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JKが怪我して顔を縫った話

 私は高1も終わりかけの春休みに、空中前回りに失敗してバーに顔が当たり、下唇の下の部分を怪我しました。夏休み前からできた技だったので、自分でも驚いています。

 痛くて泣いてしまい、とても恥ずかしかったのですが、鏡を見ると血が出ていて慌てました。とりあえず洗ったものの、部活前にも用事があって疲労が溜まっていたので、気力がかなり失なわれていました。

 顧問の先生と保健室に行って、帰るときに「女の子だし顔の傷、残らないといいね」というニュアンスの言葉をかけてもらいました。「私は顔で勝負するつもりないので大丈夫です!!」と言いましたが、推しの先生から女の子扱いをされたのが嬉しくて、じわじわと温かい気持ちになりました。

 普段より元気がなかったので、部員には心配をかけてしまったかもしれません。でも実はその日、コーチの方がたい焼きを持ってきてくれていたのです。それを食べるとなんだかほっとして気力が回復してきました。本当にたい焼きの効果だったのか、部活ではお菓子好きのキャラなのでそれらしくしようとしていたのかはわかりません。家族の前ではたい焼きを食べて元気回復!なんて恥ずかしくてできませんが、部活ではできました。

 食べている途中で部活終わりの集合がかかりました。「ありがとうございました」と言い終わった直後に、たい焼きの残りを食べ始めました。私の正面にいた先輩曰く、顧問とコーチが心配そうにこちらを見たときに、本人は嬉しそうにたい焼きを食べていたから面白かったそうです。一応言っておきますけれど、私と同じタイミングでたい焼きを食べ始めた先輩、いましたからね!

 病院に行くために母と会ったとき、母は少し深刻な表情をしていました。顔の怪我ってことで心配しているのかな?お医者さんから「しばらく部活できませんね」と言われたとき、1週間後に合宿、1ヶ月後に大会を控えていたので、状況がうまく飲み込めませんでした。時間差で涙が出たのですが、その時はちょうど麻酔の注射を打たれている最中で、注射が痛くて泣いた人扱いをされて恥ずかしかったです。

 考えてみれば、マネージャーさんだって合宿に行くわけですから、私が合宿に行くこと自体は問題ありません。ストレッチ、筋トレは問題なくできるし、見て聞いてイメージするだけでも学べることはたくさんあるので、そんなに深刻にならなくても大丈夫そうです。そう考えていると落ち着いてきました。

 縫うこと自体は痛くありませんでしたが、縫われている感覚はあって、それが面白くて笑ってしまいました。下唇の下の部分は笑えばかなり動くので、針が変な場所に刺さらないか怖かったです。

 縫った部分を濡らさないようにと言われたので、髪は母に洗ってもらいました。食事も傷口を汚さないように、できるだけひとくちで食べるように食べるようにしました。普段は難なくできることのありがたみを感じます。メイクを落とすのは本当に大変でした。

 部活禁止と言われましたが、顔が絶対に硬いものに当たらない技はしていいわけですから、意外とたくさんできることはありました。ロイター前宙もセーフティーに着地するから大丈夫だし、ロンバクも補助付きでできました。跳馬と、だんちの前回り・後ろ回り、平均台の側転以外はできます。

 傷口はあまり目立たずに閉じてきて、合宿の前日に抜糸を終え、わくわくした気持ちで合宿に旅立つことができました。一時は「行けないかもしれない」と思っていた合宿ですから、忘れないうちに大量にメモを書いたし、消灯時間にちゃんと寝ました。合宿の3日間だけで学んだことを終わらせてはいけないと思ったから、朝練習(ザリ)と、寝る前の10分くらいのクールダウンは日頃から取り入れようと思いました。

 もしこの怪我がなければ、ここまで合宿からたくさん学ぼうと思わなかっただろうし、身体のメンテナンスにもそこまで気を使わなかったと思います。

 だから、今となってはこのタイミングで怪我をしたことは、そこまで悪くはなかったと思っています。

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