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11:00AM笹棚喫茶での対話

「で、俺倒れちゃって、だけど周りの誰も声すらかけてくれなくてさ、よく言うじゃん、『都会の人は冷たい、他人には興味が無い』って。やっぱりあれ本当だったんだって確信したよ。まぁさ結果的に痛みが治まったから良かったけどさ。中西はどう思う?」

「そりゃ災難だったね。治まって良かったよ。」

「こんな奴らが多いと、先が思いやられるぜ。」

「でもしょうがないんだよ。臆病なんだ。」

「どういうことだ?」

「僕は『都会の人が他人に興味が無い』っていうのは間違ってると思うんだよね。」

「ほう、中西、詳しく。」

「興味無いっていうけど本当は興味ありありなんだよ。」

「えっ、そんならなんで倒れた俺を大勢が無視したんだよ。話しかけろよ。助けろよ!」

「例えば春田君が電車で席に座ってるとしよう。この電車は満席だ。そこに一人お婆さんがやって来た。君は席を譲った、

しかし、お婆さんは君の親切をねじ曲げるように言った。『結構です!』と。周りが静寂と気まずさに満ち溢れ、電車がまた動き出す。
この生き地獄のような体験を人が多い分体験してきたり、聞いてきたりした。
だからだ、だから都会の人は無闇に話しかけたりはしない。失敗して気まずくなるのを恐れているから。
現に僕も失敗したからわかる……」

「な、なるほど、そりゃかなりの勇気が必要な事だったんだな。なんか新しい見方ができたは。ありがとう。
ちなみにお前は何の失敗をしたんだよ。聞かせてくれ。」

「二年くらい前、住宅街を歩いてたら道の真ん中に女の人が横たわってたんだ。酔っぱらってんのかと思ったけど、事件とかだったら、と思って話しかけたんだ。
声をかけても反応しなくて、揺さぶったんだ、そしたら起きた。起きたんだけどその女の人、
顔が剥がれてて、急に肩掴んできてボキボキ、グチャグチャって体から音立てて思いっきり揺すぶっきて、揺さぶってそしたら、」

「おい、もう止めろ。冗談だよな?」

「今もいるよ。ついてきたんだ。僕の言った事を繰り返し反復してるよ。
あっ、今君の耳に入っていったよ。」

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