みすゞ@短編小説月一更新

勝手にお題を設定して短編小説を投下するのが趣味です✍月一でいきます✍️

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【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団(1)

 目覚ましい技術革命が起こり、瞬間移動装置が発明されてから久しい。    その装置の恩恵を最も受けているのは、緊急搬送の必要な医療現場でも、直ちに犯行現場から逃げ去りたい犯罪領域でもない。    G対策界隈だ。    Gというのはお察しの通り、ゴではじまり、リで終わる、あなたの周り、いや足元に蹂躙する床下の悪魔のことである。  いにしえから繰り返されるGと人間の戦いにはまだ、終わりが見えない。  G対策本部撲滅兵団は、この終わりなき戦いにビジネスチャンスを見出した起業家が立ち

    • 【お題:人工知能】忘れられない夏にして(3)

       翌日、氷堂は相変わらず葉月の横にピッタリついて、同じ速さで歩いていた。  途中、あれはサルノコシカケというきのこだとか、昨日よりもフィトンチッドの分泌が高いとか、雑談らしい話をして氷堂は随分と楽しそうに見 えた。  葉月の方は昨日の疲労も相まって、はしゃぐ気力はなかった。  あとどれくらい歩くのだろうと思っていたとき、氷堂が突然立ち止まった。葉月が振り返ると、厚い眼鏡の奥からまっすぐ葉月を見下ろ した。 「着きました」  え? と葉月は前方を見るが、これまでと同じように苔の

      • 【お題:人工知能】忘れられない夏にして(2)

        「……さん、葉月さん」 「はいっ、遅れてすみません!」  目を覚ますと、能面のような氷堂の顔が飛び込んできた。葉月の顔を見つめていた氷堂は、薄い唇を動かして何か言った。流石にお咎めを喰らうだろうと思って、葉月は身構えた。 「熱中症かもしれません。水分を摂ってください」  半解凍のスポーツドリンクを差し出す氷堂は、なぜか異様に眩しく見えた。灼熱の太陽が、氷堂の肌のきめ細かさや艶やかな睫毛の一本一本を、必要以上に輝かせているように思えた。背後の青々とした木の葉はまるで海のように

        • 【お題:人工知能】忘れられない夏にして(1)

           2050年、夏。  葉月は研究センターの居室の窓を開け、澄み渡る青い空を見上げた。  窓の外に顔を出すと、湿度の高い熱気が肌に纏わりつく。  今日の外界の温度は53℃。真夏の気温はこの50年で際限なく上昇し続け、未だ留まることを知らない。25年前から日本では、夏の間は緊急事態宣言が発令され、室外へ出ることを禁じられている。  今年で25歳になる葉月葵は、ゆえに一度もこの国の夏を味わったことがない。 「葉月、窓を閉めなさい。熱中症になるぞ」センター長が足早に、葉月の後ろを通

        • 固定された記事

        【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団(1)

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        • 【お題:人工知能】忘れられない夏にして
          1本
        • 【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団
          3本
        • LACROSSE★JUNKY
          4本

        記事

          【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団(3)

           瞬間移動先はパーティ会場のような場所だった。夜な夜な社会人が集まって、人前での話し方とか大人のマナー講座とかいかがわしい勉強会が行われ、そのあとに交流会という名の不毛な催しがされるような場所だ。  この会場にかの巨大な悪魔が出現したというのだ。  愛子は物陰から建物の様子を窺った。五階立ての古いビルで、きっとエレベーターは狭いに違いない。火災が起きればあっという間に煙が充満するような、都会によくある汚いビルだ。  建物の灯りはつけっぱなし。時々、大きな影が窓を横切る。 「

          【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団(3)

          【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団(2)

             瞬間移動先はワンルームの一室だった。  ここ五年は掃除をしていないといった感じで、足の踏み場もないほどごみが溜まり、異臭が漂っている。ベッドらしき台の上に、四十代前半の女性がほとんど下着のような恰好で蹲っていた。  その怯えようといったら異常で、まるで刃物を持った者に寝込みを襲われたとでもいったような様子だ。  夏、突如現れる黒体が平穏な日常をどん底に突き落とす様をこれまでに何度も見てきたが、ここまで怯え切った顧客をみるのは初めてのことだ。 「大丈夫ですか。奴はどこに

          【お題:悪魔】出動!G撲滅兵団(2)

          第3話

          3.ハエより遅い 「なに睨んでんだよ」  気づいたときにはシャツの襟首を掴まれて、持ち上げられていた。睨んでいたつもりはないけど、翠の高さから潤を見ようとすると、確かに睨み上げるようなかたちになる。 「八ヶ崎さん、やめて。先生くるよ」  深雪は狼狽えながらも、潤の手を翠から剥がそうとしていた。  翠は胸倉を掴まれながらも不思議と、恐怖を感じていなかった。むしろ、心に宿しているのは怒りだった。この女は、深雪のルールブックを盗んでハサミで切り刻んで、川に捨てたのだ。思い出しただ

          第2話

          2.カーストトップの女 「あんなのは、気にしなくていいのよ。部活をやってればそんな暇ないから。今からグラウンドの申請書をだしてくるから、明日から練習を始めようね。市川一華も探して、声かけておくわ」  翠が憂惧するのも気に留めず、深雪は朗らかだった。  市川一華の〝クロス〟を持って翠は帰路についた。  クロスは案外軽くて、ステンレスの柄はひんやりと冷たい。妙に手に吸い付くような気がするのは、使い慣らされた道具だからだろうか。頭の部分は白いプラスチックでできていて少し泥がつい

          第1話

          ラクロス――国内競技人口約二万五千人。”クロス”と呼ばれるスティックでボールを奪い合い、ゴール数を競い合う、地上最速の球技。  ラクロスやってますって言うと大体、あの虫取り網みたいな棒を振り回すスポーツですよね、って言われる。お嬢様がスカート履いて走るやつ。可憐で素敵。かわいいですよねって。  だけどラクロスって本当は、全然かわいいスポーツじゃない。腕力、スピード、あとフィジカルが圧倒的にものをいう野蛮で容赦のないスポーツ。そう思う。  外はあついし、コートも広くて、走っ

          【ラクロス★ジャンキー】あらすじ

           群青女子高校二年、二階堂翠。  趣味は昆虫採集。人間の友達はいない。  わりと目は良いほうで、どんな速い虫でも捕まえられる。  ある日ハエを探しに公園にいくと、褐色肌の女に声をかけられ、虫取り網のようなスティック――”クロス”を渡される。  彼女はプロラクロス選手の娘。  世界最強のラクロッサーになるため、海を越えてやってきたのだ。  ラクロス部に入部することになった翠は、目の良さを買われキーパーのポジションを与えられる。  シュートはハエより遅いけど…全日本大会に進

          【ラクロス★ジャンキー】あらすじ