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【京都】大文字山に登って女子トーク。50代になっても、心は乙女なのさ。

送り火で有名な京都の大文字山は、気軽なハイキングコースとして知られている。幼稚園の遠足で訪れた話もよく聞く。日頃運動をしない私だが、園児が登れる山なら大丈夫ではないか。送り火を見るだけでは物足りない。「大」の炎がともされる場所を、ぜひ近くで見たい。銀閣寺道から千人塚を通り、火床を目指すコースを友達と登ってみた。

 大文字山は標高465.3メートル。銀閣寺道のほか、鹿ケ谷、蹴上、山科、三井寺などから登ることができる。私たちが行くコースだと、1時間もあれば送り火の舞台となる火床に着く。

白川通今出川の交差点で午前10時に待ち合わせた。小さな山でも、山は山。帽子をかぶり、足元はスニーカー。荷物はなるべくコンパクトに、お茶、お菓子(非常食)、手ぬぐい、雨具を用意した。虫刺されを防ぐため長ズボン。友人は長袖のパーカーを羽織った。大文字山を正面に見ながら、東へ。いざ出発。

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正面に見える大文字山が近づくたびに、うきうきする

しばらく歩くと哲学の道、さらに進むと銀閣寺の総門につきあたる。浄土院(通称は大文字寺)を越え、産土神である八神社を通り過ぎる。見所が多くて、わくわくする。帰りに余力があったら寄ろうかな。なんて考える余裕が、この辺りではまだあった。

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哲学の道
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銀閣寺の総門
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通称「大文字寺」の浄土院

少し行くと、いきなり山道っぽい雰囲気になる。湧き水があったので、手を洗った。冷たくて気持ちいい。大文字川に沿い、さらに歩みを進める。川にかかった橋を渡ると、本格的な山道になった。無心に足を動かすうちに、全身から汗が噴き出す。途中で立ち止まり、お茶を飲み、また歩き始める。だんだん言葉少なになる。

幸い、木が茂っているおかげで、思ったほど暑くない。道の脇に落葉がつもってできた、ふかふかの土がある。カブトムシが好みそうな土だ。白いキノコがやたらと多い。ツクツクボウシが鳴いていて、夏も終わりだなと思う。

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いきなり山道っぽくなった
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湧き水の冷たさに驚く
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だんだん急な坂になる
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ミミズをくわえたトカゲに遭遇

「千人塚」と彫られた石碑のところに出た。太平洋戦争中に陸軍が掘ったところ、多くの遺骨が出土し、供養のため碑が建てられた。足利義輝が三好長慶と戦って敗れた時、亡くなった人々を埋葬したのではないかといわれている。

ちょっと開けた場所なので、お茶を飲んで一休み。上から降りてくる人たちに「こんにちは」と挨拶する。「あとどれぐらいで着きますか?」と聞きたい思いをぐっとこらえながら。

左に曲がってさらに進むと、急な石段が現れた。降りてきた人に「150段ほどよ、頑張って」と言われ、がっくり座り込みそうになる。「あと少しだよね」と友人と声をかけ合い、呼吸を整え、重くなった足を気合を入れて持ちあげた。

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千人塚に到着した
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長い石段にショックを受ける

のぼって少し進むと、京都のまちが見えた。あと少しで目的地だ。嬉しい!

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ようやく京都のまちが見えた

目的地に到着。丸に十字の、石でできた謎の遺跡のようなものがある。これが「金尾(かなわ)」。大の字の「一」と「人」が交差するあたりになる。送り火は毎年、旧浄土寺村の保存会の人々によって行われている。人々の願いを書いた護摩木を火床にあげ、8月16日の午後8時、一斉に点火する。

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金尾の向こう側に絶景が広がる
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火床(大の左のはらい)
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火床(大の右のはらい)

左大文字、船形、妙法といった、送り火が行われる山、京都御苑、二条城、私たちが通った高校、大学など、とてもよく見えた。遠くには大阪のビル群がかすんでいる。来てよかった。

頂上まで、あと少しあるけれど、景色も素晴らしいし、もうここでいいや。ぬるくなったお茶を飲み、塩レモンキャンディーをなめ、ビスケットをかじりながら、友人とお喋りした。話題は、一人前になって巣立った子どもやペットのこと、最近のドラマ、そして終活。10代の頃もこうやって腰かけて、好きな男子の話をしていたように思う。

お互い、この年齢まで健康でいられたことに感謝し、山を降りて「大銀食堂」でどんぶり飯の定食を食べ、それぞれの家に帰って行った。

帰宅すると、飼い猫が寄ってきて、しきりに足の臭いをかぐ。汗だくになったシャツを脱ぐと、自分の足の裏と同じ臭いがした。

汗が臭うオバちゃんになっても、心は乙女なのさ。











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