見出し画像

さすがの私にもネガティブの波がやってきた

私はかねてより、明るく前向きに乳がん治療に取り組んできている。
右乳房の全摘手術を受けた日以来、一度も涙を流すことがないまま約半年が過ぎた。
泣いてないどころか、毎日笑顔が絶えない日々を過ごしてきたほどだ。

無理にそうしてきたわけではない。
自然と開き直ってしまい、病気になった自分をスッと受け入れられた。
乳がん発覚の直前に仕事を辞めていたため、仕事のストレスから解放されていたのも良かったのかもしれない。
とにかく妙にストレスフリーで、抗がん剤治療にもめちゃくちゃ意欲的に取り組んできた。

そんな私が数日前、久々に泣いてしまった。
さめざめと。

抗がん剤治療の全8クールを無事に終えたことが影響していそうだ。
抗がん剤をやっている間は、病と「闘ってる感」が強い。
副作用がつらくても「これを乗り越えることで、がんをやっつけられるんだ!」という気持ちになれる。

だけど抗がん剤治療が終わった今、これからホルモン療法をやるとは言っても、抗がん剤に比べると「闘ってる感」が減ってしまう。
これまでは攻めの期間だったが、ここからは守りの期間に入るような気持ちになった。
再発に怯える日々を迎えるのだな、と思ってしまった。

ふと鏡を見ると、すっかり眉毛の薄くなった自分が映る。
ずっと抜けなかった眉毛が、髪の毛より2ヶ月以上も遅れて抜け始めた。
ハゲ頭の姿は気に入っていたけど、髪の毛も眉毛もどちらもない姿は妙に病人感が漂う。
鏡を見るたび、自分が病人である事実を突きつけられる。

無職の自分には、生き甲斐もやり甲斐もない。
子どもがいるわけでもないし、人生の目標があるわけでもない。
Bucket Listを書こうとしても、これまでやりたいことを何でもやり尽くしてきた私には、もう書くことが何もない。

いつまた仕事を始めるかも分からない。
ただ治療を続けるだけの人生。

虚しい。

そんな思いでさめざめと泣いた。

夫からは「今は充電期間中なんだよ」と言われた。
これまで人の何十倍ものエネルギーで猛烈に走り続けてきたから、充電期間が訪れただけ。
この期間が終われば、また精力的に何かを始めるはず。
やりたいことは時期が来れば自然に見つかるはず、と。

行きたい国にも行き尽くし、ありとあらゆる趣味にチャレンジし、書籍も出版し、ちょっと特殊な職業に携わって大きな実績も残した。
たくさんの夢を叶えてきた。
Bucket Listに新たに書きたいことは、何ひとつ思い浮かばない。

かと言って「もうやり尽くしたからこの世に未練はないのか?」と問われると、そんなことはない。
未練しかない。
いや、執着なのか?
何であれ、まだまだ生きたい。

ただ治療をするだけの日々でもいい。
愛する夫や友人とおしゃべりできるだけでいい。

そのうちやりたいことも見つかるさ。
だけど見つからなくても大丈夫。
人生に大きな意味を見出そうとしなくていい。

育った家庭環境の影響で自己肯定感が低い人間に育ってしまった私は、これまで人生に大きな意味を見出そうとしてきた。
立派な人間にならないと、自分に存在価値がないと思うからだ。
だから何事にも猛烈にチャレンジして、たくさんの成果を残してきた。

ところが前職を辞めた直後に乳がんが発覚し、新しく仕事を始めるどころではなくなった。
これまで「あれもやりたい」「これもやりたい」という人生だったのに、急にやりたいことが何もなくなった。
それでも抗がん剤治療中は、病と「闘ってる感」を全身で感じながら闘志に燃えていた。
とりあえず8クール完遂することが大きな目標だった。

そして抗がん剤治療が無事に終わり、目標を見失った。
ここからは再発しないようホルモン療法を続けながら、食事・睡眠・運動などに気をつけて取り組んでいく日々。
診察のたび、再発や遠隔転移に怯える日々。
次の生き甲斐は、いつ見つかるかまだ分からない。

それでもいい。
ただ治療をするだけの日々でもいい。
愛する夫や友人とおしゃべりできるだけでいい。

そのうちやりたいことも見つかるさ。
だけど見つからなくったって大丈夫。

人生に大きな意味を見出そうとしなくていい。

と、頭の中でぐるぐる思考をループさせながら、沈む気持ちを何とか落ち着かせているのであった。

・・・

ちなみに眉毛問題だが、こすっても簡単には落ちないティントを使うようにしたら解決した。
普通のアイブロウで描いてもケア帽子のこすれなどですぐに消えちゃっていたが、ティントならいつ鏡を見ても常に眉毛が描かれている。
眉毛があるだけでこんなに元気そうに見えるんだな!

眉毛問題が解決したことで、メンタルも浮上してきた。
一度泣いたことで、コルチゾールが低下したのも良かったかもな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?