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架空の卒業制作

去年の秋ぐらいから「架空の〜」をテーマに、創作のようなものを行ってきた。ある程度の量が溜まってきたため、構想段階のものも含めてまとめたのがこの記事である。また、学生を終えたタイミングでもあるので自分なりの「卒業制作」ということにした。これで何かを卒業したわけでもないし、ほとんどは中身もないものだし、ほんまもんの卒業制作を納めた人に失礼な気もしたが、そこは架空という言葉を言い訳に走り抜くことにした。

1. 架空の季節 : しぐ夏

「しぐ夏」という架空の季節を題材に、フォトブック等を作成した。音と文字だけの語彙に意味をつけてみる、というのがこの作品の試みである。
「しぐ夏」は架空のものであるが、一緒に取り組んだ大学の後輩(だーやま、まつぉ)と「しぐ夏」に対するイメージが初めからうっすらと共有されていて面白かった(「夏」という言葉の意味に引っ張られているところもあるけど)。

・フォトブック:「しぐ夏について」
「これはしぐ夏かも!」と感じた風景の写真をまとめたフォトブック。写真協力と寄稿文はまつぉさん。

・音楽:「signature note」
「しぐ夏っぽい音」をテーマに行った即興ピアノ連弾を抜粋してプレイリストにしたもの。だーやまと共作。正直なところ上手ではないが、独特な味はしてるハズ


「しぐ夏について」内容・1
「しぐ夏について」内容・2
「しぐ夏について」表紙


2. 架空のアルバムシリーズ

中身の音楽は作らず、CDジャケットとコンセプトのみを作成した。作りたい音楽はあるが、実現するのは難しいため、とりあえずパッケージだけ作ろうとしたのが動機。「音楽作品」を構成する要素の一部をなくすことで(架空にしてしまう)ことで、想像の自由度を上げるという目的で作成した。
大義名分はともかく、架空とわりきってしまうことで、自由に作成できてこれはこれで楽しかった。
以下、各架空アルバムとその嘘解説。

①music for umeboshi
親日家であるアンビエント音楽家・Breijan Eyoの3rdアルバム。彼が「小さな美味なる宝石」と呼ぶほど愛する、梅干しのために作成された。昨年より、このアルバムを聴かせながら漬け込んだ梅干しが製造・販売されている。

②スーパーアースガール・オリジナルサウンドトラック
2004年に公開された映画「スーパーアースガール」のオリジナルサウンドトラック。作曲は元KuruKuruBoysのアメリク。収録曲であり、同タイトルの映画のメインテーマでもある「あくる日」は近年もCM等で使用されている。


③viv (いえ~い)
スリーピースバンド・ノコスワネアナタニの高校卒業記念ミニアルバム。ボーカルのナカモトアニ曰く、アルバムタイトルの『viv』は「生命」と「ダブルピース」を表す。収録曲である「ぶるうの」は、現在も同バンドの代表曲として演奏される機会が多い。

④10 mails feelin' on my mind
ジャズピアニスト・Bim Evansによるアルバム。友人や家族が彼に送った手紙を自身のピアノに合わせて朗読するという実験的なアルバム。手紙の作成者の一人が「自分の手紙を無許可で使用された」と主張し、一部の楽曲の配信が現在では行われていない。

⑤CHRISTMAS WITH MERRY PERICANS
イギリスのインディーバンド「The Baa Baa Garden」の2ndアルバム。「聖なる夜のペリカンとの戦闘」を描いた奇妙なコンセプトアルバムである。「MERRY PELICANS」のみボーカルがある。


⑥方円
シンガーソングライター・神田開仁の1st アルバム。全曲スティール・ギターによる弾き語りで構成されている。アメリカの音楽雑誌『GROOVITY』で紹介されるなど、海外でも高く評価されている。


⑦ナスカトライブ!オリジナルサウンドトラック Vol.2
アニメ・ナスカトライブ!のサントラ集。悪ふざけっぷりから、主にネットで人気を集めるナスカトライブらしく、本編で使用された楽曲が一曲も収録されていないなどの特徴を持つ。


⑧Their Sounds
「雪男のいる山」や「ゴーストマンション」などオカルト的な場所の環境音を収録したアルバム。収録されている「Japan・Zokibayashi(Kimodameshi)」が「恐ろしすぎる」と欧州を中心に人気を集めている。


⑨自由ノ振
フォークシンガー・馬場番の活動30周年記念アルバム。アメリカのトラックメーカー・Zozartがサンプリングしたことでも昨年話題に。


3. 架空の架空創作群(🍊)

構想だけの未完のものがありすぎて、もはや脳内はみかん畑である(??)。その一部を自分用の備忘録としてここに記載する。

・架空のラジオ番組コーナー : 日内正男のmountain radioより「オトテン様の相談室」
どうやって意思疎通がとれているかわからない会話のpodcast。ハン・ソロとチューバッカの会話的な。

・架空の詩集の挿入写真
町田康の詩集の挿入写真にあこがれてとりだめた写真で何かしようとした。架空の詩集とは??となって結局形にならず。

・架空の漫画:燃えろ!オーケストラ部
能力バトルオーケストラ学園ものの漫画が読みたくて、漫画のあらすや登場人物をまとめたWikipediaを作ろう!と思ったもの。風呂敷を広げ過ぎて断念。でもぼちぼち作成するかも。

・架空の人物:マスクドマスクマン
マスクド・マスクマンという謎の人物にまつわるインタビュー記事を作成する予定だった。あまりにも謎過ぎてまとめられなかった。


雑談

架空のものを作るのは面白い。なぜなら、自分の好きなようにできる部分が多く、想像が素早く広げられるから。調子よく言い過ぎると「不可侵の自分の世界」を持ったような気持ちになることができる。
けれども、それを「フォトブック」であったり「CDアルバム」であったり、何かの型に結局はめることは「架空」と言われていない創作物とどう違うのか(クォリティの問題はさておき)。架空といっていても、どこかで誰かが思いついてしまっているかもしれないのに、架空と言い張ることはできるのだろうか。例えば「しぐ夏」は、他人と共有していってるのだから、それは今も架空なのだろうか。

などと、ネガティブでめんどくさい感情に覆われることが多々ある。
この文書を長々と書いた2024年3月31日現在の自分は、「『架空』という言葉は現実と距離感を作ってくれるから好き」という気持ちを持っている。たぶん、グダグダ吐き出したあとに出てきたのだから、この感覚は変わらなそう、安心できる。

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