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第6話【失恋】


前回のお話はこちらから


3月26日
鈴乃と派手にやり合って泣きじゃくった別れ話の翌日。
私にとってはInstagramでのフォロワー&友達、鈴乃にとっては表参道にあるSERGE THORAVAL日本唯一の路店舗に長年通ってくれているお得様&自分のライブにも来てくれるフォロワーというかファンの1人である “さつきさん” (アカウント名なので本名は別)に約束通り電話をした。
事前に『私もう、さつきさんに何もかもぶっちゃけたい!泣!! 出来れば電話で話したいんだけどいい?』とDMしていたので、さつきさんはさぞかし心配してくれていた事だろうと思う。
最近はインスタでもよく間違えて触っちゃう危ないビデオ通話ボタンもあるのだが、私達は普通にLINE交換をして『今いい?』と聞いてから電話をすると、さつきさんは直ぐに出てくれた。

「初めまして…って、なんか今までたくさんDMで話してきたから変な感じだけど、なんかごめんね。笑」

「いえいえー。こちらこそ、初めましてー!それで、どしました?」

「あのね…もしかしたら、さつきさんはもう何か勘づいてるかもしれないんだけど…」

「ワンちゃんの病気の事ですよね?他に何かあります?」

「う〜ん…どっから話そう。えーっと、じゃあ、ごめんね。まず、さつきさんに1つ質問してもいい?」

「はいはい。いいですよ!」

さつきさんは明るく答えてくれる。

「あのね。さつきさんは鈴乃さんの事、どう思ってるの?」

「あ〜恋愛的に?って事ですか?人としては好きですけど恋愛的に好きとかそういうんじゃないですよ。笑」

「そうなんだ…(なんだ、そうなんだ。心の声)」

「え、どしたんですか?」

「うん、あのね…。(思い切って言う!)私、鈴乃さんとセックスしました」

「えぇ〜っ!!なんですと!!」

後日談だが、この時さつきさんは、びっくりしすぎて思わずスマホを落としたらしい。

「えっ?!瞳さんて表参道、来たことないですよね?」

「うん、セルジュのお店には行ったことない。笑」

「ですよね?最近も都内は亀有までしか行ってないとか言ってましたよね?」

「うん、そうそう。映画を観に亀有にはよく行くけど、それ以上、先には行ってないよ。」

「え、じゃあ、どういう経緯で?」

「えっとね…」

私は、さつきさんにこれまでの鈴乃とのDMのやり取りからセックスに至るまで、そして昨日の大喧嘩バトル別れ話劇についても事細やかに説明した。

「なんか、もう私どうしたらいいのか分からなくなっちゃって。それで、さつきさんに聞いてもらいたくて。朝からくだらない話でごめんね。」

「いやいや、びっくりしましたけど。そうだったんですね。何やってんだ、あの人!」

「でしょ〜泣!酷いよね!」

「瞳さん、男運…」

「ホンット、私って男運ないよね。苦笑」

ここで、さつきさんがこんなことを言う。

「多分ですけど、瞳さんてセルジュのアクセサリーまだ持ってないからある意味セルジュと関係ないじゃないですか。
だからだと思いますよ。お客さんじゃないから話しやすかったって言うか頼ったって言うか。」

「そうなのかな?」

「分かんないですけど。」

そんな感じで、鈴乃からたくさんの鈴乃の鈴乃写真や動画が送られてきたこと。
店のトイレからの動画もあったこと。
素敵なBGMが流れているトイレからの動画が着た時、流石に『仕事しろよ!』と思ったこと。
私以外にも私と同い年の人妻と不倫していたこと。
お母さんが指定した通りに、10歳年下の元カノとヨリを戻して結婚して子作りをすると宣言していること。
私は、さつきさんに全てをぶっちゃけた。
長年、セルジュの客としてアクセサリーを愛用し、表参道の店にも通い、鈴乃のライブにも顔を出して親しくしてきたさつきさんが全く知らない鈴乃の裏の顔だった様で彼女はとても驚いていた。
そして、私はこう言った。

「私、公開処刑しようと思うんだよね。インスタライブで。昨日の一部始終ボイスレコーダーで録音してたの。それを流そうと思って。そんなのさ、イマドキ普通じゃん。詰めが甘いんだよ。」

と言ったら、さつきさんは

「瞳さんのフォロワーで、それを見て反応する人って誰かいましたっけ?」

と聞いてきたので、鈴乃繋がりのフォロワーを何人かあげた。

「なるほど。それをやったら瞳さんの気は済むんですか?」

「気が済むかどうかは分からないけど、ここまでバカにされてヤり逃げされて、このままじゃいられないよね。」

さつきさん的には止めた方がいいと思っただろうが、私はただ聞いて欲しかっただけなので、『止められてもやってやる!』その思いしかなかった。

さつきさんと話した後、シングル仲間のあっちゃんにもDMで事後報告と今後の予定について話をすると、あっちゃんからも大反対にあった。

「瞳ちゃんの家も知られてるんだし、火事とかさ、火をつけられたりしたら怖いし止めなよ。何されるか分かんないよ。」 

私は思わず笑った。火をつけられる?
ふ〜ん。そうか、そういう発想をする人もいるのか。集合住宅なんだけど、笑。

「だってさぁ、瞳ちゃんだって沢山いい想いしたんでしょ?」

「はぁ?1回しかヤッてないのに?なんなら1発しかヤッてないよ?2回しか会ってないし、そのうちの1回は昨日の別れ話だし。」

と言うと

「えっ!嘘!!そうなの?私はてっきりセフレで何回もし合ってる仲だと思ってた。」

「あっちゃんさ、私の心配してくれて沢山DMくれるのは嬉しいんだけど、私のDMちゃんと読んでないよね?私そんなこと1回も言ってないんだけど!」


昨日の今日なので、めちゃくちゃ不機嫌である。
私が怒ると、あっちゃんは慌てて謝ってきた。


「ごめんね。…でも、そんなちょっと有名人っぽい若い人とヤレただけ良かったと思えばいいじゃん♪」


今、改めて考えてみると、このあっちゃんの一言が拍車をかけて、鈴乃への恨み辛みに繋がっていったのだと思う。
ヤレただけ良かったと思えだと?怒!!


「随分なこと平気で言うんだね。ごめん、もうフォロー切らせてもらうね。」


私は激怒して、あっちゃんがその後もDMを送り続けてきて『余計なこと言ってごめんね』とか『でもインスタライブで流すとか絶対よくないと思う』とか言ってるのを完全無視してブロックした。
自分がヤり逃げされたらどう思うのか?
他人事だと思って言いたい放題言いやがって。
鈴乃のこと最初にクズって言ったの、あっちゃんじゃん!!
私の怒りは、あっちゃんの余計なお世話も加わり頂点に達していた。

そして、私は『夜8時頃を目安に初めてのインスタライブを行います』という予告ストーリーズを流して、インスタライブのテストを行ってみたが、その日は酷い雨で電波状況が悪かった為か、テストが上手くいかず…これではインスタライブが出来そうもないので他の方法を考える事にしてスマホをいじりながら何かないか探していた。
そしてたどり着いたのはTwitter。
そうだよね。インスタライブなんかよりTwitterの方が公開処刑にぴったりじゃん!
私は早速捨て垢を作り、1時間45分にも及んだ昨日の大喧嘩の録音を編集して流せる所だけ流そうと頑張ってツイートしだした。
Twitterへの投稿も電波状況が悪い為か?
なかなか上手くいかず、苛苛しながら何度もトライした。
呟きぐらいの文章ならすぐにツイートできるのに、動画になってくると重くなるのでなかなか飛んでくれなかった。
そしてこれは私達2人の個人的な会話をTwitterという有名アプリに載っける訳だから、私の恥も全国へぶちまける事に繋がる訳で、それを承知の上でやるのだし、ある程度の時間を決め、ある程度の人数が見てくれたら深夜寝る前にツイートした全ての会話を削除し、アカウントも削除しようと決めていた。

ツイートを見た、さつきさんから慌ててDMがくる。

「瞳さん、これ盗聴になりません?大丈夫ですか?」


盗聴?なんで盗聴?盗聴って他人の会話の盗み聞きすることだよね?
この会話、私と鈴乃の会話だし、私本人の声なのに盗聴になるの?ならないでしょ。何言ってんの、笑。
止めるさつきさんに一言DMする。


「最後まで聞いてもらってから言ってもらってもいい?」


怒り狂ってる私のこれでも怒りを押し殺した一言である。
何か言うなら最後まで聞いて、鈴乃がどれだけ酷い暴言を吐いたのかその耳で確認してから言ってくれ!私はそう思っていた。

全てを聞いたさつきさんからは鈴乃の言動に呆れた様子と悲しみも含めたDMが送られてきて


「私はやっぱりSNSに載せるのはよくないと思う。
こんな事したら瞳さんまで傷付いちゃうじゃないですか!」

と言われたが

「私はもうこれ以上、傷付きようがないから大丈夫。少しは鈴乃さんにお灸を据えないと調子に乗りすぎなんだから許せないでしょ。」

と言い返して譲らなかった。

その間に音声を聞いたインスタのフォロワーさん達数人からDMがくる。
『酷い!なにこの男!こんな男、公開処刑して当然ですよ!酷い目にあいましたね。大丈夫ですか?』
彼等は誰1人として私を軽蔑するでもなく、責めるでもなく、物凄く心配してくれた。優しいフォロワーさん達に恵まれて、ホッとして昨日とは別の涙がボロボロ出てきて、私はまた大号泣していた。

切り取った音声を編集して幾つもツイートして5時間ぐらいが経っただろうか。
各ツイートが20〜30人くらいに閲覧され再生されているのを確認し、捨て垢だし、私のインスタから来ている人がほとんどだろうし、こんなもんかな?夜中だし。そろそろ削除しよう。
深夜1:00頃、「全てのツイートを削除します。お聞き苦しいものをご視聴いただきました方々ありがとうございました。」と書き、「このアカウントも明日には削除します。」とツイートして公開処刑として投稿した音声動画を全て削除した。

削除した後、鈴乃はこのツイートにちゃんと気が付いただろうか、と考える。
仕事はとっくに終わっている時間だし、私のストーリーズには『インスタライブは雨で電波状況が悪くテストが上手くいかない為、中止します。その代わりこちらへお越しください』と捨て垢Twitterのアカウントを貼り付けていたので、気が付いているはずだと思い込んでいた。

どうだ!思い知ったか!!

少しだけ気が晴れた?ような晴れないような…それでもツイートしまくるのに神経を使い果たして疲れてしまって、私はその後バタッと寝てしまった。

その後、数日、鈴乃からは何も連絡はこなかった。 
気が付いてないのか?聞いてないのか?
よく分からなかった。

鈴乃がストーリーズにいつも通り平然とカフェの写真を流す。そこにはこう一言添えてあった。『朝からカフェで心の浄化中』

鈴乃の実際のストーリーズより


はい?心の浄化中??
朝から、お洒落カフェに行ってコーヒー飲んでケーキ食べる余裕あんじゃん。何が心の浄化中だよ、怒!! あたしなんか食欲なくて全然全く食べれてないわ!! (心の声)


そして、この鈴乃のストーリーズを見て苛苛が更に募った私はとある行動に出る。
前から気になっていた性感マッサージの予約を入れる事にした。
もう誰でもいいから、誰かに抱きしめてもらえば、この苛苛から脱する事が出来るのではないかと、もう私の思考回路は壊れかけていた。
そして、私は勇気を出して性感マッサージを受けることにする。
その後、鈴乃とさつきさんと3人で話し合う事にもなる。
(続)

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