見出し画像

樹堂骨董店へようこそ⑳

エネルギーにはいろんな種類がある。
人間がもつエネルギーで最も多いのは柔らかかったり、ふわふわしていたり、とろとろの液体のようだったり…そういうイメージのもの。
そして得意技は「考える力」
中にはぜんぜん違う種類のエネルギーを持っているのに人間をしているモノもいる。制限は無いのでいろいろだ。

人間の世界とはまったく関係のない世界もたくさんある。
目に見えないそういったモノたちの世界がいくつも重なり合ってこの世界は構築されている。
それが妖怪だったり、妖精だったり…自然なモノだったり。

流は「人間の世界」と「人間とは関係のない世界」を行き来することのできるエネルギーの持ち主だ。
そういうモノがこの世界には存在する。

「この人…ものすごく研ぎ澄まされてるエネルギーだ。すごくきれいだけれど長い時間近くにはいられないな」
七緒は那胡から送られた流のイメージを観察しながら言った。
「…忍野八海みたいな感じかな?」
那胡はふいに思い出した。流れのある大きい池は底までクリアに見える。濁りの全くない澄み切った透明で冷たい水だった。飼われている魚はいたけれどそれ以外の小さい生物とか虫はいなかった。
「そうかも。きれいすぎて棲めないんだ。それに似ているかもしれない」
目に見えない世界ではめずらしくないことだけれど、人間にとってはそんなに澄み切ったエネルギーはめずらしいのだ。
那胡はふいにポケットにしまってある懐中時計を取り出した。
「それ那胡の?アンティークの懐中時計?」
「たぶんすごく古いもの。私が桜杜で行方不明になって、みんなに見つけてもらった時に私の近くに落ちてたの。これ何かのヒントになるかなぁ」
七緒は懐中時計にふれようとして、すぐに指をひっこめた。
「…っ、それ私触れない…なんか触れようとするとピリピリするんだけど、なんで那胡は平気なの?」
「七緒ちゃん敏感だからかなぁ?」
「違うよ、ぜったいなんか仕掛けがあると思う…それフタ開けるとどうなってる?」
七緒に言われて那胡はフタを開ける。時計らしきものが二つあった。
「うーん」
「うーん」
「時計が二つだね…」
「確かに時計だね…」
普通に懐中時計で拍子抜けだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?