神になろうとした者たち~仮想空間で崇められる存在とは~

世界をコロナ禍が襲った。
緊急事態宣言が発令され、外食、飲み会は謹慎モードに。それに伴いオンライン飲みが流行した。
数々のオンラインサロンで飲み会の部屋が数多く作られた。そしてそれを率いるリーダー達もオンラインサロンの数だけ続々と生まれた。

台頭するまで

ゴールド氏(サロン内で使われた架空のハンドルネーム)もその1人である。ゴールド氏はオンライン飲みサークルと名付けたオンラインサロンを立ち上げた。
時流もありサロンには多くの人が入った。
ゴールド氏はリーダーとしてMC的役割も果たそうと努めた。参加者の誰よりも酒を飲み饒舌ぶりをアピールしようとした。
その甲斐あってか徐々にサロンにはどんどん人が増えていき、人数はついに100人を超えた。彼は晴れて大規模オンラインサークルの管理人となったのだ。
しかし管理職とはあゝ辛き哉。
互いの顔が見えないオンラインのやり取りにおいては参加者同士の口論、場が盛り上がらない、個人情報漏洩などのトラブルがつきものだ。そしてそれらの責任を負うのは全て管理人たる自分。少なくとも彼はそう考えていた。
その苦難から逃れるため彼は酒の力に依存した。元々オンライン飲み会の管理人というだけあって酒は弱くはなかったが、耐え得る上限値は超過していた。もはや飲み過ぎて自身がどのような発言をしたのかも覚えていないほどの状態であった。
一方で管理の仕事は怠らなかった。元々彼のサロンには遵守すべきルールがいくつか存在したのだが、管理強化のためルールを次から次へと増設した。その数は遂ぞ20に迫るほどに。
ルールが多過ぎる!という参加者からの批判もあったが、意には介さず。
ルールは部屋の運営において必要悪たるもの。
そのような信条もあったのだろうか。
そんな折、ゴールド氏に機会が訪れた。別部屋の併合である。
同系統の部屋はいくつも存在していたのだが、併合先も100人越えの大規模部屋であった。
既に100人越えの部屋の管理を務めていた手腕を見込まれ、その部屋の管理をゴールド氏は任された。例に漏れず、新たに併合した部屋にも大量のルールを制定した。

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