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【名作】Netflixで『正欲』観ましたー。



はじめに

 昨年公開の朝井リョウ先生の小説を原作とした映画『正欲』、家族とともに二回目の視聴完了しました。『何者』『桐島、部活やめるってよ』といった、スマホ、ツイッター、youtubeなど現代的なITツールおよびSNSが普及した世界を生きる若者たちの内面の葛藤を扱った作品を多く手掛けておられる朝井先生。

 本作は発音的に『性欲』がイメージされたので、当初は正しい性欲とは何か?的な映画なのかな、と勝手に推測して鑑賞しました。  
 誰かと観てみると、自分とは違った感想が得られて面白かったので、記録したいと思いました。 

個人的な評価

ストーリー  A
脚本     A+
構成・演出  A
俳優     S
思想     S
音楽     B
バランス   A
総合     S-

S→人生に深く刻まれる満足
A→大変に感動した
B→よかった
C→個人的にイマイチ

内容のあらすじ

 メインの登場人物は横浜の高良食品営業部商品開発課に勤務する会社員・佐々木佳道(磯村優斗さん)と、岡山駅に直結するイオンモールにある寝具店の販売員・桐生夏月(新垣結衣さん)で、中学時代同級生だったふたりの再会と交流を描いたストーリーになります。

 ふたりは共に人生に生きづらさと、人には言えない欲求を抱えていて、社会から強い疎外感を感じながら何とか生きています。
 具体的には、佳道は吹き出す水にだけ異常に関心があり、健全な男性が抱くような女性に対する欲望がありません。周囲にそれを打ち明けるとおかしい人と思われるのを恐れ、正常を装って生活していますが、その隠蔽に疲れて希死念慮を零すまでになっています。

 夏月は、美人で聡明なのにも関わらず恋愛や色事に興味がなく、職場や親から、なぜ結婚しないのか?という嫌味やプレッシャーを日常的に浴びせられる日々を送っています。
 作中詳しく語られませんが、おそらく他者に恋愛感情や性的欲求を抱かないアロマンティック・アセクシュアルだと思われます。

 しかし、夏月はけして人間嫌いなわけではなく、他人とうまく関わっていけない自分に自己嫌悪を感じてます。また、性行為に関心はないものの、職場の人の伝聞情報により、性行為のあとで男性が覆いかぶさってくる際の愛おしさには興味があります。

 本作は、他人や社会が望むような生き方をできない人々が、その人なりに一生懸命生きてる姿を見て、あっさり「ありえない」と否定するのはいかがなものか?という作品です。




感想(ネタバレあり)

 正欲は『正しい欲』ではなく『正常な欲』とは何か?を提起する意味だったのだなと鑑賞後に気づきました。自分から見たら非常識でおかしい人でも、その人にとってはそれは正常であり、自分らしさであり、その人なりに懸命に生きているのであり、詳しく知ろうともせずに最初から否定しにかかるのはよろしくないなと内省を促す作品でした。

 作中で、生きづらさを抱えていない人物として稲垣吾郎さん演じる検事が出てきますが、人生順風満帆で勝ち続けてきた人は、つい他人に対し不寛容で傲慢になってしまいます。
 弱さは悪であり、レールから外れた人はただ篩から零れ落ちただけの敗者、という見方です。

 作中で彼の子供はいじめられて不登校になり、学校に行かずにyoutuberになると言い出しますが、それに対し「youtuberなんてのは詐欺師の集まりだ」と一笑に付しますが、最初から子供の話を聞く気がありません。
 言ってることは正論なのですが、優しくない。気持ちを理解してあげようという気もまったくない。それは父性を示すべき父親の役割ではないと言えばそれまでなのですが、人と人との関わり方としてやはり間違ってるように思えました。
 学びの深い作品でした。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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