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2024東大現代文について

2024東大現代文を解きました。
問題はこちらから。

題材こそ文化人類学的な視点によるものであり、一般的な高校生としてはあまり触れることがないようなトピックだったかもしれません。
また、「掛け売り」「ツケ」などの、いまとなっては中々聞かないような単語が中心となっていたので、ここから内容の把握が難しかった人もいるでしょう。

ただ、文章自体は平易で、かなり読みやすかったのではないでしょうか。
内容を把握するだけならば、とても簡単にできた年だと思います。

問題は、回答作成に移ってから。
具体例が多く、どこからどれだけの要素を引っ張って回答を作成するべきかが難しく、求められている答えの概形はわかっても、いざ書き始めると難破してしまった人も多いと思われます。

例えば、(1)の問題は根拠となる部分が具体例の個所にあります。これをそのまま引っ張っては回答欄に収まらないので、ある程度答えの形をブラッシュアップする必要があります。

また、「商売戦略上の合理性と”も”」とあるので、どのようなデメリットを抱えているかを述べつつ、理由を提示したほうがいいのではないかと考えました。

(2)については、行商人と客の関係性が単なる金銭取引のみならず、「支払い猶予の贈与」を含む点を指摘したい。
そして、客に贈与した返済期限は、客がその権利を放棄するか、そのつけを返済するまでは失われない点を説明できればいいのではないでしょうか。

(3)は「生活全般」「帳尻が合う」と説明が難しい言葉が続きます。
行商人と客のツケの関係においては、金銭的には一方が損をするとしても、食事をおごるなどして、日常生活の上では日々の営みが成り立つように補填されています。
これによって、損得が帳消しになったように感じられていると説明できればよいかと考えました。

特に、「感じられている」という部分は必要です。
帳消しになっているのではなく、あくまで当人たちがそう考えているだけであると指摘することが重要だからです。

最後の120字要約ですが、まだ私でも確実な答えが出ていません。
最終的には、「行商人と客の間の関係性維持に役立っているよね」と言いたいわけですが、そこに至るまでの説明が難しい。
「余韻」についてどのように説明するかも判断が分かれるところです。

私は
①タンザニアの行商人と客の間で行われる取引が金銭契約と贈与契約の二面を持っている点
②贈与は二者の私的な困難を支えあう合意であり、成立後には互いの献身を称えあう。
③これにより、お互いの関係は金銭的損得の次元から感情を伴う次元へと昇華している。

と考えました。

各予備校の答えもこれから出そろうでしょう。
それらを研究して、また新しく答えを確認したいところです。

最後に私の答えを書きます(2024/2/26時点の回答)。
これは暫定的に定めたもので、これから改定する可能性がありますが、その際はまた別に追記します。

(1)ツケは客にとって行商人への負い目であり、特定の焦点を贔屓にし、購入機会を増やすし、そうして増えた販売枚数は仕入れ先との信用取引で有利に働くから。

(2)タンザニアの行商人と客との関係性は、金銭契約と贈与契約の二種に分かれており客に贈与した返済期限は客がその権利を放棄するかツケを返済するまで失われないから。

(3)金銭的には一方が損するとしても、返済期間や購入機会の贈与とそれに対する返礼として食事の提供などが行われるなら、総じて損得が帳消しになると思えること。

(4)タンザニアの商人と客の間で行われる信用取引は、金銭契約と時間や機会の贈与の二面性を持つ。贈与を巡る駆け引きは互いの私的な困難を支えあう合意であり、成立後には互いの献身を称えあうことで、金銭的損得の次元から感情を伴う次元へ昇華させていること。

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