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本当の見たら寝れなくなる話

「すみません」
後ろから声がした。
振り返ると30~40歳くらいの何処かで見たことのある男の人が困惑した顔を浮かべていた。
「どうしましたか」
と僕は聞いた。
「やっぱり私は死んでしまったのでしょうか?ここはあの世なのでしょうか?」
「あぁ、ここは霊界です。まぁ俗に言うあの世です。」
「やっぱり死んじゃったのか……あっすみません突然……ちょっと困惑しちゃってて、」
まぁ突然さっきまでいた世界じゃなくて建物も自然もない異界に来て、偉そうな人の様なものに貴方は死んでここに来たって言われても実感は湧きにくい。
「別に大丈夫ですよ。ちなみに貴方の名前はなんですか?」
「私の名前は勝本昌士です。あなたの名前は?」
「あっそうだ!えっあの野球選手の!」
「まぁ」
勝本昌士とは少し前までテレビでよく出てて野球をあまり知らない自分ですら知ってるくらいの有名な選手だった。
「いや、こんなところで有名人に出会えるなんて。死んでからだけど嬉しいな。」
「なんかそう言われるとこっちも嬉しいですね。」
勝本は日に焼けた整った顔でニッコリと笑った。眩しい。
「すみません少し興奮しすぎました。あっそうだ、僕の名前は篠田健太郎です。」
「篠田さんは生前なにかやられてたんですか?」
「僕はバンドやってて、でも全然振るわなくて、、でもいつか努力していれば報われると思って沢山練習をしました。でもある日練習中に感電しちゃって、ぽっくりと……」
思いだしたくなかった。悔しい。俺はこれから有名になれたかもしれないのに。あの日はただでさえ調子が悪かったのにこんなのはあんまりだ。
「それは大変でしたね。私も妻と息子を残してこっちに来たので心残りがありますね。」

少しの沈黙が流れた。

僕は一つ聞きたいことがあった。


「死ぬ前の日の夢って何見ました?」


異界に来て気になる話を何回も小耳に挟んだ、
「死ぬ前日には必ず前兆の夢を見る」
ということだ。これが本当ならもう僕は戻りたくはない。

勝本が言った
「見ましたよ。変な夢を見ました。」

「どんな夢でした?」

勝本は弱々しいような声で喋った。
「私が目を覚ますと密室にいたんですけど、椅子に縄で縛られていて、妙に頑丈に作られているので身動きがとれなくて、というか動こうとすると目と指先が針で突っつかれたよえな痛みがきてこれ以上動いたら貫かれるのではないか、そんなことを思うと動けませんでした。数十分たった頃くらいからか、音もなく床と天井その周りの壁がどんどんどんどん広くなって、でも椅子に縛られてる私だけ浮いてて、今にもこの底に落ちそうな恐怖感を何時間も何時間も耐えて、気がついたらものすごく長くて先の見えない廊下に立っていて、そしたら臓器のようなものがボタボタボタボタ落ちてきて、地面に叩きつけられて破裂して、地面に叩きつけられて破裂してを繰り返して、急に真っ暗になって声を出しても聞こえなくて、だんだんだんだん自分がわからなくなって、そしたらそしたらそしたら後ろから吐きそうな匂いがして後ろを見たら瞳に光が全く無くて人間の等身大の大きさでびっしりとした黄ばんだギザギザした歯と歯茎を見せてこっちを見て叫んでるモンチッチのような化け物が小走りでこっちを追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけ殺して追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて死にたいけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきもうだめだかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてき助けて助けてけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきて追いかけてきてあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

「もう止めてください!ごめんなさいごめんなさい。許してください。許してください。」
冷や汗と涙が止まらなかった。

「僕も悪夢を死ぬ前の日に見ました。これを勝本さんに聞いたのは『死ぬ前には必ず前兆の夢を見る。それも途轍もない悪夢を見る。』という噂が本当かもしれないと気になってしまって……」

「大丈夫です。なんか逆に少しスッキリしたような気がします。悪が抜けたというか。ていうかそんな噂があったんですね。」

「人間死ぬのはいつかはわからないと言います。
明日死ぬかもしれないし、明後日死ぬかも知れない。
つまり悪夢を見るのが今日かもしれない、そんな恐怖を死ぬ前に知っていたら僕、死ぬのが怖いどころか寝るのがすごく怖くなってました。」

「もう私たちは死んでいるのでこんな苦痛はないでしょう。こんなこと忘れて気軽に生きましょう。」

「そうですね!」

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