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天地人が注目する今月の宇宙ニュース ~リモートセンシング編~ Vol.3


天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。


リモートセンシング技術に関して、天地人が注目した5つの海外ニュースを紹介します。
今回は、BRICSの衛星コンステレーション、衛星画像を元にした電子住所の開発、ハイパースペクトル衛星ミッション、Sentinelのオープンデータの活用、NASAによる持続可能なカシミヤプロジェクト。

それぞれについて、天地人の専門家が、日本における注目ポイントや今後の動向を解説します。


天地人が注目したニュース5選!

ニュース1:BRICSが衛星コンステレーションの協力に合意

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国(BRICS)が、リモートセンシング衛星並びにそのデータを共有することに合意した。
BRICSのコンステレーション(共同利用する衛星システム)は、6機の衛星と5つの地上局からなり、観測データは中国・海南省のデータセンターに保存される。BRICS間での衛星データの共有・活用により、食糧危機への対策や自然災害の被害把握などの課題解決に役立てられることが期待される。


ニュース2:ハイパースペクトル衛星、地表面を詳細に解き明かす

今春、ドイツ政府のハイパースペクトル衛星の打ち上げのためSpaceX社のFalcon 9が打ち上げられた。ハイパースペクトル衛星は従来の衛星と比べ、より広範囲のスペクトルを正確に観測でき、多くの対象物の識別ができるというメリットがある。そのため、土壌の状態や植物の分布などの地球全体の状況が詳細に把握でき、温暖化対策や地球資源の管理に役立てられると期待される。

出典: New Satellite Is a ‘Swiss Army Knife’ in Space, SCIENTIFIC AMERICAN
https://www.scientificamerican.com/article/new-satellite-is-a-swiss-army-knife-in-space/


ニュース3:インドのPataa社が衛星画像から電子住所を取得

Pataa社は、インド宇宙研究機関のデータポータルにアクセスできる合意書を締結した。Pataa社は、複雑な住所をシンプルなコードに変換できるアプリを提供しており、衛星画像と組み合わせることで、住所の電子化と簡潔化が急速に拡大すると考えられる。


ニュース4:宇宙から牧草地利用の遷移を観測

欧州連合の地球観測プログラムの一環で収集された、Sentinel衛星のオープンデータは様々な場面で活用されている。
例えば、ドイツでは牧草地利用の変化が生態系にどのような影響を及ぼすのかを、Sentinel衛星のデータと機械学習により解析している。衛星データによる牧草地利用の判別は実測値と遜色ない結果を出せるため、特定の地域のデータが得られれば、地域単位のより精密な解析が可能になると考えられる。


ニュース5:持続可能なカシミヤプロジェクト

モンゴル・ゴビ砂漠は、ヤギの飼育による高級繊維カシミヤの生産地となっている。しかしカシミヤの需要増加の裏側で、ヤギの頭数増加に伴う牧草地の摩耗が問題視。さらなる牧草地の摩耗を食い止めるため、NASAのサポートのもと「持続可能なカシミヤプロジェクト」が立ち上がった。衛星データをもとに広大なゴビ砂漠を監視、遊牧民に群れの管理の助言を行っている。



天地人はこう読む

この章では、本記事で紹介した5つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。


初めの2つのニュースは
天地人COO兼JAXA職員である百束の見解を記します。

ニュース1:BRICSが衛星コンステレーションの協力に合意

まず、この協定に宇宙ビジネスをリードするヨーロッパやアメリカが含まれていない点に座組としての珍しさを感じました。
データセンターが置かれている中国が、おそらく中心的な役割を担っており、今後の宇宙ビジネス業界の動向に何らかの影響を及ぼす可能性が考えられます。


中国といえば、以前に衛星攻撃兵器の実験で大きな批判を浴びました。衛星攻撃兵器とは、他国の軍事用衛星を破壊・無力化するために打ち上げられる兵器です。

そして、衛星攻撃兵器の実験により破壊された衛星の残骸が、宇宙ごみとして宇宙空間を漂うことで他の衛星の軌道を妨害したり、衝突したりする危険性の増加が懸念されています。

今年の4月には、アメリカが衛星破壊兵器の実験を実施しないと宣言し、実験を行う国への非難の姿勢を強調しました。

宇宙技術は安全保障分野とも深い関係があります。地球の様子を見るリモートセンシングも昨今のウクライナ情勢のように、様々な意図で用いられることもあります。

今回の連携はビジネス以外でも注目を集めることでしょう。



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