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10月29日~11月4日 ごませんべい+新シーズン

一人のお金持ちを複数人で獲り合う人気番組の新シーズンが始まった。しかし、今回はかなり異色である。獲り合われるお金持ちの名は“亀田せんべい”、老舗ごませんべいメーカーの7代目だ。

近年、世界で過去最大級のごませんべいブームが起こっている。きっかけは一人の世界的インフルエンサーがSNSを通じて紹介したことから始まる。どこにでも持ち運べる手軽さ、ほどよい腹持ち、ごまの栄養価、割ったときの心地よい音色、日本人が知っている良さから外国人でしか気づけなかったところまで、様々な角度からごませんべいの魅力が発見され、今や総人口の4分の3はカバンの中にごませんべいが入っているほど世界を席巻している。

だが、このブームがきっかけである問題が発生している。米の乱栽培、乱収穫だ。このブームにより、色々な企業がこぞって世界中で土地を開墾し、大規模な田んぼが形成されていった。しかし、その国々で栽培に適した野菜というものがある。各地で無理にお米を栽培しようと、肥料や農薬が大量使用され、その影響で各地の生態系が破壊されていった。そして、土壌は弱り、どんどん土地が枯れていった。

魚が世界で気軽に食べられなくなって随分立つ。現在、さんまは一匹5000円もする高級魚だ。鯖缶の価格も平均1000円に値上がりし、とても庶民には簡単に手がだせない商品となった。日本のアイデンティティーであり、宝でもある米もまた世界から消えてしまうのだろうか。

「次はどの食料をなくしてやろうかな。」

週末の夜に缶ビールを片手に、パソコン画面でダラダラ流れる番組を見ながら、ぼそっとつぶやくサラリーマンが一人。

実はこの男、地球征服をたくらむ火星からの宇宙スパイだった。彼のミッションは、地球を混乱に陥れ内部から人間を弱らせること。魚をほぼ絶滅に追い込んだのは彼であり、ごませんべいブームを仕掛けたのもこの男の仕業だ。

番組に飽きた彼は、以前暇つぶしに買ったある経済雑誌を開いた。

“遂に空気食の実用化に成功。人が空気を食べる時代に。”

そんな見出しを見て彼は一言つぶやく。

「本当に地球人の欲望はあさましい。天井知らずだな。」

そして大きく深呼吸をし、これが最後になるかもしれない味を堪能した後、次のターゲットを空気に定めた。

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