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【映画感想】『落下の解剖学』曖昧さを直視しなければならないね

ネタバレありあり。


『落下の解剖学』をミステリーだと思い込んで劇場へ訪れたが曖昧さの見方を学ぶ息子の物語だったな。

いい弁護士は事実よりも見え方を重要視し、
検察官は想像を膨らます。
民衆は事実よりも、
面白そうなフェイクを待ちわびる。
事件に関する情報は、
裁判が進むにつれて次々と明るみに出るわけだが
我々視聴者だけが知っている情報は何一つなく、
毎度驚かされる。
それはまるで傍聴席にいるようで、
地味な場面の連続のはずが
民衆と同じく疑心暗鬼に落ち入り
有罪か無罪か揺れ動く。
二転三転する法廷劇に息を呑む。
そのため2時間はあっという間に過ぎていくのだが、残りの30分からは
僕は早く終わってほしくてしかたなかった。
裁判官や保護官を言い負かすほどに頭のよい息子が、どの選択をするのか
そしてそれが事実なのか、無罪を勝ち取ったあとに
早くエンドロールが流れてハッピーエンドで
終わらせてほしかったのに、、、
最後の最後まで、気持ちのいい事実は明かされず、
不穏な空気をまとったままの曖昧さを残していった。
犬!!おまえ!!最後!!誰の愛犬なんだ!!!

それでも視覚に障害のある彼が
偏見や価値観に左右されずに、
自分のなかで妥当な事実と判決がくだされるものを「見極めて」いく様は
この世の中を生きていくうえで、
必要な「見え方」として映る。
それだけでなく、
妻の成功を嫉妬する夫や母国語の違いなどは
この世界が孕む様々な問題を浮き彫りにする。
エンターテインメントに富んだ作品でありながら、
時代性も反映させた脚本に唸らずにはいられない。

もし曖昧さが自分の生きる現実に侵食してきたとき、
フリではなく心をきめて選択できる「見え方」を
極めていきたい。

余談だけど、パンフの肌触りめっちゃいいのに
ちょっと読みにくいのなんなん。






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