力
  に直接影響する。
 ・認知機能の維持:
  高齢者においては、聴覚の訓練が認知能力の低下を遅らせることに役立つ可能
  性がある。

4.精神的な健康の促進
 
ストレス軽減:
  音楽や自然の音を聴くことは、リラクゼーション効果をもたらし、ストレスや
  不安を軽減することができる。
 ・情緒的な安定:
  感情を豊かにするとともに、情緒的な安定を促進する効果がある。

5.社会的な相互作用の強化
 
社会的な交流の向上:
  コミュニケーション能力の向上は、人間関係の質を高め、社会的な相互作用を
  豊かにする。
 ・共感能力の向上:
  他人の声のトーンや感情を理解する能力が高まることで、共感や感情移入の能
  力が向上する。

積極的に聴覚からの認知能力を鍛えることは、多岐にわたる分野での能力向上に寄与すると考えらる。これは、個人の生活の質の向上だけでなく、学業や職業におけるパフォーマンスの向上、さらには社会的な関係の充実にも影響を与える可能性がある。

(いまの子供たちの課題)

現代の子供たちは、都市化、デジタルデバイスの普及、教育環境の変化など多様な要因により、聴覚に関連する複数の課題に直面していると思う。都市化や交通の増加に伴う騒音公害は聴覚に悪影響を及ぼす可能性があり、ヘッドフォンやイヤホンの過度な使用は聴覚損傷のリスクを高める。また、スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスの多用は、集中力や聴覚に基づく学習能力の低下、直接的な会話能力の変化を引き起こしてしまうかもしれない。教育環境の変化、特にオンライン学習やデジタル教材の使用の増加は、聴覚に基づく情報処理の方法を変えつつあり、音読やディスカッションといった聴覚を活用した学習方法の重要性が高まっている。さらに、グローバル化における言語と文化の多様性は、異なる言語やアクセントへの適応を必要とし、音楽教育は、表現力や感受性の発達を促している。これらの課題に対処し、聴覚の健康を保ちながら、聴覚に基づく学習やコミュニケーション能力を育成することが重要であろう。

(オーディブルクイズ)

そこでメタバース寺子屋では、オーディオベースのクイズや物語を通じて子供たちの想像力を刺激し、創造的な思考能力を育成することを目指している。子供たちの聴く力を強化することにより、言語能力の向上と社会的スキルの発達を促進することができる。また、子供たちが自分の考えを形成するために物語のストーリーを自分の言葉で表現する機会を与えることにより、子供たちが情報をより深く理解し、記憶に定着させるのに役立つと考えている。その特徴は以下の通り。
(参考資料リンク先)

1.聴覚の活性化と学習促進
聴覚は言語の習得と情報処理に重要な役割を果たしており、オーディブルクイズは子供たちの聴く力を鍛え集中力と記憶力を向上させる。

2.想像力の促進
ストーリーベースのオーディブルクイズは、子供たちに物語の世界を想像させ、創造的な思考を刺激する。視覚的な情報がないため、子供たちは聴いた内容をもとに独自のイメージを作り出すことになる。

3.言語能力の向上
言葉を聞くことにより、子供たちは新しい語彙や表現を自然に学ぶことができる。これは言語能力の向上に直結し、読解力や表現力の育成にも繋がる。

4.集中力の養成
聴覚を使ったクイズは、注意力を持続させる訓練になる。子供たちはクイズの答えを見つけ出すために、話されている内容に集中する必要がある。

5.社会性と共感の育成
物語やキャラクターに関するオーディブルクイズは、子供たちに感情移入を促し、他者理解や共感の能力を養う機会を得られる。

6.アクセシビリティとインクルーシブ
視覚に頼らないオーディブルクイズは、視覚障害を持つ子供たちにもアクセスしやすい。異なるニーズを持つ子供たち全員が参加できる、包摂的な学習環境を促進することができる。

現在、「民間学童えすこーと護国寺校」でオーディブルクイズの習い事クラスを開催している。さらに今後はリアルクラスと並行して2DメタバースGatherを活用したオンラインクラスの開催も計画している。
オーディブルクイズ サンプル「レモネード・マーケット」 (リンク先)




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